エドガーの妹です。たった一人の家族のことをとても大事に思ってます。
もう一つの物語 甘い罠に気を付けて
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5.触れる思い
「怒っているかい?」
暖炉のそばでそっぽを向いているリディアにエドガーが言った。
どうやらおとりにされたことを怒っているらしい。
「危険な目にあわせるつもりはなかった。連中には、きみに指一本触れさせないつもりで」
「言いわけは聞きたくないわ」
リディアが強く言った。
「黙ってて悪かったわ」
危険な目に結果的にあわせてしまった。キャロラインは今更ながら後悔していた。
「寒い?」
身体を抱え込むようにしてリディアは肩をさすっていた。
「たぶん……。せめてショールを羽織っていくんだったわ」
「暖炉のそばにいくかい?」
「無駄だと思う」
「そう、だね」
エドガーは少し考えた後リディアの瓶を両手でそっと持ち上げた。
「人の魂って、みんな自分を小さくしたみたいなのかな」
「さあ。でもこれは、あたしが自分をこんなふうにしかイメージできないからだと思うわ。どうせなら、もっと美人になっちゃえばよかった」
「じゅうぶんきれいだよ、リディアは」
「そうね。お兄さまの言う通りね」
「おだてたって、あたしは怒ってるんだから。……ちょっと、何するのよ」
エドガーはリディアを瓶ごと腕に抱きかかえた。
「なにをしているの?」
兄は何がしたいのだろうか。
「こうした方が暖かいかなと思って」
「無意味だって言ったでしょ。あたしの身体は、きっと冷たくて暗いところに転がされてるんだから」
「少しの辛抱だよ。きっとすぐに助け出すから」
「不安にならないで。ちゃんと魂を身体に戻してあげるから」
エドガーとキャロラインが励ます。
「ねえ、復讐って、グレアム卿をどうするの?」
リディアが訊いた。
「どうするかな」
「さあね。どうしようかしらね?」
とりあえず奴が運んでいるものと一緒にプリンスに送りつけるくらいしか考えつかない。
「復讐という方法しかないの?死んでしまった友達にしてあげられることは、それしかないと思ってる?」
「ほかに、何ができるっていうんだ?」
「あなたあたしに、霧に紛れて消えてしまった少年を助けてやってくれって言ったわ」
キャロラインは驚いた。兄がリディアにそんなことを言っていたなんて
「あれは……、感傷的過ぎたね。いくらフェアリードクターでも、死者を救い出すことなんてできないだろう?」
「そうね。でもあなたは生きている。あれは、ひとりの少年の話じゃないんでしょう?何人も、同じ境遇の少年がいたって、レイヴンに聞いたわ。あなたのことも含まれていたんでしょう?」
「どうだろうね」
エドガーは投げやりに言った。
自分だけが生き残ってしまった。それはキャロラインも感じていることだった。だから仲間のために何かしてやりたいのだ。
「本当に助けが必要なのは、あなたじゃないの?」
エドガーは答えなかった。
「あなた自身がまだ、霧の中にいるのよ。だから、仲間たちが犠牲になったことを受け入れきれないでいる……。だけど、グレアム卿に復讐したって、あなたが救われるとは思えないわ」
そうかもしれない。でもほかに何ができるというのだ。
エドガーはため息をついた。
「小さいままのきみも、悪くないな。いつでもそばに置いておける」
「えっ、あたしはいやよ!おなかはすくし寒いし、身体が病気になったらどうするのよ!」
リディアが抗議した。
「冗談だよ。本当は、冷たいガラス瓶なんかじゃなくて、生身のきみを抱きしめたい気分なんだ。君に触れて、あたたかさを確かめたい。でもそんなことをしたら、生身のきみは、僕をひっぱたいて逃げ出すんだろうと思っただけ」
「それ、あり得るわね」
キャロラインは苦笑した。あり得すぎる。
でも、小さいリディアも悪くない。おかげで彼女から大事なことを教わった気分だ。キャロラインはそう思った。
「怒っているかい?」
暖炉のそばでそっぽを向いているリディアにエドガーが言った。
どうやらおとりにされたことを怒っているらしい。
「危険な目にあわせるつもりはなかった。連中には、きみに指一本触れさせないつもりで」
「言いわけは聞きたくないわ」
リディアが強く言った。
「黙ってて悪かったわ」
危険な目に結果的にあわせてしまった。キャロラインは今更ながら後悔していた。
「寒い?」
身体を抱え込むようにしてリディアは肩をさすっていた。
「たぶん……。せめてショールを羽織っていくんだったわ」
「暖炉のそばにいくかい?」
「無駄だと思う」
「そう、だね」
エドガーは少し考えた後リディアの瓶を両手でそっと持ち上げた。
「人の魂って、みんな自分を小さくしたみたいなのかな」
「さあ。でもこれは、あたしが自分をこんなふうにしかイメージできないからだと思うわ。どうせなら、もっと美人になっちゃえばよかった」
「じゅうぶんきれいだよ、リディアは」
「そうね。お兄さまの言う通りね」
「おだてたって、あたしは怒ってるんだから。……ちょっと、何するのよ」
エドガーはリディアを瓶ごと腕に抱きかかえた。
「なにをしているの?」
兄は何がしたいのだろうか。
「こうした方が暖かいかなと思って」
「無意味だって言ったでしょ。あたしの身体は、きっと冷たくて暗いところに転がされてるんだから」
「少しの辛抱だよ。きっとすぐに助け出すから」
「不安にならないで。ちゃんと魂を身体に戻してあげるから」
エドガーとキャロラインが励ます。
「ねえ、復讐って、グレアム卿をどうするの?」
リディアが訊いた。
「どうするかな」
「さあね。どうしようかしらね?」
とりあえず奴が運んでいるものと一緒にプリンスに送りつけるくらいしか考えつかない。
「復讐という方法しかないの?死んでしまった友達にしてあげられることは、それしかないと思ってる?」
「ほかに、何ができるっていうんだ?」
「あなたあたしに、霧に紛れて消えてしまった少年を助けてやってくれって言ったわ」
キャロラインは驚いた。兄がリディアにそんなことを言っていたなんて
「あれは……、感傷的過ぎたね。いくらフェアリードクターでも、死者を救い出すことなんてできないだろう?」
「そうね。でもあなたは生きている。あれは、ひとりの少年の話じゃないんでしょう?何人も、同じ境遇の少年がいたって、レイヴンに聞いたわ。あなたのことも含まれていたんでしょう?」
「どうだろうね」
エドガーは投げやりに言った。
自分だけが生き残ってしまった。それはキャロラインも感じていることだった。だから仲間のために何かしてやりたいのだ。
「本当に助けが必要なのは、あなたじゃないの?」
エドガーは答えなかった。
「あなた自身がまだ、霧の中にいるのよ。だから、仲間たちが犠牲になったことを受け入れきれないでいる……。だけど、グレアム卿に復讐したって、あなたが救われるとは思えないわ」
そうかもしれない。でもほかに何ができるというのだ。
エドガーはため息をついた。
「小さいままのきみも、悪くないな。いつでもそばに置いておける」
「えっ、あたしはいやよ!おなかはすくし寒いし、身体が病気になったらどうするのよ!」
リディアが抗議した。
「冗談だよ。本当は、冷たいガラス瓶なんかじゃなくて、生身のきみを抱きしめたい気分なんだ。君に触れて、あたたかさを確かめたい。でもそんなことをしたら、生身のきみは、僕をひっぱたいて逃げ出すんだろうと思っただけ」
「それ、あり得るわね」
キャロラインは苦笑した。あり得すぎる。
でも、小さいリディアも悪くない。おかげで彼女から大事なことを教わった気分だ。キャロラインはそう思った。