エドガーの妹です。たった一人の家族のことをとても大事に思ってます。
もう一つの物語 あいつは優雅な大悪党
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メロウがゆっくりとこちらへ近づいてきた。
剣を拾い、リディアに差し出す。
「剣によって傷つかなかった方。どうぞこれを」
「……それでいいの?あなたたちはこれを、伯爵家の後継者のために守ってきたんでしょう?」
リディアが訊いた。
「伯爵は亡くなりました。ずっと昔、わたしたちも助けることのできない遠い海で」
「伯爵家の血筋が途絶えたってことなの?」
たしかにそれはキャロラインも気になっていたことだ。
「それはわかりません。ただあれからずっと、長い年月が過ぎても、正しく謎を解ける人が現れなかったのは、そういうことなのでしょう。これまで伯爵家の後継者は、長くても百年を待たずに、妖精国と人の領地を行き来しておりました。けれどもう、伯爵家の人間がいないなら、フェアリードクターにしか、ここへ来ることはできないだろうと思っておりました。あなたがそうでいらっしゃいますね」
「それであなたたちは、フェアリードクターを待っていたの?」
メロウの少女は切なげに頷いた。
「メロウ一族が、この海に暮らすことを許して下さったのは伯爵です。伯爵が、人とわたしたちとの間を取り持ち、平和に暮らせるようにしてくださいました。けれど伯爵がいなくなり、年月が過ぎ、島の人々に混じるメロウの血は薄れ、隔たりができてきました。わたしたちは宝剣を守るために、島の周囲の海を絶えず波立てるものの、海へ投げ出すのは盗賊ばかりで、もともとは村人や島を訪れる人々にはけっして迷惑をかけないよう、お互い合図を送りあっていたのです。けれどもしだいに、その方法が忘れ去られ、わたしたちは島に近づく船が盗賊か漁師か商人か、見分けられなくなってしまいました」
「それでこの島は孤立しているのね」
「だから島の周囲の波は荒れているのか」
キャロラインは納得した。
「メロウの数も減っております。ここでの暮らしに失望し、故郷の海へ帰った者も少なくありません。でもわたしたちのほとんどは、伯爵との約束を破るわけにもいかなかったのです」
メロウは剣をリディアの手に握らせた。
「けれどこれで、約束は果たされました。剣は人間界のもの。この島も、人の土地。わたしたちは去ります。人の土地を治める者は、妖精国から来た青騎士卿の子孫でなくても、事足りるでしょう。すべてはおまかせしたいと思います」
「……星がないわ」
「ええっ!?」
リディアの言葉にキャロラインは驚くと同時に納得した。道理で兄が自分の手のひらを切ったわけだ。絶望したのだろう。それと同時に途方に暮れた。プリンスに負けない力を求めてきたのにこれじゃあその力を手に入れられない。それに兄もいなくなってしまった。
(どうしようかしら……)
兄がいなくなったショックでまともに考えることができなかった。
その間にリディアとメロウの会話が続く。
星は伯爵が持っているとのことだった。
”メロウの星は星とひきかえに”これが真実だったのだ。
やがて戸口が騒がしくなった。
「キャロラインさま、リディアさん、ハスクリーたちが来ます」
レイヴンがそう言ってリディアとキャロラインを守ろうとする。クロウとシエルも続く。いつの間にかメロウは姿を消していた。
「おい、剣をよこせ。さもないとおまえの親父が……」
ハスクリーは強気な言葉を吐く。
しかしそれは長くは続かなかった。
リディアの猫がハスクリーの頭の上に飛び乗ったのだ。
「ニコ、あぶないわ!」
リディアが叫ぶ。
「チビども、遅いぞ!こっちだ、やっちまえ!」
キャロラインはびっくりした。猫がしゃべっている!
「みんなハゲにしてしまえ!」
よくわからないがハスクリーたちは見えないもののせいでぼろぼろになっていた。
リディアを見るとカールトン教授と再会していた。
やがてリディアがこちらに歩み寄ってくる。
「ひとつだけ教えてほしいの。あなたたちはエドガーが持っていた銀の鍵に書かれていたことを覚えている?」
「少しだけね」
「すこしなら」
レイブンとキャロラインは答えた。
「メロウは人の魂とひきかえに宝剣を渡すとは、はっきり書いてなかったでしょう?」
「ええ。でも、最後の部分に”剣を得た者は、剣を試さねばならない。流された血をメロウは海へと連れ去るだろう”と書かれていたわ」
キャロラインはそう答えた。
「ここはまかせてもいい?」
リディアの言葉にレイヴンとクロウとシエルは顔を見合わせた。
キャロラインもリディアが何をする気なのかわからない。
「彼らはもう、争う意欲も力もなさそうだけど、いちおう気を付けて、父と一緒に城からでて」
「リディアさん、あなたは?」
「何もできないかもしれない。でも、できるだけのことはやってみるわ」
リディアはそう言ってカールトン教授を見た。
「父さま、あたしはフェアリードクターだから」
「わかった。気をつけるんだぞ」
そこでキャロラインはリディアの意図に気付いた。
「まさか、お兄さまを助けるつもりなの?」
「ええ。彼を伯爵に認めてもらうわ」
「どうして!?私達はあなたをだましていたのよ!?」
「わかっているわよ。でも助けたいの。」
「どこまでお人好しなの……」
キャロラインはリディアの性格をただのお人好しから超お人好しに変えた。彼女は底なしのお人好しだ。自分をだまそうとした人を助けようとするなんて。
だけどそのお人よしに救われそうだ。
兄を取り戻せるかもしれない。
「ニコ、お願い」
「まさかリディア、メロウと取引するつもりじゃ……」
「この水たまりからメロウの海につながっているんでしょ?妖精なんだから、妖精の道は案内できるわよね」
「そりゃ……、しかしな、取引をしくじって、メロウの棲家でメロウを怒らせてみろ、海の底じゃあっという間に溺れ死ぬぜ」
「そんなことわかってるわよ」
「あの貴族のためか?」
「彼はあたしに、うそはつかなかったわ」
「あんなの一瞬の気まぐれだ。直前まであんたをやる気満々だったし、今頃やっときゃよかったって後悔してるに違いない。後悔できる状態ならだがな」
「ニコ、案内してくれないならひとりで行くわよ」
「あーもう、わかったよ!」
ニコはリディアにしっぽを差し出した。
「しっかりつかまってろよ」
「あなたはどうする?」
キャロラインにリディアは訊いた。
「私も行く」
キャロラインはそう言ってニコのしっぽをつかんだ。兄がどうなっているの確認したかったし、助ける道があるなら助けたいと思っていたからだ。
剣を拾い、リディアに差し出す。
「剣によって傷つかなかった方。どうぞこれを」
「……それでいいの?あなたたちはこれを、伯爵家の後継者のために守ってきたんでしょう?」
リディアが訊いた。
「伯爵は亡くなりました。ずっと昔、わたしたちも助けることのできない遠い海で」
「伯爵家の血筋が途絶えたってことなの?」
たしかにそれはキャロラインも気になっていたことだ。
「それはわかりません。ただあれからずっと、長い年月が過ぎても、正しく謎を解ける人が現れなかったのは、そういうことなのでしょう。これまで伯爵家の後継者は、長くても百年を待たずに、妖精国と人の領地を行き来しておりました。けれどもう、伯爵家の人間がいないなら、フェアリードクターにしか、ここへ来ることはできないだろうと思っておりました。あなたがそうでいらっしゃいますね」
「それであなたたちは、フェアリードクターを待っていたの?」
メロウの少女は切なげに頷いた。
「メロウ一族が、この海に暮らすことを許して下さったのは伯爵です。伯爵が、人とわたしたちとの間を取り持ち、平和に暮らせるようにしてくださいました。けれど伯爵がいなくなり、年月が過ぎ、島の人々に混じるメロウの血は薄れ、隔たりができてきました。わたしたちは宝剣を守るために、島の周囲の海を絶えず波立てるものの、海へ投げ出すのは盗賊ばかりで、もともとは村人や島を訪れる人々にはけっして迷惑をかけないよう、お互い合図を送りあっていたのです。けれどもしだいに、その方法が忘れ去られ、わたしたちは島に近づく船が盗賊か漁師か商人か、見分けられなくなってしまいました」
「それでこの島は孤立しているのね」
「だから島の周囲の波は荒れているのか」
キャロラインは納得した。
「メロウの数も減っております。ここでの暮らしに失望し、故郷の海へ帰った者も少なくありません。でもわたしたちのほとんどは、伯爵との約束を破るわけにもいかなかったのです」
メロウは剣をリディアの手に握らせた。
「けれどこれで、約束は果たされました。剣は人間界のもの。この島も、人の土地。わたしたちは去ります。人の土地を治める者は、妖精国から来た青騎士卿の子孫でなくても、事足りるでしょう。すべてはおまかせしたいと思います」
「……星がないわ」
「ええっ!?」
リディアの言葉にキャロラインは驚くと同時に納得した。道理で兄が自分の手のひらを切ったわけだ。絶望したのだろう。それと同時に途方に暮れた。プリンスに負けない力を求めてきたのにこれじゃあその力を手に入れられない。それに兄もいなくなってしまった。
(どうしようかしら……)
兄がいなくなったショックでまともに考えることができなかった。
その間にリディアとメロウの会話が続く。
星は伯爵が持っているとのことだった。
”メロウの星は星とひきかえに”これが真実だったのだ。
やがて戸口が騒がしくなった。
「キャロラインさま、リディアさん、ハスクリーたちが来ます」
レイヴンがそう言ってリディアとキャロラインを守ろうとする。クロウとシエルも続く。いつの間にかメロウは姿を消していた。
「おい、剣をよこせ。さもないとおまえの親父が……」
ハスクリーは強気な言葉を吐く。
しかしそれは長くは続かなかった。
リディアの猫がハスクリーの頭の上に飛び乗ったのだ。
「ニコ、あぶないわ!」
リディアが叫ぶ。
「チビども、遅いぞ!こっちだ、やっちまえ!」
キャロラインはびっくりした。猫がしゃべっている!
「みんなハゲにしてしまえ!」
よくわからないがハスクリーたちは見えないもののせいでぼろぼろになっていた。
リディアを見るとカールトン教授と再会していた。
やがてリディアがこちらに歩み寄ってくる。
「ひとつだけ教えてほしいの。あなたたちはエドガーが持っていた銀の鍵に書かれていたことを覚えている?」
「少しだけね」
「すこしなら」
レイブンとキャロラインは答えた。
「メロウは人の魂とひきかえに宝剣を渡すとは、はっきり書いてなかったでしょう?」
「ええ。でも、最後の部分に”剣を得た者は、剣を試さねばならない。流された血をメロウは海へと連れ去るだろう”と書かれていたわ」
キャロラインはそう答えた。
「ここはまかせてもいい?」
リディアの言葉にレイヴンとクロウとシエルは顔を見合わせた。
キャロラインもリディアが何をする気なのかわからない。
「彼らはもう、争う意欲も力もなさそうだけど、いちおう気を付けて、父と一緒に城からでて」
「リディアさん、あなたは?」
「何もできないかもしれない。でも、できるだけのことはやってみるわ」
リディアはそう言ってカールトン教授を見た。
「父さま、あたしはフェアリードクターだから」
「わかった。気をつけるんだぞ」
そこでキャロラインはリディアの意図に気付いた。
「まさか、お兄さまを助けるつもりなの?」
「ええ。彼を伯爵に認めてもらうわ」
「どうして!?私達はあなたをだましていたのよ!?」
「わかっているわよ。でも助けたいの。」
「どこまでお人好しなの……」
キャロラインはリディアの性格をただのお人好しから超お人好しに変えた。彼女は底なしのお人好しだ。自分をだまそうとした人を助けようとするなんて。
だけどそのお人よしに救われそうだ。
兄を取り戻せるかもしれない。
「ニコ、お願い」
「まさかリディア、メロウと取引するつもりじゃ……」
「この水たまりからメロウの海につながっているんでしょ?妖精なんだから、妖精の道は案内できるわよね」
「そりゃ……、しかしな、取引をしくじって、メロウの棲家でメロウを怒らせてみろ、海の底じゃあっという間に溺れ死ぬぜ」
「そんなことわかってるわよ」
「あの貴族のためか?」
「彼はあたしに、うそはつかなかったわ」
「あんなの一瞬の気まぐれだ。直前まであんたをやる気満々だったし、今頃やっときゃよかったって後悔してるに違いない。後悔できる状態ならだがな」
「ニコ、案内してくれないならひとりで行くわよ」
「あーもう、わかったよ!」
ニコはリディアにしっぽを差し出した。
「しっかりつかまってろよ」
「あなたはどうする?」
キャロラインにリディアは訊いた。
「私も行く」
キャロラインはそう言ってニコのしっぽをつかんだ。兄がどうなっているの確認したかったし、助ける道があるなら助けたいと思っていたからだ。