エドガーの妹です。たった一人の家族のことをとても大事に思ってます。
もう一つの物語 あいつは優雅な大悪党
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「ん……」
キャロラインが目を覚ますと民家らしい簡素な部屋にいた。
「ずいぶん時代錯誤な剣ですな。この物騒なものを手に脅されていたとか…」
どうやら兄が誘拐犯として疑われているらしい。
「さわるな」
のっそりと兄が身を起こして言った。
「それは僕の剣だ」
鋭い気迫におされたのか、警官はとりあえず元の場所に剣を戻した。しかし気を取り直したらしい。
「お目覚めですか。失礼ですが、お名前をお聞かせ願えますかな」
「伯爵!」
そのとき、表の扉が勢いよく開いて、宿の亭主、もとい、伯爵家執事のトムキンスが駆け込んできた。
執事は姿勢を正して言った。
「お帰りなさいませ、ご主人様(マイロード)」
トムキンスは感慨深げに言った。
「このような普段着で失礼します。この家のものが知らせてくれたのですが、なにぶん突然のことで、伯爵が生きて戻られたと聞き、急ぎ駆けつけたしだいでございます」
「ああ、気にするな」
「ちょっと待ってください。……とすると、こちらは」
警官はまだ不審げな顔をしていた。
「マナーン島の領主のアシェンバート伯爵でございます」
「本当ですか?この島に領主が住んでいるという話は聞いたことがありませんが」
「長いこと外国にいらっしゃいましたからね」
「トムキンス、水をくれないか」
エドガーは水を頼んだ。
キャロラインはそれを横目でみて、兄が伯爵になれたんだと思った。自分たちはプリンスに対抗できる力を手に入れたのだ。
それからしばらくしてキャロラインはクロウとシエルとともに部屋の中にいた。
兄の疑いもリディアのおかげで晴れた。
「クロウ、シエル。つらかっただろうに愚痴も言わないでついてきてくれてありがとう」
「いえ、キャロラインさま。つらいと思ったことはありませんわ。あなたがいたから私たちはここまでついてくることができた。」
「シエルの言うとおりです。私たちはあなたについていきたいと思ったからここまでついてきたんです」
シエルとクロウはにっこり笑って言った。
「クロウ、シエル……」
キャロラインが感激していると怒鳴り声が聞こえた。
「父さま、早く帰りましょ。いやなことばっかりだったから、さっさと忘れたいわっ!」
リディアの怒鳴り声だ。
「なかなか、ストレートに怒るよね、彼女は。いっそ気持ちがいいくらいだ」
どうやら兄がリディアを怒らせるようなことを言ったらしい。
「エドガーさま、なぜわざわざ、リディアさんを怒らせるようなことを言ったのですか」
レイヴンが歩み寄りながら言った。
「照れ隠しかな」
「はあ」
レイヴンはわけがわからないと言った風だ。
「そんなところもかわいいけどねって、抱きしめながら言ってしまったから」
「照れるほどのことでは。もっと恥ずかしいことを、日ごろから平気で口にしておられるように思いますが」
「そうよ。歯が浮くようなセリフをいつも言っているくせに」
女性を口説くときに兄が使う台詞は鳥肌が立ちそうなくらい恥ずかしい。
なのにそれくらいのことで照れるなんて……。
「わかってないね。口先だけのことなら平気で言えるんだよ」
へえ。だから兄の台詞には心がこもっていないのか。キャロラインはそう思った。
「……でしたら、絶交されてしまっては意味がないのでは」
レイヴンの台詞にエドガーは笑みを曇らせて言った。
「当分、自粛するべきだろう?」
アーミンのことを兄は言っているのだ。
「花を摘みに行こう。彼女に手向けるために」
「そうね、アーミンきっと喜ぶわよね」
そう言ってキャロラインは目を伏せた。
向こうで幸せになってくれればいい。
そう心から願った。
キャロラインが目を覚ますと民家らしい簡素な部屋にいた。
「ずいぶん時代錯誤な剣ですな。この物騒なものを手に脅されていたとか…」
どうやら兄が誘拐犯として疑われているらしい。
「さわるな」
のっそりと兄が身を起こして言った。
「それは僕の剣だ」
鋭い気迫におされたのか、警官はとりあえず元の場所に剣を戻した。しかし気を取り直したらしい。
「お目覚めですか。失礼ですが、お名前をお聞かせ願えますかな」
「伯爵!」
そのとき、表の扉が勢いよく開いて、宿の亭主、もとい、伯爵家執事のトムキンスが駆け込んできた。
執事は姿勢を正して言った。
「お帰りなさいませ、ご主人様(マイロード)」
トムキンスは感慨深げに言った。
「このような普段着で失礼します。この家のものが知らせてくれたのですが、なにぶん突然のことで、伯爵が生きて戻られたと聞き、急ぎ駆けつけたしだいでございます」
「ああ、気にするな」
「ちょっと待ってください。……とすると、こちらは」
警官はまだ不審げな顔をしていた。
「マナーン島の領主のアシェンバート伯爵でございます」
「本当ですか?この島に領主が住んでいるという話は聞いたことがありませんが」
「長いこと外国にいらっしゃいましたからね」
「トムキンス、水をくれないか」
エドガーは水を頼んだ。
キャロラインはそれを横目でみて、兄が伯爵になれたんだと思った。自分たちはプリンスに対抗できる力を手に入れたのだ。
それからしばらくしてキャロラインはクロウとシエルとともに部屋の中にいた。
兄の疑いもリディアのおかげで晴れた。
「クロウ、シエル。つらかっただろうに愚痴も言わないでついてきてくれてありがとう」
「いえ、キャロラインさま。つらいと思ったことはありませんわ。あなたがいたから私たちはここまでついてくることができた。」
「シエルの言うとおりです。私たちはあなたについていきたいと思ったからここまでついてきたんです」
シエルとクロウはにっこり笑って言った。
「クロウ、シエル……」
キャロラインが感激していると怒鳴り声が聞こえた。
「父さま、早く帰りましょ。いやなことばっかりだったから、さっさと忘れたいわっ!」
リディアの怒鳴り声だ。
「なかなか、ストレートに怒るよね、彼女は。いっそ気持ちがいいくらいだ」
どうやら兄がリディアを怒らせるようなことを言ったらしい。
「エドガーさま、なぜわざわざ、リディアさんを怒らせるようなことを言ったのですか」
レイヴンが歩み寄りながら言った。
「照れ隠しかな」
「はあ」
レイヴンはわけがわからないと言った風だ。
「そんなところもかわいいけどねって、抱きしめながら言ってしまったから」
「照れるほどのことでは。もっと恥ずかしいことを、日ごろから平気で口にしておられるように思いますが」
「そうよ。歯が浮くようなセリフをいつも言っているくせに」
女性を口説くときに兄が使う台詞は鳥肌が立ちそうなくらい恥ずかしい。
なのにそれくらいのことで照れるなんて……。
「わかってないね。口先だけのことなら平気で言えるんだよ」
へえ。だから兄の台詞には心がこもっていないのか。キャロラインはそう思った。
「……でしたら、絶交されてしまっては意味がないのでは」
レイヴンの台詞にエドガーは笑みを曇らせて言った。
「当分、自粛するべきだろう?」
アーミンのことを兄は言っているのだ。
「花を摘みに行こう。彼女に手向けるために」
「そうね、アーミンきっと喜ぶわよね」
そう言ってキャロラインは目を伏せた。
向こうで幸せになってくれればいい。
そう心から願った。