エドガーの妹です。たった一人の家族のことをとても大事に思ってます。
もう一つの物語 プロポーズはお手やわらかに
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「もうやめましょう。この人はプリンスの手先なんかじゃありません。僕たちと同じように被害者なんです」
「ポール、お前の話が本当だとしてもこいつもその妹も東洋人たちもプリンスの元にいたのは間違いない。洗脳されているかもしれないし、よほど下っ端ならともかく、奴の身近にいた人間が逃げ出して自由にしているなど考えられない。逃亡者は徹底的に追われて殺される」
その通りだ。兄と自分が殺されなかったのはプリンスにとって生きたままとらえなければいけなかったからだ。ただプリンスにとって優先順位が高かったのは兄で最悪の場合、兄を絶望させるためにキャロラインは殺される可能性もあったと思っている。
そのため兄妹は必死で逃げて兄を殺すわけにはいかなかったという一点を抜け道にしてここまで来たのだ。
「でもプリンスが手下に青騎士伯爵の名を得ることを許すでしょうか。この方は僕たちが認めようと認めまいと女王陛下によって正式に認められているんです。そういう存在はプリンスにとって好ましくないのではないですか?」
スレイドは黙り込んだ。
ただ一つ疑問なのはプリンスにとってなぜ青騎士伯爵が不都合なのかだ。何か因縁があるのだろうか。
「その辺を僕も知りたい。プリンスと青騎士伯爵に何か因縁でもあるのか?」
同じことを思ったエドガーがポールに訊いた。
「「……あ……」」
キャロラインは吐息のような声でしまったという感じの声を聞いた。ミスティアとクリスティナだった。
青騎士伯爵の血筋である彼女たちは何か知っているのだろうか。
「お話ししましょう」
訊こうとしたときに別の声が聞こえた。
初老の男性で団員たちが道を開けたことから結社のリーダー格なのだろう。
「ファーマン……」
そうスレイドが心配そうにつぶやくのが聞こえた。
彼がポールを養子にした人物なのだろう。
それにスレイドに任せてくれという言葉には親しみを感じた。ずいぶん親しい間柄だというのがわかる。
「ずいぶんと失礼をいたしました、伯爵。いえ、公爵とお呼びするべきでしょうか」
エドガーの正体に気づいたらしい。
「その名はもう僕のものじゃない」
そうあの日に兄もキャロラインもすべてを失ったのだから。
「では伯爵。プリンスと青騎士伯爵の間に何があるのか私たちも実はよく分かっておりません。ただ奴が青騎士伯爵の存在を恐れているかのように血筋を徹底的に抹殺したことを知るのみです」
「血筋を? しかしアシェンバート家の爵位継承者は三百年前から一人も英国に現れていない」
兄の言う通りジュリアス・アシェンバート以来、青騎士伯爵の名を名乗るものはいない。ミスティアとクリスティナは血を引いているが、次女と三女と言う事もあり、爵位継承の権利はないのだという。
「そうなのですが爵位を相続する権利はなくとも血を引く者はおりました」
ファーマンはそう言って肖像画を見上げる。
「青騎士伯爵家の人物を描いた唯一のものだと思われます。これを描いたのは伯爵の恋人で彼の子を産んだ女性……」
「なるほど恋人と子のために自分の絵を描くことを許したのか。ロマンチックな話だ。で、その女流画家の家に伯爵の血と絵が受け継がれてきたと」
「ええ。私とこのスレイドが弟子入りしていた師の家系でした」
「で、君たちの師匠はプリンスに殺されたわけか?」
ファーマンが死者を悼むように頭を垂れた。
それが答えだった。
そして朱い月ができたきっかけを語り始めた。
メンバーのほとんどがファーマンたちの師匠と親しくしていたものだという。画家だけでなく城など装飾などを手掛ける職人たちのネットワークで城の秘密を知ることも多かったために身を守るために発達した組織だという。
「ありそうな話よね……」
「身を守るためにね……」
ミスティアとクリスティナがこっそりと話をしているのが聞こえた。
そして朱い月と名乗ることにしたのは師の家系のミドルネームにフランドレンを受け継いだことかららしい。彼らがみんな殺されて組織はバラバラになったが、どうにか寄り集まったという。
「狙われる理由は?」
「なぜ狙われるのかわからないのか?」
兄妹が訪ねるが、彼らも知らないという。
プリンスへの恨みで結束し、本物の青騎士伯爵が現れるのを待ち望んでいたという。
そうすることで対抗できるのではないかと。
「なのに偽物で失望したわけかい?」
「数年前にオニールが殺されたとき、私たちは彼が滞在していたという公爵家について不審に思い、調べました。しかし火事があったことしかわからず、まさかその若君とお嬢さまがプリンスの元で生きていたと考えもしませんでした。伯爵、レディ・キャロライン。あなた方の家族を描いた彼が殺され、あなた方の家もプリンスにつぶされたのなら、その理由を私は知りたい。オニールは公爵家にいて何か知ってしまったのかもしれません」
なぜ狙われたのかキャロラインも知らないが、兄と自分を手に入れるためにやったのだろうという気はしている。
「僕にもよく分からない。しかし青騎士伯爵の血は関係ないと思う。家系図は子供のころから頭に叩き込まれるが、百年に一度現れるか現れないかの伯爵家とのつながりはなかったはずだ。キャロラインは?」
「私もよ。頭に入っている家系図を見てもそのつながりはないはず……」
キャロラインも兄の言葉に首を横に振る。
様々な家系図は頭に入っているが、青騎士伯爵家とのつながりは記憶にない。
「分からないことだらけね……」
プリンスが青騎士伯爵の血を根絶やしにしようとした理由もキャロラインがさらわれた理由も身の内にある力のこともわからない。
ただ一つだけ言えるのは青騎士伯爵の名を兄が継いだ瞬間、古い家系のすべてを背負う覚悟でいると言う事だ。
プリンスが青騎士伯爵を狙うというのなら好都合だ。どのみち対決は避けられないと思っていた。
「伯爵、レディ・キャロライン、これ以上お話しすることはありません。あなた方には今後迷惑をかけないと約束します。どうか私たちの結社については胸にしまっていただき、お引き取り願えないでしょうか」
「プリンスに対抗できるはずの血も神秘的な力も持たない伯爵はいらないって?」
そう言いながらも兄があきらめていないのをキャロラインは悟った。
欲しいものは手に入れるのが兄だ。
「おそらく僕はプリンスの組織の中で誰よりも奴のことを知っている。奴のやり方、考え方、陰湿な攻め方も知っている。だからこそ裏をかくこともできるはずだ。頭脳が欲しくないか?察するところ君たちの活動はプリンスに無視されるほどこれといった成果を上げていない。だからこそ生き残ってこられたのだろうけど、それでいいのか?」
スレイドがむっと顔をしかめるのが目に入る。図星か。
「貴方を仲間にすると言う事ですか?」
顔色を変えずファーマンが訊いた。
「違うよ、“朱い月”の諸君。僕のものにならないかと言っているんだ」
兄は追うように微笑みながら祭壇の上を歩いて青騎士伯爵のための玉座に腰を下ろした。
その行動にざわめいたが抗議の声は起きなかった。
「戦うためには僕は朱い弓と白い弓を手に入れたい。偽の伯爵に偽の朱い弓。まったく、君たちは妖精の射手を勝手に名乗っているだけなのだから、それで十分じゃないか。勝てそうな気がしてきただろ?」
「青騎士伯爵の名はたとえ偽物だったとしても使えるはずよ? 貴方たちにとっても悪いことじゃないと思うけど?」
兄に続くようにキャロラインも声を張り上げる。
返事はないが、手ごたえはありそうだ。
キャロラインは兄と頷きあった。
やがて兄はポールをの方向いた。
「ところでポール、君に用があったのはその白いムーンストーンを返してもらいたかったからだ」
その言葉にポールは慌てて指輪を外した、レイヴンがそれを受け取り、エドガーに渡す。
彼は宝剣をレイヴンに預け、キャロライン、ミスティア、クリスティナの方を向いた。
「キャロライン、ミスティア姉上、クリスティナ姉上、レイヴン、クロウ、シエル。後は頼んだよ」
「はい」
レイヴンが頷く。
「連れて帰ってきてよね!」
誰をというのが抜けていたが伝わった。
彼は頷く。
「さて諸君、僕は白い弓を探しに行ってくるからゆっくり返事を考えておいてくれ」
そう言ってマリーゴールドたちと共に消えいていった。
「ポール、お前の話が本当だとしてもこいつもその妹も東洋人たちもプリンスの元にいたのは間違いない。洗脳されているかもしれないし、よほど下っ端ならともかく、奴の身近にいた人間が逃げ出して自由にしているなど考えられない。逃亡者は徹底的に追われて殺される」
その通りだ。兄と自分が殺されなかったのはプリンスにとって生きたままとらえなければいけなかったからだ。ただプリンスにとって優先順位が高かったのは兄で最悪の場合、兄を絶望させるためにキャロラインは殺される可能性もあったと思っている。
そのため兄妹は必死で逃げて兄を殺すわけにはいかなかったという一点を抜け道にしてここまで来たのだ。
「でもプリンスが手下に青騎士伯爵の名を得ることを許すでしょうか。この方は僕たちが認めようと認めまいと女王陛下によって正式に認められているんです。そういう存在はプリンスにとって好ましくないのではないですか?」
スレイドは黙り込んだ。
ただ一つ疑問なのはプリンスにとってなぜ青騎士伯爵が不都合なのかだ。何か因縁があるのだろうか。
「その辺を僕も知りたい。プリンスと青騎士伯爵に何か因縁でもあるのか?」
同じことを思ったエドガーがポールに訊いた。
「「……あ……」」
キャロラインは吐息のような声でしまったという感じの声を聞いた。ミスティアとクリスティナだった。
青騎士伯爵の血筋である彼女たちは何か知っているのだろうか。
「お話ししましょう」
訊こうとしたときに別の声が聞こえた。
初老の男性で団員たちが道を開けたことから結社のリーダー格なのだろう。
「ファーマン……」
そうスレイドが心配そうにつぶやくのが聞こえた。
彼がポールを養子にした人物なのだろう。
それにスレイドに任せてくれという言葉には親しみを感じた。ずいぶん親しい間柄だというのがわかる。
「ずいぶんと失礼をいたしました、伯爵。いえ、公爵とお呼びするべきでしょうか」
エドガーの正体に気づいたらしい。
「その名はもう僕のものじゃない」
そうあの日に兄もキャロラインもすべてを失ったのだから。
「では伯爵。プリンスと青騎士伯爵の間に何があるのか私たちも実はよく分かっておりません。ただ奴が青騎士伯爵の存在を恐れているかのように血筋を徹底的に抹殺したことを知るのみです」
「血筋を? しかしアシェンバート家の爵位継承者は三百年前から一人も英国に現れていない」
兄の言う通りジュリアス・アシェンバート以来、青騎士伯爵の名を名乗るものはいない。ミスティアとクリスティナは血を引いているが、次女と三女と言う事もあり、爵位継承の権利はないのだという。
「そうなのですが爵位を相続する権利はなくとも血を引く者はおりました」
ファーマンはそう言って肖像画を見上げる。
「青騎士伯爵家の人物を描いた唯一のものだと思われます。これを描いたのは伯爵の恋人で彼の子を産んだ女性……」
「なるほど恋人と子のために自分の絵を描くことを許したのか。ロマンチックな話だ。で、その女流画家の家に伯爵の血と絵が受け継がれてきたと」
「ええ。私とこのスレイドが弟子入りしていた師の家系でした」
「で、君たちの師匠はプリンスに殺されたわけか?」
ファーマンが死者を悼むように頭を垂れた。
それが答えだった。
そして朱い月ができたきっかけを語り始めた。
メンバーのほとんどがファーマンたちの師匠と親しくしていたものだという。画家だけでなく城など装飾などを手掛ける職人たちのネットワークで城の秘密を知ることも多かったために身を守るために発達した組織だという。
「ありそうな話よね……」
「身を守るためにね……」
ミスティアとクリスティナがこっそりと話をしているのが聞こえた。
そして朱い月と名乗ることにしたのは師の家系のミドルネームにフランドレンを受け継いだことかららしい。彼らがみんな殺されて組織はバラバラになったが、どうにか寄り集まったという。
「狙われる理由は?」
「なぜ狙われるのかわからないのか?」
兄妹が訪ねるが、彼らも知らないという。
プリンスへの恨みで結束し、本物の青騎士伯爵が現れるのを待ち望んでいたという。
そうすることで対抗できるのではないかと。
「なのに偽物で失望したわけかい?」
「数年前にオニールが殺されたとき、私たちは彼が滞在していたという公爵家について不審に思い、調べました。しかし火事があったことしかわからず、まさかその若君とお嬢さまがプリンスの元で生きていたと考えもしませんでした。伯爵、レディ・キャロライン。あなた方の家族を描いた彼が殺され、あなた方の家もプリンスにつぶされたのなら、その理由を私は知りたい。オニールは公爵家にいて何か知ってしまったのかもしれません」
なぜ狙われたのかキャロラインも知らないが、兄と自分を手に入れるためにやったのだろうという気はしている。
「僕にもよく分からない。しかし青騎士伯爵の血は関係ないと思う。家系図は子供のころから頭に叩き込まれるが、百年に一度現れるか現れないかの伯爵家とのつながりはなかったはずだ。キャロラインは?」
「私もよ。頭に入っている家系図を見てもそのつながりはないはず……」
キャロラインも兄の言葉に首を横に振る。
様々な家系図は頭に入っているが、青騎士伯爵家とのつながりは記憶にない。
「分からないことだらけね……」
プリンスが青騎士伯爵の血を根絶やしにしようとした理由もキャロラインがさらわれた理由も身の内にある力のこともわからない。
ただ一つだけ言えるのは青騎士伯爵の名を兄が継いだ瞬間、古い家系のすべてを背負う覚悟でいると言う事だ。
プリンスが青騎士伯爵を狙うというのなら好都合だ。どのみち対決は避けられないと思っていた。
「伯爵、レディ・キャロライン、これ以上お話しすることはありません。あなた方には今後迷惑をかけないと約束します。どうか私たちの結社については胸にしまっていただき、お引き取り願えないでしょうか」
「プリンスに対抗できるはずの血も神秘的な力も持たない伯爵はいらないって?」
そう言いながらも兄があきらめていないのをキャロラインは悟った。
欲しいものは手に入れるのが兄だ。
「おそらく僕はプリンスの組織の中で誰よりも奴のことを知っている。奴のやり方、考え方、陰湿な攻め方も知っている。だからこそ裏をかくこともできるはずだ。頭脳が欲しくないか?察するところ君たちの活動はプリンスに無視されるほどこれといった成果を上げていない。だからこそ生き残ってこられたのだろうけど、それでいいのか?」
スレイドがむっと顔をしかめるのが目に入る。図星か。
「貴方を仲間にすると言う事ですか?」
顔色を変えずファーマンが訊いた。
「違うよ、“朱い月”の諸君。僕のものにならないかと言っているんだ」
兄は追うように微笑みながら祭壇の上を歩いて青騎士伯爵のための玉座に腰を下ろした。
その行動にざわめいたが抗議の声は起きなかった。
「戦うためには僕は朱い弓と白い弓を手に入れたい。偽の伯爵に偽の朱い弓。まったく、君たちは妖精の射手を勝手に名乗っているだけなのだから、それで十分じゃないか。勝てそうな気がしてきただろ?」
「青騎士伯爵の名はたとえ偽物だったとしても使えるはずよ? 貴方たちにとっても悪いことじゃないと思うけど?」
兄に続くようにキャロラインも声を張り上げる。
返事はないが、手ごたえはありそうだ。
キャロラインは兄と頷きあった。
やがて兄はポールをの方向いた。
「ところでポール、君に用があったのはその白いムーンストーンを返してもらいたかったからだ」
その言葉にポールは慌てて指輪を外した、レイヴンがそれを受け取り、エドガーに渡す。
彼は宝剣をレイヴンに預け、キャロライン、ミスティア、クリスティナの方を向いた。
「キャロライン、ミスティア姉上、クリスティナ姉上、レイヴン、クロウ、シエル。後は頼んだよ」
「はい」
レイヴンが頷く。
「連れて帰ってきてよね!」
誰をというのが抜けていたが伝わった。
彼は頷く。
「さて諸君、僕は白い弓を探しに行ってくるからゆっくり返事を考えておいてくれ」
そう言ってマリーゴールドたちと共に消えいていった。