夏目の従妹が主人公。原作設定。黒髪に翡翠の瞳の美少女です。
第三十六話 鈴の音の願い
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『あちらです』
楓に案内されて向かったのは古びた塔だった。途中腐りはてた橋を恐る恐るわたり、塔の中を覗くとベールをかぶった妖がそこにちょこんと座っていた。
長い前髪で目を隠し、細い体に不似合いの大きな頭を持っていた。
「君がこの土地を豊かにする妖の従者かい?」
水崎が話しかける。
『あなたは……祓い人……? わたくしを封印しに来たのですか?』
鈴のような声でその妖は訊いた。
「いや違う。逆だ。君の主人の封印を解きに来たんだ。封印されて3年。この土地もあと2年しか持たない。……それは君にとっても主人にとっても良くないんじゃないかい?」
『…………』
妖は水崎から視線をそらした。
そして美結花とばっちりと視線が合ってしまった。
『和樹 様……?』
「え?」
聞えた名前に美結花は驚いた。
まさかこの妖からその名前が聞こえるとは思わなかったのだ。
『和樹様です、よね……?』
「違う。私は美結花。和樹じゃない」
きっぱりと否定した。
『ああ……確かに……。お姿は似ていますけど、髪も長いし、目元が違う……』
その妖は少し落胆したみたいだった。
「父を知っているの?」
『父? あなたは和樹様の娘さん……? ……そうですか。もうそんなに年月が……。和樹様はお元気で?』
「父は……ずいぶん昔に亡くなりました……」
その言葉にその妖は傷ついた気配を漂わせた。
『亡くなった……。人の命ははかないですね……』
「ねえ、父を知っているんでしょう? もしかしてあなたの主とも知り合いだったりするの? 何か知っている?」
畳みかけるように美結花は訊いた。
『そうですね……』
そこで妖は少し迷ったようだったが、話し始めた。
『私は燐火 。春風 様にお仕えする従者であり、弟子でもありました。春風様がこの土地を一年に一度訪れ、豊かにする技を教わってきました』
従者で弟子。燐火は従者として仕えながら様々なことを学んでいたのだろう。
『楽しく過ごしてきた私と春風様ですが、3年前ある男がやってきたのです。その男は未熟で大した力もなかったので最初は放っておいたのです。私たちで対応できるそう思っていたのです。ただそれは間違いでした。その男はあるものを春風様に投げつけ、あっという間に封印してしまいました。封じられた春風様はそのままどこかへと落ちてしまい、行方不明になってしまったのです』
燐火の話はここで終わった。
「いくつか質問いいかい?」
『はい』
「まず一つ目、その春風様とやらは石に封じられた? そしてそのお堂から下に落ちて行った?」
『石ですね。そしてこのお堂から下に落ちています。御覧の通り川があるので流されてしまった可能性があります』
「二つ目、無礼かもしれないけど君は封じられた主をずっと探せなかったのかい? 君も強い力を持っているみたいだけど」
『疑いもわかります。ただ気配が封じられたせいかまったく感じ取れず3年たっても見つけられません』
燐火は答えた。
「三つ目の質問。その祓い人が使っていた道具って実力に不似合いだったということかい?」
『ええ。なので驚いたのです。その男の実力ではあの道具は使いこなせないと思いましたから。そのせいで油断しました』
「…………」
水崎は黙り込んだ。
「水崎さん?」
「どうしたんです?」
夏目と美結花はいつにない険しい顔の水崎に不安を覚えた。
「……最後の質問だ。その道具には矢の絵は描かれていた?」
『……分かりません。突然だったのであまりよく見ていなくて……』
「そうだよね。ありがとう。とりあえずこの付近にいるかもしれないというのが分かっただけでも収穫だよ」
水崎はお礼を言った。
『春風様を目覚めさせてくれる。その認識でいいんですよね?』
「……できる限り努力するよ」
約束するとは水崎は言わなかった。妖との契約が危険だというのを彼は知っていたから。
「夏目、美結花。行こう」
「は、はい……」
「水崎さん、待って……。あ、あのありがとうございました。父のことも訊けてよかったです」
美結花は頭を下げた。
『ああ、元気でいてくださいね』
妖は少しだけ笑って出て行った。
楓に案内されて向かったのは古びた塔だった。途中腐りはてた橋を恐る恐るわたり、塔の中を覗くとベールをかぶった妖がそこにちょこんと座っていた。
長い前髪で目を隠し、細い体に不似合いの大きな頭を持っていた。
「君がこの土地を豊かにする妖の従者かい?」
水崎が話しかける。
『あなたは……祓い人……? わたくしを封印しに来たのですか?』
鈴のような声でその妖は訊いた。
「いや違う。逆だ。君の主人の封印を解きに来たんだ。封印されて3年。この土地もあと2年しか持たない。……それは君にとっても主人にとっても良くないんじゃないかい?」
『…………』
妖は水崎から視線をそらした。
そして美結花とばっちりと視線が合ってしまった。
『
「え?」
聞えた名前に美結花は驚いた。
まさかこの妖からその名前が聞こえるとは思わなかったのだ。
『和樹様です、よね……?』
「違う。私は美結花。和樹じゃない」
きっぱりと否定した。
『ああ……確かに……。お姿は似ていますけど、髪も長いし、目元が違う……』
その妖は少し落胆したみたいだった。
「父を知っているの?」
『父? あなたは和樹様の娘さん……? ……そうですか。もうそんなに年月が……。和樹様はお元気で?』
「父は……ずいぶん昔に亡くなりました……」
その言葉にその妖は傷ついた気配を漂わせた。
『亡くなった……。人の命ははかないですね……』
「ねえ、父を知っているんでしょう? もしかしてあなたの主とも知り合いだったりするの? 何か知っている?」
畳みかけるように美結花は訊いた。
『そうですね……』
そこで妖は少し迷ったようだったが、話し始めた。
『私は
従者で弟子。燐火は従者として仕えながら様々なことを学んでいたのだろう。
『楽しく過ごしてきた私と春風様ですが、3年前ある男がやってきたのです。その男は未熟で大した力もなかったので最初は放っておいたのです。私たちで対応できるそう思っていたのです。ただそれは間違いでした。その男はあるものを春風様に投げつけ、あっという間に封印してしまいました。封じられた春風様はそのままどこかへと落ちてしまい、行方不明になってしまったのです』
燐火の話はここで終わった。
「いくつか質問いいかい?」
『はい』
「まず一つ目、その春風様とやらは石に封じられた? そしてそのお堂から下に落ちて行った?」
『石ですね。そしてこのお堂から下に落ちています。御覧の通り川があるので流されてしまった可能性があります』
「二つ目、無礼かもしれないけど君は封じられた主をずっと探せなかったのかい? 君も強い力を持っているみたいだけど」
『疑いもわかります。ただ気配が封じられたせいかまったく感じ取れず3年たっても見つけられません』
燐火は答えた。
「三つ目の質問。その祓い人が使っていた道具って実力に不似合いだったということかい?」
『ええ。なので驚いたのです。その男の実力ではあの道具は使いこなせないと思いましたから。そのせいで油断しました』
「…………」
水崎は黙り込んだ。
「水崎さん?」
「どうしたんです?」
夏目と美結花はいつにない険しい顔の水崎に不安を覚えた。
「……最後の質問だ。その道具には矢の絵は描かれていた?」
『……分かりません。突然だったのであまりよく見ていなくて……』
「そうだよね。ありがとう。とりあえずこの付近にいるかもしれないというのが分かっただけでも収穫だよ」
水崎はお礼を言った。
『春風様を目覚めさせてくれる。その認識でいいんですよね?』
「……できる限り努力するよ」
約束するとは水崎は言わなかった。妖との契約が危険だというのを彼は知っていたから。
「夏目、美結花。行こう」
「は、はい……」
「水崎さん、待って……。あ、あのありがとうございました。父のことも訊けてよかったです」
美結花は頭を下げた。
『ああ、元気でいてくださいね』
妖は少しだけ笑って出て行った。
