エドガーの妹です。たった一人の家族のことをとても大事に思ってます。
もう一つの物語 恋人は幽霊
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「申し訳ございません、キャロラインさま。リディアさんを守れませんでした」
「私もご命令を遂行できず……」
リディアを部屋に運んだあと、クロウとシエルが謝ってきた。
「いいの。レイヴンの方が早かった。それだけよ。お前たちのせいではない」
首を横に振った。
「ですが……」
「大丈夫」
キャロラインはクロウとシエルだけのせいではないと否定した。
やがてリディアが目を覚ました。
「リディア。気が付いたのね」
キャロラインはほっとした。
「リディア、大丈夫かい? 僕が分かる?」
「……ええ」
頷くリディアはどこにも異変はなく、大丈夫そうだった。
「ああ、急に動かない方がいい。頭を打ったんだから」
「もう、なんともないわ」
リディアはゆっくりと起き上がった。
「すみませんでした。リディアさん」
レイヴンにしては珍しく落ち込んでいるようだった。
「気にしないで。あたしが勝手にしゃしゃり出て行ったせいだから」
リディアは気にしていない様だった。
「私の致命的な失態です」
「そんな大げさな……」
リディアは戸惑っているようだった。
「どんな罰でもうけるつもりです」
レイヴンは真剣だった。
「あなたの仕事はエドガーを守ることなんだし、あたしのことで思いつめなくても」
「いいえ、主人の奥方となられるあなたに怪我をさせるなど、許されることではありません」
その言葉を聞いてリディアは眉を寄せた。
「ちょっとエドガー、レイヴンにそんなことを言ったの?」
エドガーを非難する。
「そりゃ僕の最も信頼する従者には言っておかないと」
「本気にしてるじゃないの!」
「本気だから当然だよ」
兄はそういうが、どこまで本気なのだろうか。
キスするしないなどで騒ぐリディアとエドガーを見ながらキャロラインはそう思った。
「お兄さま、いい加減にリディアにかまうのはやめて。それでリディア、怪我はない?」
「ああ。そうだったね。痛いところはないかい?」
キャロラインとエドガーに訊かれてリディアは首を横に振った。
「あら? リディア、髪に何かついているわ」
ミスティアが気付く。
「本当ね。キラキラしたものでビーズみたい」
クリスティナも気づいた。
リディアは触って髪に何かついていることに気づき、本当だ、と呟いた。
「それで怪我はどうなんだい?」
エドガーにとっては髪についているものよりもそちらの方が大事だ。
「擦り傷一つないみたい。アーミンが助けてくれたからだわ。彼女の方がひどい怪我をしていたのに」
「あれは姉ではありません。エドガーさまを殺そうとしていました」
エドガーへの思いゆえに身を投げた彼女を知っているからこその発言だ。
「シエル、クロウ。おまえたちはどう?」
「レイヴンと同じ意見です。アーミンの姿をした何かだと思います」
「アーミンならエドガーさまを襲うわけありません」
二人も同じ意見のようだった。
「彼女自身はユリシスに逆らえないと言っていた。奴は僕を苦しめて殺すというより殺されることを命じられて現れたような気がする」
「あなたに襲い掛かって逆に殺されるつもりだったってこと?」
「レイヴンが駆けつけることくらい予想できたはずだ」
「確かに。その後、クロウとシエルが現れることも予想してたはず。3人に1人でかなうはずないってわかってたはずよ」
キャロラインはクロウとシエルのことも付け加えた。
「そのアーミンって人はエドガーやキャロラインにとって大切な人だったのでしょう? 違っても姿かたちが同じならあなたたちは殺したことで傷ついたはずよ」
今まで黙っていたミスティアが言った。
そのとおりだ、とキャロラインは思った。
アーミンじゃなくても姿形が同じなら再び彼女を殺すことに傷ついただろう。
「反吐が出るわね……」
ミスティアの言葉に頷いた。
相変わらず嫌な手を使ってくる。
「どういう意図で襲い掛かったのであれ、姉ではありません。エドガーさま、同情すれば敵の思うつぼです」
「キャロラインさまも気を付けてください。かつての仲間であれキャロラインさまを傷つけるものは敵です」
クロウはきっぱりと言い切った。
シエルもその横で頷いている。
「分かってる。お兄さま、あれはアーミンだと思う?」
「そうだな……、アーミンにあるはずの焼き印がなかった。そうだね?」
「ええ。焼き印はなかったわ」
あれはそう簡単には消えないはずなのになぜかなかったのだ。
「ではどうして私をとめたのですか。あのときとどめを刺しておくべきでした」
「どうしてかなあ」
兄は他人事のように言った。
「どうしても、アーミンに思えたんだ。彼女しか知らないようなことも知っていたし、表情とかしゃべり方の癖とか、焼き印以外は何もかもアーミンだった」
「確かに焼き印はないけど……。アーミンだったわね……」
「でも、あの焼き印は消せるものでは……」
レイヴンが指摘する。
確かにそうだ。
キャロラインの背中にはいまだにプリンスにつけられた焼き印があった。おかげで背中が開いたドレスを着ることはできなかった。
「僕のは消えたよ」
その言葉にはっとする。
メロウとの取引で消してもらったのだ。星を付けるためにその焼き印を利用したのだ。
「僕の場合は特別な条件でそうなっただけだ。アーミンにもそんなこと起きる可能性はあるのかな。それに、彼女が生きていたというのは焼き印が消えるくらい不思議なことに思えるんだ」
エドガーはリディアに訊いた。
彼女はしばらく考え込んでいた。キャロラインはじっと答えを待った。
「アーミンはセルキーなのかもしれない」
その言葉にキャロラインはシエルやクロウと顔を見合わせた。
セルキー。ミスティアやクリスティナと話していた妖精だ。
「彼女がセルキー……」
ミスティアが呟く。
「なら髪についているのは血か……」
クリスティナが頷いた。
あれがも血なら彼女は人間ではなくなっているのかもしれない。
「海で死んだ人はセルキーになるというわ。必ずそうなるというわけじゃないと思うけど、ユリシスって人はフェアリードクターの知識があるみたいだから、わざわざ彼女をセルキーとして蘇らせたんじゃないかしら」
「そんなことが……。君にもできるのか?」
「あたしには、セルキーを操るような力はないけど。でもユリシスが力を持つフェアリードクターならセルキーたちに亡骸を探させて、仲間に引き入れることはできるんじゃないかと思う」
キャロラインはリディアの言ったことを考えた。
わざわざアーミンをセルキーにしたその目的は何だろうか。
「アザラシ妖精は人だった時と同じ姿になれる? 記憶もあるのか?」
「どうなの? リディア。私があったセルキーは人だった時の記憶はなかったけれど……」
クリスティナが訊いた。
「そういう例はあったと思うわ。海で死んだ漁師が家へ現れて、でももう彼はセルキーだから、家族と別れてまた海へ入っていくの。妖精界の住人となった人は人の世界のことを忘れていくというけど、アーミンはまだ」
「セルキーになったばかりだから、人の記憶があるってことか」
「人の記憶が強いということでもあるわね」
エドガーとキャロラインは難しい顔をした。
「リディア、君の想像通りだったとして、どうして彼女やほかのセルキーたちもユリシスに従わなければならないんだ?」
「アザラシの毛皮を隠されたからよ。セルキーは毛皮を脱いで人の姿になるの。でも毛皮がないと海に帰れなくて、それを隠し持つ人の言いなりになるしかないわ。毛皮が彼らの魂みたいなものだから」
「毛皮を隠して無理や従わせるなんてむごいことを……」
ミスティアが呟く。
「ええ。毛皮を隠してセルキーと結婚した人の話とかは聞くけどね、このやり方は……」
クリスティナも渋い顔をした。
「なら、やつが隠した毛皮さえ見つければ、アーミンが利用されることはなくなるのか」
「それは……」
リディアが言いよどんだ。
「分かってる。人の記憶があるのなら、プリンスの影響を引きずっているかもってことなんでしょう? 私もお兄さまもそのことは頭にあるわよ」
心配するなとばかりに微笑んだ。
「妖精として無理やり呼び戻されたのなら、姉はやはり死んだのです。ここにいるのはユリシスの手先、たとえその支配を解くことができたとしても、プリンスの道具として蘇っただけの存在です」
「アーミンと戦うことに戸惑いはありますが、キャロラインさまと敵対するのなら容赦はしません」
「妹と同じくです。そしてキャロラインさまを傷つけるのなら、妹でも容赦はしませんから」
レイヴン、シエル、クロウの言葉にキャロラインとエドガーは深く息をついた。
彼らはこういった感情に希薄なところがあった。
「たぶん、お前たちの言う通りなんだろう。だけど、レイヴンにとっては姉だよ」
そう言われてレイヴンは不思議そうに首を傾げた。
レイヴンは三人の中で一番感情が希薄で、姉弟とかの情よりもエドガーの敵なら殺すという意識が強いのだろう。
しかしキャロラインとエドガーはアーミンの心情を考えてしまう。そこがレイヴンたちとの違いだろう。
「姉ではありません」
「人ではないから? 失った人に夢でも会いたいと思ったことはないか? 幽霊でもなんでももう一度言葉を交わせるならばと願ったことは?」
「私はあるわ。夢でもいいからもう一度会いたいって……。でも私が会いたい人は幽霊になって出てこないから……」
「うん。手の届かない遠いところに行ってしまった人たちだから……。でももし奇跡が起きて会えるのなら、会ってあやまりたいわ」
ミスティアとクリスティナの双子が呟いた。
キャロラインの知らない過去に会いたい人がいたらしい。
「そうね……。私はアーミンに何でもいいから会いたかった……。会って苦しめてしまったことを謝りたかったわ。お兄さまもそうでしょう?」
「ああ。どんな形でも僕を恨んでいたとしても会いたかったんだよ」
「気持ちはわかりますが、今回は危険です……」
「会いたいって気持ちは確かに私にもあります。ですが、敵か味方か分からない存在に心を傾けてお命を危険にさらすのはよくないことです」
クロウとシエルが忠告する。
彼らは死んだ人への執着はわかる。しかしそれよりもキャロラインたちの方が大事なのだ。生きている人間に勝るものはない。それを彼らは知っているから。
しかしレイヴンは不思議そうだ。感情が希薄な彼に死んだ人への執着を理解するのは難しいのかもしれない。
「でもアーミンはあたしを助けてくれたわ。命じられたわけでもないのに彼女の判断で助けてくれた。彼女の本心は今でもあなたたちの仲間だと思うの」
リディアの言葉にレイヴンたちが黙り込んだ。
静かになった部屋で音がした。全員扉に注目する。
「誰か聞いていたのかもしれない……」
ミスティアが険しい顔をした。
「クロウ」
キャロラインは見に行くようにクロウに命令した。
クロウとレイヴンが扉を見に行っている間、リディアの調子が悪くなった。
どうやらリディアに憑いている霊が死んだときの記憶を思い出しているようだ。
「死ぬときの記憶を思い出すのはきついでしょうね……」
「並大抵のことではできないことよ」
ミスティアとクリスティナが頷きあう。
「キャロラインさま」
クロウが戻ってきていた。
「誰かいたの?」
「いいえ。でも話を聞かれたかもしれません……」
「そう……」
警戒しなければいけない、と思った。
「私もご命令を遂行できず……」
リディアを部屋に運んだあと、クロウとシエルが謝ってきた。
「いいの。レイヴンの方が早かった。それだけよ。お前たちのせいではない」
首を横に振った。
「ですが……」
「大丈夫」
キャロラインはクロウとシエルだけのせいではないと否定した。
やがてリディアが目を覚ました。
「リディア。気が付いたのね」
キャロラインはほっとした。
「リディア、大丈夫かい? 僕が分かる?」
「……ええ」
頷くリディアはどこにも異変はなく、大丈夫そうだった。
「ああ、急に動かない方がいい。頭を打ったんだから」
「もう、なんともないわ」
リディアはゆっくりと起き上がった。
「すみませんでした。リディアさん」
レイヴンにしては珍しく落ち込んでいるようだった。
「気にしないで。あたしが勝手にしゃしゃり出て行ったせいだから」
リディアは気にしていない様だった。
「私の致命的な失態です」
「そんな大げさな……」
リディアは戸惑っているようだった。
「どんな罰でもうけるつもりです」
レイヴンは真剣だった。
「あなたの仕事はエドガーを守ることなんだし、あたしのことで思いつめなくても」
「いいえ、主人の奥方となられるあなたに怪我をさせるなど、許されることではありません」
その言葉を聞いてリディアは眉を寄せた。
「ちょっとエドガー、レイヴンにそんなことを言ったの?」
エドガーを非難する。
「そりゃ僕の最も信頼する従者には言っておかないと」
「本気にしてるじゃないの!」
「本気だから当然だよ」
兄はそういうが、どこまで本気なのだろうか。
キスするしないなどで騒ぐリディアとエドガーを見ながらキャロラインはそう思った。
「お兄さま、いい加減にリディアにかまうのはやめて。それでリディア、怪我はない?」
「ああ。そうだったね。痛いところはないかい?」
キャロラインとエドガーに訊かれてリディアは首を横に振った。
「あら? リディア、髪に何かついているわ」
ミスティアが気付く。
「本当ね。キラキラしたものでビーズみたい」
クリスティナも気づいた。
リディアは触って髪に何かついていることに気づき、本当だ、と呟いた。
「それで怪我はどうなんだい?」
エドガーにとっては髪についているものよりもそちらの方が大事だ。
「擦り傷一つないみたい。アーミンが助けてくれたからだわ。彼女の方がひどい怪我をしていたのに」
「あれは姉ではありません。エドガーさまを殺そうとしていました」
エドガーへの思いゆえに身を投げた彼女を知っているからこその発言だ。
「シエル、クロウ。おまえたちはどう?」
「レイヴンと同じ意見です。アーミンの姿をした何かだと思います」
「アーミンならエドガーさまを襲うわけありません」
二人も同じ意見のようだった。
「彼女自身はユリシスに逆らえないと言っていた。奴は僕を苦しめて殺すというより殺されることを命じられて現れたような気がする」
「あなたに襲い掛かって逆に殺されるつもりだったってこと?」
「レイヴンが駆けつけることくらい予想できたはずだ」
「確かに。その後、クロウとシエルが現れることも予想してたはず。3人に1人でかなうはずないってわかってたはずよ」
キャロラインはクロウとシエルのことも付け加えた。
「そのアーミンって人はエドガーやキャロラインにとって大切な人だったのでしょう? 違っても姿かたちが同じならあなたたちは殺したことで傷ついたはずよ」
今まで黙っていたミスティアが言った。
そのとおりだ、とキャロラインは思った。
アーミンじゃなくても姿形が同じなら再び彼女を殺すことに傷ついただろう。
「反吐が出るわね……」
ミスティアの言葉に頷いた。
相変わらず嫌な手を使ってくる。
「どういう意図で襲い掛かったのであれ、姉ではありません。エドガーさま、同情すれば敵の思うつぼです」
「キャロラインさまも気を付けてください。かつての仲間であれキャロラインさまを傷つけるものは敵です」
クロウはきっぱりと言い切った。
シエルもその横で頷いている。
「分かってる。お兄さま、あれはアーミンだと思う?」
「そうだな……、アーミンにあるはずの焼き印がなかった。そうだね?」
「ええ。焼き印はなかったわ」
あれはそう簡単には消えないはずなのになぜかなかったのだ。
「ではどうして私をとめたのですか。あのときとどめを刺しておくべきでした」
「どうしてかなあ」
兄は他人事のように言った。
「どうしても、アーミンに思えたんだ。彼女しか知らないようなことも知っていたし、表情とかしゃべり方の癖とか、焼き印以外は何もかもアーミンだった」
「確かに焼き印はないけど……。アーミンだったわね……」
「でも、あの焼き印は消せるものでは……」
レイヴンが指摘する。
確かにそうだ。
キャロラインの背中にはいまだにプリンスにつけられた焼き印があった。おかげで背中が開いたドレスを着ることはできなかった。
「僕のは消えたよ」
その言葉にはっとする。
メロウとの取引で消してもらったのだ。星を付けるためにその焼き印を利用したのだ。
「僕の場合は特別な条件でそうなっただけだ。アーミンにもそんなこと起きる可能性はあるのかな。それに、彼女が生きていたというのは焼き印が消えるくらい不思議なことに思えるんだ」
エドガーはリディアに訊いた。
彼女はしばらく考え込んでいた。キャロラインはじっと答えを待った。
「アーミンはセルキーなのかもしれない」
その言葉にキャロラインはシエルやクロウと顔を見合わせた。
セルキー。ミスティアやクリスティナと話していた妖精だ。
「彼女がセルキー……」
ミスティアが呟く。
「なら髪についているのは血か……」
クリスティナが頷いた。
あれがも血なら彼女は人間ではなくなっているのかもしれない。
「海で死んだ人はセルキーになるというわ。必ずそうなるというわけじゃないと思うけど、ユリシスって人はフェアリードクターの知識があるみたいだから、わざわざ彼女をセルキーとして蘇らせたんじゃないかしら」
「そんなことが……。君にもできるのか?」
「あたしには、セルキーを操るような力はないけど。でもユリシスが力を持つフェアリードクターならセルキーたちに亡骸を探させて、仲間に引き入れることはできるんじゃないかと思う」
キャロラインはリディアの言ったことを考えた。
わざわざアーミンをセルキーにしたその目的は何だろうか。
「アザラシ妖精は人だった時と同じ姿になれる? 記憶もあるのか?」
「どうなの? リディア。私があったセルキーは人だった時の記憶はなかったけれど……」
クリスティナが訊いた。
「そういう例はあったと思うわ。海で死んだ漁師が家へ現れて、でももう彼はセルキーだから、家族と別れてまた海へ入っていくの。妖精界の住人となった人は人の世界のことを忘れていくというけど、アーミンはまだ」
「セルキーになったばかりだから、人の記憶があるってことか」
「人の記憶が強いということでもあるわね」
エドガーとキャロラインは難しい顔をした。
「リディア、君の想像通りだったとして、どうして彼女やほかのセルキーたちもユリシスに従わなければならないんだ?」
「アザラシの毛皮を隠されたからよ。セルキーは毛皮を脱いで人の姿になるの。でも毛皮がないと海に帰れなくて、それを隠し持つ人の言いなりになるしかないわ。毛皮が彼らの魂みたいなものだから」
「毛皮を隠して無理や従わせるなんてむごいことを……」
ミスティアが呟く。
「ええ。毛皮を隠してセルキーと結婚した人の話とかは聞くけどね、このやり方は……」
クリスティナも渋い顔をした。
「なら、やつが隠した毛皮さえ見つければ、アーミンが利用されることはなくなるのか」
「それは……」
リディアが言いよどんだ。
「分かってる。人の記憶があるのなら、プリンスの影響を引きずっているかもってことなんでしょう? 私もお兄さまもそのことは頭にあるわよ」
心配するなとばかりに微笑んだ。
「妖精として無理やり呼び戻されたのなら、姉はやはり死んだのです。ここにいるのはユリシスの手先、たとえその支配を解くことができたとしても、プリンスの道具として蘇っただけの存在です」
「アーミンと戦うことに戸惑いはありますが、キャロラインさまと敵対するのなら容赦はしません」
「妹と同じくです。そしてキャロラインさまを傷つけるのなら、妹でも容赦はしませんから」
レイヴン、シエル、クロウの言葉にキャロラインとエドガーは深く息をついた。
彼らはこういった感情に希薄なところがあった。
「たぶん、お前たちの言う通りなんだろう。だけど、レイヴンにとっては姉だよ」
そう言われてレイヴンは不思議そうに首を傾げた。
レイヴンは三人の中で一番感情が希薄で、姉弟とかの情よりもエドガーの敵なら殺すという意識が強いのだろう。
しかしキャロラインとエドガーはアーミンの心情を考えてしまう。そこがレイヴンたちとの違いだろう。
「姉ではありません」
「人ではないから? 失った人に夢でも会いたいと思ったことはないか? 幽霊でもなんでももう一度言葉を交わせるならばと願ったことは?」
「私はあるわ。夢でもいいからもう一度会いたいって……。でも私が会いたい人は幽霊になって出てこないから……」
「うん。手の届かない遠いところに行ってしまった人たちだから……。でももし奇跡が起きて会えるのなら、会ってあやまりたいわ」
ミスティアとクリスティナの双子が呟いた。
キャロラインの知らない過去に会いたい人がいたらしい。
「そうね……。私はアーミンに何でもいいから会いたかった……。会って苦しめてしまったことを謝りたかったわ。お兄さまもそうでしょう?」
「ああ。どんな形でも僕を恨んでいたとしても会いたかったんだよ」
「気持ちはわかりますが、今回は危険です……」
「会いたいって気持ちは確かに私にもあります。ですが、敵か味方か分からない存在に心を傾けてお命を危険にさらすのはよくないことです」
クロウとシエルが忠告する。
彼らは死んだ人への執着はわかる。しかしそれよりもキャロラインたちの方が大事なのだ。生きている人間に勝るものはない。それを彼らは知っているから。
しかしレイヴンは不思議そうだ。感情が希薄な彼に死んだ人への執着を理解するのは難しいのかもしれない。
「でもアーミンはあたしを助けてくれたわ。命じられたわけでもないのに彼女の判断で助けてくれた。彼女の本心は今でもあなたたちの仲間だと思うの」
リディアの言葉にレイヴンたちが黙り込んだ。
静かになった部屋で音がした。全員扉に注目する。
「誰か聞いていたのかもしれない……」
ミスティアが険しい顔をした。
「クロウ」
キャロラインは見に行くようにクロウに命令した。
クロウとレイヴンが扉を見に行っている間、リディアの調子が悪くなった。
どうやらリディアに憑いている霊が死んだときの記憶を思い出しているようだ。
「死ぬときの記憶を思い出すのはきついでしょうね……」
「並大抵のことではできないことよ」
ミスティアとクリスティナが頷きあう。
「キャロラインさま」
クロウが戻ってきていた。
「誰かいたの?」
「いいえ。でも話を聞かれたかもしれません……」
「そう……」
警戒しなければいけない、と思った。
