エドガーの妹です。たった一人の家族のことをとても大事に思ってます。
もう一つの物語 甘い罠に気を付けて
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7.祝福は春風に乗って
キャロラインたちの元に音もなく近づいていく影があった。
リディアは驚いて柱に抱きついた。
「び、びっくりした……」
「リディア、どうせなら僕にしがみついてくれればいいのに」
「……本能的に避けてるの!」
「お兄さまってこういうセリフはいつでもどこでも思いつくのねえ……」
キャロラインは呆れた。
「エドガーさま、ボートが複数横付けされました。じきにグレアムの仲間が侵入してくるかと思います」
「わかった。急ごう」
レイヴンが誘導する。
「どうしてわかるの?」
リディアが訊いた。不思議に思ったらしい。
「船底で叫んでいたグレアムの手下に聞きました。船内で騒ぎが起きたので、部外者に発見されないよう眠らせて場所を移したようです」
「そう……」
キャロラインはつぶやいた。
「そうだリディアさん、これを忘れていました」
レイヴンが缶詰をリディアに渡す。
中に不思議なものが詰まっている缶詰だ。キャロラインはそう思った。
「あの、それはべつにあたしの武器ってわけじゃないのよ」
「リディアには持って歩くのはじゃまかもね。僕が持っておこう」
エドガーが預かる。
「リディア、走れる?」
「ええ」
クロウとシエルも加わって6人で駆け出す。
「いたぞ、こっちだ!」
誰かが叫んだ。
「エドガーさま、私が彼らをひきつけます」
「わかった、まかせる。ドーリス嬢の居場所は?」
「この突き当りです。倉庫の奥に荷で隠されたドアがあります」
「クロウ、シエル、あなたたちも頼んだわ」
二人は頷いた。
そして三人は踵を返した。
先を急ぐ。騒がしい声が遠くなった。レイヴンの方を追って行ったらしい。
「どうしたの、リディア。怖くなった?」
黙り込んだリディアにエドガーが訊いた。
「怖くなんかないわ。これはあたしの意地だから」
リディアは首を横に振った。
「前向きなんだね」
「その思考うらやましいわ」
そんな風に考えられるリディアがうらやましい。
「違うわ、無謀なだけよ。……わかってるけど、後悔したくないもの」
「僕は後悔してばかりだ。僕の最大の罪は生きていることだと思うくらい」
リディアはその言葉の重さに動揺したようだった。
「そんなはずないじゃない」
「僕がいなければ仲間たちのほとんどは今も生きていただろう。アーミンも……。それにレイヴンも、あの本能的な殺戮の衝動を、僕に預けるなんてやり方でなくて、きちんと自分のものとしてコントロールできるようになる方法があったかもしれないと思うんだ」
「私さえいなければ仲間たちは生きていたかもしれない。あのときみんなを巻き込んだのは間違いだったかと時々思うの……」
キャロラインの脳裏に力が暴走して仲間を傷つけたときのことが思い出された。あのときの思いはもうしたくない。
「でも、あなたたちがみんなを、プリンスの支配から解放したんでしょ?」
「解放……。でもレイヴンとクロウとシエルしか残っていない」
「それしか生き残らなかったの……。みんなここまで来てほしかったのに……」
「あなたたちの仲間は、奴隷のまま生きていたかったと思うの?だったらついていかなかったはずよ。あなたたちは自由を与えたわ。少なくとも、心は誰にも縛れないってことを教えたんじゃないの?」
そんなこと何回も思おうとした。でも駄目だった。
「そんなふうに思おうとしてきた。でもときどき、それが僕のエゴにすぎないような気がして……」
その気持ちはわかる。キャロラインも何度も思ったことだからだ。
キャロラインたちの元に音もなく近づいていく影があった。
リディアは驚いて柱に抱きついた。
「び、びっくりした……」
「リディア、どうせなら僕にしがみついてくれればいいのに」
「……本能的に避けてるの!」
「お兄さまってこういうセリフはいつでもどこでも思いつくのねえ……」
キャロラインは呆れた。
「エドガーさま、ボートが複数横付けされました。じきにグレアムの仲間が侵入してくるかと思います」
「わかった。急ごう」
レイヴンが誘導する。
「どうしてわかるの?」
リディアが訊いた。不思議に思ったらしい。
「船底で叫んでいたグレアムの手下に聞きました。船内で騒ぎが起きたので、部外者に発見されないよう眠らせて場所を移したようです」
「そう……」
キャロラインはつぶやいた。
「そうだリディアさん、これを忘れていました」
レイヴンが缶詰をリディアに渡す。
中に不思議なものが詰まっている缶詰だ。キャロラインはそう思った。
「あの、それはべつにあたしの武器ってわけじゃないのよ」
「リディアには持って歩くのはじゃまかもね。僕が持っておこう」
エドガーが預かる。
「リディア、走れる?」
「ええ」
クロウとシエルも加わって6人で駆け出す。
「いたぞ、こっちだ!」
誰かが叫んだ。
「エドガーさま、私が彼らをひきつけます」
「わかった、まかせる。ドーリス嬢の居場所は?」
「この突き当りです。倉庫の奥に荷で隠されたドアがあります」
「クロウ、シエル、あなたたちも頼んだわ」
二人は頷いた。
そして三人は踵を返した。
先を急ぐ。騒がしい声が遠くなった。レイヴンの方を追って行ったらしい。
「どうしたの、リディア。怖くなった?」
黙り込んだリディアにエドガーが訊いた。
「怖くなんかないわ。これはあたしの意地だから」
リディアは首を横に振った。
「前向きなんだね」
「その思考うらやましいわ」
そんな風に考えられるリディアがうらやましい。
「違うわ、無謀なだけよ。……わかってるけど、後悔したくないもの」
「僕は後悔してばかりだ。僕の最大の罪は生きていることだと思うくらい」
リディアはその言葉の重さに動揺したようだった。
「そんなはずないじゃない」
「僕がいなければ仲間たちのほとんどは今も生きていただろう。アーミンも……。それにレイヴンも、あの本能的な殺戮の衝動を、僕に預けるなんてやり方でなくて、きちんと自分のものとしてコントロールできるようになる方法があったかもしれないと思うんだ」
「私さえいなければ仲間たちは生きていたかもしれない。あのときみんなを巻き込んだのは間違いだったかと時々思うの……」
キャロラインの脳裏に力が暴走して仲間を傷つけたときのことが思い出された。あのときの思いはもうしたくない。
「でも、あなたたちがみんなを、プリンスの支配から解放したんでしょ?」
「解放……。でもレイヴンとクロウとシエルしか残っていない」
「それしか生き残らなかったの……。みんなここまで来てほしかったのに……」
「あなたたちの仲間は、奴隷のまま生きていたかったと思うの?だったらついていかなかったはずよ。あなたたちは自由を与えたわ。少なくとも、心は誰にも縛れないってことを教えたんじゃないの?」
そんなこと何回も思おうとした。でも駄目だった。
「そんなふうに思おうとしてきた。でもときどき、それが僕のエゴにすぎないような気がして……」
その気持ちはわかる。キャロラインも何度も思ったことだからだ。