「エドガー？」
湖に向かう途中で声をかけてくる人物がいた。
「ロバートじゃないか」
エドガーはその人物を見て驚いたような顔をした。声をかけてきたのはダール公爵令息、ロバートだった。
「こんなところで奇遇だね。ところでお連れのお嬢さんはいったい誰だい？」
「ああ。リディア・カールトン嬢だ。僕の専属フェアリードクターをしている。リディア。こちらがロバート・ダール公爵令息だ。ダールトン侯爵でもある。」
「へえ。彼女が……」
ロバートは興味深そうにリディアを見た。
「ところでロバートは何しに来たんだい？」
「ちょっと遊びにね。ところで湖でボートに乗りたいんだ。一緒に乗らないかい？」
「私、一緒に行くわ」
キャロラインは言った。
「そう。楽しんでおいで」
エドガーはにっこり笑って言った。
こうしてキャロラインはロバートと共にボートに乗ることになった。


「ここから花火が見られるそうですよ」
「そうなの。ところで敬語はなしでいいわ。私のことはキャロラインって呼んで」
ロバートはしばし考えたがにっこり笑って頷いた。
「なら、僕のことをロバートと呼んで下さい」
「分かったわ」
キャロラインは頷いた。
「そう言えば花火なんていつ以来かな……」
キャロラインはそう呟いた。
「前に見たことあるんですか？」
「ええ。ずっと昔にね……」
キャロラインはそう言って遠くを見るような目をした。今は戻らない過去のことだ。
「あそこにエドガーがいる」
ロバートが指す方を見ると兄が乗っているボートが見つかった。
「本当だわ。ロザリーと一緒ね。リディアは帰ったのかしら？」
隣にいるのはロザリーというオレンジの髪の少女だったから不思議に思った。リディアはどうしたのだろう。
「そうなんじゃないかな。それにしてもロザリーか……。彼女の叔父さんは金遣いが荒いみたいだね」
それにキャロラインは反応した。グレアムはキャロラインの過去にかかわっているかもしれない人物だ。復讐をするためにももっと知りたいと思う。
「金遣いが荒い？どういうこと？」
知らない風を装って何気なく訊く。
「それはね……」
こうしてキャロラインはグレアムに関するいくつかの情報を聞き出すことに成功したのだった。