エドガーの妹です。たった一人の家族のことをとても大事に思ってます。
もう一つの物語 あいつは優雅な大悪党
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8.新たな青騎士伯爵
浅いはずの水たまりに入れば深い海の底へとやってきた。
海の中なのに苦しくない。不思議だとキャロラインは思った。
やがてメロウの町が見えてきた。
「見ろ、人間だ」
「自由に歩き回ってるぞ」
「ってことは、オレたちのものじゃないのか」
「それにあの、小さい生き物はなんだ」
「妖精のようだが」
メロウたちがじろじろと見てくる。
「ねえ、ついさっき、人間がここへ連れ去られてきたでしょう?見かけなかった?」
リディアがメロウたちに訊く。
「魂を抜き取る前なら、牧場にいるだろうよ」
指差した方向へ向かえばエドガーがいた。
「お兄さま!」
「エドガー!よかった、まだ魂を抜き取られてなかったのね」
エドガーは駆け寄るリディアに不思議そうな目を向けた。
「きみが夢にあらわれるなんて。やっぱり僕のこと恨んでる?」
「夢じゃないわよ。」
「夢でたまるもんですか。馬鹿兄」
「いや、これは夢だろう。海の底で僕は、平然と魚が泳ぐのを眺めているんだよ。それにつねってみても痛くない」
「まあそうね、あなたにとっては、夢を見ているのと同じようなじょうたいかもしれないわね。でもあたしは今、夢を見ているわけじゃないわ」
唐突にエドガーはリディアの頬をつねった。
「痛たたっ……、何すんのよ!」
「本当だ。どうなってるんだ?」
「もうっ、どうでもいいわよ!とにかく、あたしと一緒に来るのよ。いちおう、あなたを助けにきたんだから!」
リディアがエドガーの袖を引っ張るが彼は動こうとしない。
「助ける?でも僕にはもう、助かっても何の希望もない。アーミンは死んでしまったし、キャロラインやレイヴンやクロウやシエルを救ってやるには力が足りなかった。
「キャロラインたちにはあなたが必要なはずよ!」
「そうよ!それにたった一人の身内を見捨てることなんてできないわ! 勝手に死のうとしてショックだったんだから! もう身内が死ぬのを見たくないの!」
キャロラインは必死で言った。もう兄を失いたくない。
「プリンスのもとへ連れ戻されれば、レイヴンの精霊が僕に従うということやキャロラインの力が悪用されてしまう」
「つかまらなきゃいいんでしょ」
「無理だと言っただろう?これまでだって、逃げているつもりで泳がされていただけだった。それにきみのことも、ひどいだまし方をしたのに僕を助ける必要はないよ」
「このまま死んだら、あたしは許さないわよ。だってあなたは、あたしにしたことを悔やんで自分をきったわけじゃない。……宝剣のサファイアに星がないのに気付いたからでしょう?スターサファイアでないなら、青騎士伯爵のあかしにならない。自分のやってきたことは無駄だったって悟ったから、望みを捨てたのよ」
「その通りだ。なのに……」
「あたしを殺そうとしたこと、心から悔やんでもらうわ。傲慢な気持ちで他人を犠牲にすれば、自分にも跳ね返ってくるって思い知るのね。……だから、あなたがあのときあたしを切っていたら、けっして手に入らなかったものをあげる」
「………」
「上手くいくとはかぎらないけど。うまくいったらたっぷり反省するのね!」
リディアが袖を引くとエドガーはついてきた。
「あきらめなさいな、お兄さま。リディアは底抜けのお人好しなのよ」
困惑気な顔を向けてくるエドガーにキャロラインは言った。
「おいおい、勝手につれていっちゃ困る」
牧場の管理人らしいメロウが現れて止める。
「勝手にじゃないわ。これからかけあうんだから、伯爵の宝剣を管理していた責任者を教えてちょうだい」
リディアが宝剣をだしてすごむと管理人は肩をすくめて丘のてっぺんにある城を指差した。
「人間はかわいそうだ。女がこんなにきついのばっかりなら、魂の明かりになった方がましだ」
メロウは同情するような視線をエドガーによこした。
全員がそういうわけじゃない。キャロラインはそう思った。
「どうせあたしはきついわよ」
「きみのその、はっきりしたものの言い方が、僕はけっこう好きなんだけどね」
「はっきりものを言えるっていいことよ」
本心だった。はっきりものを言える彼女の性格はすごくいいと思ったのだ。
「おだてたって、助かるかどうかはわからないわよ」
リディアはエドガーに向かってそう言ったのだった。
責任者に向かって会いに行く途中ニコがエドガーを助けることに反対したが、上着をプレゼントすることで落ち着いた。
「ごめんね、ニコ。お兄さまが迷惑をかけて」
キャロラインは暖炉にニコを放り投げようとした兄の暴挙を今更ながら謝った。
「まあ、いいさ。それにしてもあんた、中に強い精霊がいるな……。偉大なる力 か?」
キャロラインはドキリとした。彼は自分の力のことを知っているのだ。
「グラン・フォルスっていったいなんなの?」
「あんた知らないでその力持っているのか!」
「いったいなんなのよ。私はその力のことを人を殺せる力だと言うことしか知らないわ」
「アンシーリーコートの力の側面しか使っていないのか!あのな、グラン・フォルスっていうのは……」
そこでニコの言葉が途切れた。目的地に着いたのだ。キャロラインは後で訊くことにした。これから兄が青騎士伯爵になれるかどうかの運命が決まるからだ。
(お願い。無事に伯爵になれますように……)
こんなに祈ったことがないほどだった。
浅いはずの水たまりに入れば深い海の底へとやってきた。
海の中なのに苦しくない。不思議だとキャロラインは思った。
やがてメロウの町が見えてきた。
「見ろ、人間だ」
「自由に歩き回ってるぞ」
「ってことは、オレたちのものじゃないのか」
「それにあの、小さい生き物はなんだ」
「妖精のようだが」
メロウたちがじろじろと見てくる。
「ねえ、ついさっき、人間がここへ連れ去られてきたでしょう?見かけなかった?」
リディアがメロウたちに訊く。
「魂を抜き取る前なら、牧場にいるだろうよ」
指差した方向へ向かえばエドガーがいた。
「お兄さま!」
「エドガー!よかった、まだ魂を抜き取られてなかったのね」
エドガーは駆け寄るリディアに不思議そうな目を向けた。
「きみが夢にあらわれるなんて。やっぱり僕のこと恨んでる?」
「夢じゃないわよ。」
「夢でたまるもんですか。馬鹿兄」
「いや、これは夢だろう。海の底で僕は、平然と魚が泳ぐのを眺めているんだよ。それにつねってみても痛くない」
「まあそうね、あなたにとっては、夢を見ているのと同じようなじょうたいかもしれないわね。でもあたしは今、夢を見ているわけじゃないわ」
唐突にエドガーはリディアの頬をつねった。
「痛たたっ……、何すんのよ!」
「本当だ。どうなってるんだ?」
「もうっ、どうでもいいわよ!とにかく、あたしと一緒に来るのよ。いちおう、あなたを助けにきたんだから!」
リディアがエドガーの袖を引っ張るが彼は動こうとしない。
「助ける?でも僕にはもう、助かっても何の希望もない。アーミンは死んでしまったし、キャロラインやレイヴンやクロウやシエルを救ってやるには力が足りなかった。
「キャロラインたちにはあなたが必要なはずよ!」
「そうよ!それにたった一人の身内を見捨てることなんてできないわ! 勝手に死のうとしてショックだったんだから! もう身内が死ぬのを見たくないの!」
キャロラインは必死で言った。もう兄を失いたくない。
「プリンスのもとへ連れ戻されれば、レイヴンの精霊が僕に従うということやキャロラインの力が悪用されてしまう」
「つかまらなきゃいいんでしょ」
「無理だと言っただろう?これまでだって、逃げているつもりで泳がされていただけだった。それにきみのことも、ひどいだまし方をしたのに僕を助ける必要はないよ」
「このまま死んだら、あたしは許さないわよ。だってあなたは、あたしにしたことを悔やんで自分をきったわけじゃない。……宝剣のサファイアに星がないのに気付いたからでしょう?スターサファイアでないなら、青騎士伯爵のあかしにならない。自分のやってきたことは無駄だったって悟ったから、望みを捨てたのよ」
「その通りだ。なのに……」
「あたしを殺そうとしたこと、心から悔やんでもらうわ。傲慢な気持ちで他人を犠牲にすれば、自分にも跳ね返ってくるって思い知るのね。……だから、あなたがあのときあたしを切っていたら、けっして手に入らなかったものをあげる」
「………」
「上手くいくとはかぎらないけど。うまくいったらたっぷり反省するのね!」
リディアが袖を引くとエドガーはついてきた。
「あきらめなさいな、お兄さま。リディアは底抜けのお人好しなのよ」
困惑気な顔を向けてくるエドガーにキャロラインは言った。
「おいおい、勝手につれていっちゃ困る」
牧場の管理人らしいメロウが現れて止める。
「勝手にじゃないわ。これからかけあうんだから、伯爵の宝剣を管理していた責任者を教えてちょうだい」
リディアが宝剣をだしてすごむと管理人は肩をすくめて丘のてっぺんにある城を指差した。
「人間はかわいそうだ。女がこんなにきついのばっかりなら、魂の明かりになった方がましだ」
メロウは同情するような視線をエドガーによこした。
全員がそういうわけじゃない。キャロラインはそう思った。
「どうせあたしはきついわよ」
「きみのその、はっきりしたものの言い方が、僕はけっこう好きなんだけどね」
「はっきりものを言えるっていいことよ」
本心だった。はっきりものを言える彼女の性格はすごくいいと思ったのだ。
「おだてたって、助かるかどうかはわからないわよ」
リディアはエドガーに向かってそう言ったのだった。
責任者に向かって会いに行く途中ニコがエドガーを助けることに反対したが、上着をプレゼントすることで落ち着いた。
「ごめんね、ニコ。お兄さまが迷惑をかけて」
キャロラインは暖炉にニコを放り投げようとした兄の暴挙を今更ながら謝った。
「まあ、いいさ。それにしてもあんた、中に強い精霊がいるな……。
キャロラインはドキリとした。彼は自分の力のことを知っているのだ。
「グラン・フォルスっていったいなんなの?」
「あんた知らないでその力持っているのか!」
「いったいなんなのよ。私はその力のことを人を殺せる力だと言うことしか知らないわ」
「アンシーリーコートの力の側面しか使っていないのか!あのな、グラン・フォルスっていうのは……」
そこでニコの言葉が途切れた。目的地に着いたのだ。キャロラインは後で訊くことにした。これから兄が青騎士伯爵になれるかどうかの運命が決まるからだ。
(お願い。無事に伯爵になれますように……)
こんなに祈ったことがないほどだった。