エドガーの妹です。たった一人の家族のことをとても大事に思ってます。
もう一つの物語 甘い罠に気を付けて
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「ところでリディア、できればこれからは、ひとりで出歩かないようにしてほしい。レイヴンが苦手ならメイド頭でも連れてってくれればいいし、送り迎えはこれまでどおり馬車で」
「そんな大げさなことをしなくても、これからは気をつけるわ」
「別に大げさなことじゃないよ。良家の子女ならほとんどそうしてる」
「確かにそうね。都会は物騒だから……。メイドじゃなくてもクロウかシエルを連れてってくれれば安心するわ」
「でもあたしは貴族じゃないわ。それにひとりで行動する方が慣れてるし、好きなの」
だがリディアはキャロラインとエドガーの提案に乗り気じゃないようだ。
「ああ。確かにそんな感じするわよね」
キャロラインは納得した。確かにリディアはひとりでいる方が好きなタイプだろう。
「ここはスコットランドじゃなくて、女王陛下の都だよ。身なりや振る舞いで判断される。きみの父上は王立アカデミーの会員でもあるし、上流社会でも名を知られた学者だ。その娘なんだから、レディの常識を意識しておいた方がいい。だろう?キャロライン」
「確かにないよりあったほうがいいわね」
キャロラインは頷いた。上流階級ではレディとしてのたしなみがあったほうが生きやすい。
「父はそんなの気にしないもの」
「だけどきみが立派なレディになることに反対するかな。そんなに堅苦しいことじゃないよ。基本さえはずさなければ、ちょっとした奇言や奇行は問題にならない。妖精が見えようが声が聞こえようが、思う存分妖精について語ったって、個性の一つと思ってくれる」
「だからあなたみたいなもとギャングが貴族面していられるのね」
「そういうこと」
エドガーは頷いた。
だがエドガーの思い通りと言うのがリディアは気に入らないらしい。
「あたしをレディに仕立て上げたいのは、単なるあなたの暇つぶしでしょう?この仕事部屋だって花束だって、どうかしてるわよ」
「気に入らなかった?何もかも、きみのイメージでそろえたつもりなんだけど」
「はあ?どこがよ」
「たとえばこの薔薇、アイスグリーンの花を咲かせる珍しい品種なんだよ。ランプの明かりの元で見れば、ちょうど金緑に輝いて、きみの瞳のようだ」
そう言ってエドガーはそばの薔薇に唇を寄せる。
キャロラインはまた始まったと思った。
「そしてきみは花園の妖精。ここにきみが座ることで、この部屋は一枚の絵のように完成する。思った通りすばらしい風景だ。ああそう、できることならきみのそばに、小さなスミレが咲くことを許してくれないか。いつでもきみを見つめていたい僕の代わりに、キャラメル色のその髪を美しく引き立てると……」
「ああもうっ、わかったわ!だからやめて」
リディアは脱力しながらそれを受け取った。
「お兄さまったらいつでもどこでも口説くんだから……」
キャロラインは呆れた。もうあれは習慣としか言いようがない。
エドガーは喋りたりないようで肩をすくめた。
「レディとして扱うのは、きみを使用人のひとりとして雇ってるわけじゃないからだ。この伯爵家の一員として、なくてはならない存在だからだよ」
「そうね。今の私たちがあるのはリディアのおかげよ」
キャロラインは頷いた。
「そう。伯爵の立場はきみがくれたものだから、これは僕だけのものじゃなく、きみがいてこそなんだと思ってる。フェアリードクターとしてのきみは、貴重なパートナーなんだ」
「あたしは裏方がいいわ。着飾って、あなたの付属品になんかなりたくないもの」
「宝石は、人の目を惹きつけてこそ価値がある。若く美しいフェアリードクターを裏方にしておくなんて宝の持ち腐れだね」
「確かにリディアは綺麗よね……」
「だから、何のために?あなたを目立たせるためでしょう」
「そうじゃない。つまり……、いつでもそばにいてほしいと言っているんだよ」
エドガーは戸惑っているようだ。このように言われたことがないからだろう。
「……そんなに、あたしを監視しておきたいの?あなたがアメリカで処刑されたはずの犯罪者だってこと、知っているのはレイヴンとクロウとシエルとキャロラインの他にはあたしだけだからなのね?誰にも言うつもりなんかないから、安心して。あなたを伯爵と認めた妖精たちのためにも、フェアリードクターとして手伝えることはするわ。だからあたしをおだてたり、口説くふりなんてする必要はないのよ」
信用されていないな……。キャロラインはそう思った。
(当たり前か……。最初に騙したのは私たちだし……)
兄を見ていると落ち込んでいるように見える。
「そう、……そんなに嫌われてるとは思わなかった」
「あの、そういうわけじゃなくて」
去りかけたエドガーを呼びとめるようにリディアは立ち上がった。
「なら、嫌われてないのかな僕は」
エドガーはくるりと振り返るとリディアの手を握った。
「べつに、嫌いってほどでも……」
「どちらかというと好き?」
「は」
リディアは面食らったようだったが気を取り直した。
「ど……、どっちでもないわ!あたしは伯爵家のフェアリードクター、それ以上でもそれ以下でもないんだから、下世話な話はやめて。手を離してちょうだい」
キャロラインは兄にあれだけはっきり言える女の子も珍しいと思った。今までの女の子は兄にぼうっとなってしまうからだ。
「分かったよ。ならきみがよろこんでくれそうな話をしよう。フォグマンって知ってる?」
「霧男がどうかしたの?」
リディアは興味をひかれたようだった。
「ふうん、妖精の話になると、金緑の瞳が輝くんだね。さしあたり、僕の強力なライバルは妖精ってことか」
「お兄さまが気になるのはそこなのね……」
もう兄にはあきれるほかない。
「それについて、きみの意見を聞きたいというご婦人が来ている。いやなことがあったばかりで、もし疲れていないなら、会ってみてくれるかい?」
「フェアリードクターとしての腕が鳴るじゃない?」
リディアは二人の言葉に頷くとエドガーに案内されるように部屋を出て行った。
「そんな大げさなことをしなくても、これからは気をつけるわ」
「別に大げさなことじゃないよ。良家の子女ならほとんどそうしてる」
「確かにそうね。都会は物騒だから……。メイドじゃなくてもクロウかシエルを連れてってくれれば安心するわ」
「でもあたしは貴族じゃないわ。それにひとりで行動する方が慣れてるし、好きなの」
だがリディアはキャロラインとエドガーの提案に乗り気じゃないようだ。
「ああ。確かにそんな感じするわよね」
キャロラインは納得した。確かにリディアはひとりでいる方が好きなタイプだろう。
「ここはスコットランドじゃなくて、女王陛下の都だよ。身なりや振る舞いで判断される。きみの父上は王立アカデミーの会員でもあるし、上流社会でも名を知られた学者だ。その娘なんだから、レディの常識を意識しておいた方がいい。だろう?キャロライン」
「確かにないよりあったほうがいいわね」
キャロラインは頷いた。上流階級ではレディとしてのたしなみがあったほうが生きやすい。
「父はそんなの気にしないもの」
「だけどきみが立派なレディになることに反対するかな。そんなに堅苦しいことじゃないよ。基本さえはずさなければ、ちょっとした奇言や奇行は問題にならない。妖精が見えようが声が聞こえようが、思う存分妖精について語ったって、個性の一つと思ってくれる」
「だからあなたみたいなもとギャングが貴族面していられるのね」
「そういうこと」
エドガーは頷いた。
だがエドガーの思い通りと言うのがリディアは気に入らないらしい。
「あたしをレディに仕立て上げたいのは、単なるあなたの暇つぶしでしょう?この仕事部屋だって花束だって、どうかしてるわよ」
「気に入らなかった?何もかも、きみのイメージでそろえたつもりなんだけど」
「はあ?どこがよ」
「たとえばこの薔薇、アイスグリーンの花を咲かせる珍しい品種なんだよ。ランプの明かりの元で見れば、ちょうど金緑に輝いて、きみの瞳のようだ」
そう言ってエドガーはそばの薔薇に唇を寄せる。
キャロラインはまた始まったと思った。
「そしてきみは花園の妖精。ここにきみが座ることで、この部屋は一枚の絵のように完成する。思った通りすばらしい風景だ。ああそう、できることならきみのそばに、小さなスミレが咲くことを許してくれないか。いつでもきみを見つめていたい僕の代わりに、キャラメル色のその髪を美しく引き立てると……」
「ああもうっ、わかったわ!だからやめて」
リディアは脱力しながらそれを受け取った。
「お兄さまったらいつでもどこでも口説くんだから……」
キャロラインは呆れた。もうあれは習慣としか言いようがない。
エドガーは喋りたりないようで肩をすくめた。
「レディとして扱うのは、きみを使用人のひとりとして雇ってるわけじゃないからだ。この伯爵家の一員として、なくてはならない存在だからだよ」
「そうね。今の私たちがあるのはリディアのおかげよ」
キャロラインは頷いた。
「そう。伯爵の立場はきみがくれたものだから、これは僕だけのものじゃなく、きみがいてこそなんだと思ってる。フェアリードクターとしてのきみは、貴重なパートナーなんだ」
「あたしは裏方がいいわ。着飾って、あなたの付属品になんかなりたくないもの」
「宝石は、人の目を惹きつけてこそ価値がある。若く美しいフェアリードクターを裏方にしておくなんて宝の持ち腐れだね」
「確かにリディアは綺麗よね……」
「だから、何のために?あなたを目立たせるためでしょう」
「そうじゃない。つまり……、いつでもそばにいてほしいと言っているんだよ」
エドガーは戸惑っているようだ。このように言われたことがないからだろう。
「……そんなに、あたしを監視しておきたいの?あなたがアメリカで処刑されたはずの犯罪者だってこと、知っているのはレイヴンとクロウとシエルとキャロラインの他にはあたしだけだからなのね?誰にも言うつもりなんかないから、安心して。あなたを伯爵と認めた妖精たちのためにも、フェアリードクターとして手伝えることはするわ。だからあたしをおだてたり、口説くふりなんてする必要はないのよ」
信用されていないな……。キャロラインはそう思った。
(当たり前か……。最初に騙したのは私たちだし……)
兄を見ていると落ち込んでいるように見える。
「そう、……そんなに嫌われてるとは思わなかった」
「あの、そういうわけじゃなくて」
去りかけたエドガーを呼びとめるようにリディアは立ち上がった。
「なら、嫌われてないのかな僕は」
エドガーはくるりと振り返るとリディアの手を握った。
「べつに、嫌いってほどでも……」
「どちらかというと好き?」
「は」
リディアは面食らったようだったが気を取り直した。
「ど……、どっちでもないわ!あたしは伯爵家のフェアリードクター、それ以上でもそれ以下でもないんだから、下世話な話はやめて。手を離してちょうだい」
キャロラインは兄にあれだけはっきり言える女の子も珍しいと思った。今までの女の子は兄にぼうっとなってしまうからだ。
「分かったよ。ならきみがよろこんでくれそうな話をしよう。フォグマンって知ってる?」
「霧男がどうかしたの?」
リディアは興味をひかれたようだった。
「ふうん、妖精の話になると、金緑の瞳が輝くんだね。さしあたり、僕の強力なライバルは妖精ってことか」
「お兄さまが気になるのはそこなのね……」
もう兄にはあきれるほかない。
「それについて、きみの意見を聞きたいというご婦人が来ている。いやなことがあったばかりで、もし疲れていないなら、会ってみてくれるかい?」
「フェアリードクターとしての腕が鳴るじゃない?」
リディアは二人の言葉に頷くとエドガーに案内されるように部屋を出て行った。