エドガーの妹です。たった一人の家族のことをとても大事に思ってます。
もう一つの物語 プロポーズはお手やわらかに
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5.不安
キャロラインの不安は当たった。昼食の時に宝剣を見せてほしいとポールが言ってきたのだ。
ちょっと不審に思っただろうに表に出さずに快く見せたようだ。
「それでエドガー様、宝剣をお見せになったんですか?」
レイヴンが訊く。
「見せたよ。しきりに感心していたけどそれだけだった」
エドガーはそう言った。
「単なる偶然か」
兄はそういうが、キャロラインはそう思わなかった。
「お兄さま、甘いわよ。スパイだったらどうするのよ?」
「そうよ、宝剣を見たがるなんて怪しいわよ」
ミスティアがキャロラインに同意する。
「キャロラインさまのおっしゃる通りです。この屋敷に宝剣があるということもそれがどんな形をしているのかも貴重な情報になります」
「それにあの脅迫状と関係があるのかもしれないですし……。危険です」
レイヴンとクロウが指摘する。
「その通りだ。でもポールはスパイができるような性格に思えないんだ。宝剣を見た反応もまるきり天然に見えた」
「だからこそ選ばれることもあるのよ」
ぴしゃりとミスティアは言った。
彼女は昔の友人に心を許しすぎてエドガーの身に何か起きるのではないかと心配しているのだ。
「分かっているよ。ミスティア姉上、クリスティナ姉上、キャロライン、レイヴン、クロウの心配ももっともだ。芸術家が秘密めいた結社に属するのは流行と言ってもいいくらいだ。慎重に判断するべきだろうね」
冷静さを失っていないようで少しは安心だ。
だけど昔の自分を知っているポールを信頼しすぎないかというのが少し心配だ。
そこへレイヴンが進み出てポールの調査報告書を読み上げる。
彼はカナダ生まれで両親は幼いころに離婚。母と暮らしていたが、亡くなったときに父のアンドリュー・ファーマンに引き取られたという。父親は画家を引退し、ドーバーに在住しており、ロンドンで一人暮らしをしているという。
(ファーマン? 父親がファーマンだっていうの?)
思わず兄と顔を見合わせる。二人とも思っていたものと違ったからだ。彼の父親はオニールだったはずだ。
兄もそう思ったのだろう。オニールという画家について調べるように命じた。
「それで義賊団の方は?」
「エドガーさまがおっしゃったように古物商の方をクロウと共にあたりましたところ、ヴァイオリンを売りに来たそれらしき男がいました」
「指がなくちゃヴァイオリンも弾けないものねえ……」
兄がヴァイオリンを売りに来ると踏んで古物商を当たろうとしたのは正しい。
「ヴァイオリンは確認した?」
「はい。私がもみ合った時につけた傷がありました。ただ売りに来た人物は太った黒ひげの男だということですので、頼まれて売りに来たとかそんなところでしょう」
レイヴンが説明する。
「その男の身元は?」
クリスティナが訊く。
「分かりません。身なりが良かったことと赤っぽい色の石のついた指輪をしていたこと。店主が覚えているのはそれくらいです」
クロウが説明する。
「……赤い石の指輪」
「古物商ですので宝石にはある程度詳しいのでしょうが、赤いムーンストーンだと気になったようです」
レイヴンが補足する。
「朱い月…。まさかねえ……」
“朱い月”と関係がないかと思ってしまう。
「エドガーさま、キャロラインさま。ムーンストーンに赤い色もあるのですか?」
「あるよ。赤も、白も、青も」
エドガーはそう言いつつも何か考え込んでいるようだった。
「でも赤いムーンストーンを付けた人物をどこかで見た気がするのよね……」
「キャロラインもかい? 僕もだよ。だけど思い出せないんだ」
二人でしばらく悩む。
「悩んでいても仕方ないわ。私、そろそろ部屋に戻るわね」
「ああ。いろいろ考えることが多いけど部屋でゆっくりするといい」
「お兄さまもね。あと身の回りに気を付けること」
そう忠告をして部屋を出た。
ミスティアとクリスティナも後をついてきた
キャロラインの不安は当たった。昼食の時に宝剣を見せてほしいとポールが言ってきたのだ。
ちょっと不審に思っただろうに表に出さずに快く見せたようだ。
「それでエドガー様、宝剣をお見せになったんですか?」
レイヴンが訊く。
「見せたよ。しきりに感心していたけどそれだけだった」
エドガーはそう言った。
「単なる偶然か」
兄はそういうが、キャロラインはそう思わなかった。
「お兄さま、甘いわよ。スパイだったらどうするのよ?」
「そうよ、宝剣を見たがるなんて怪しいわよ」
ミスティアがキャロラインに同意する。
「キャロラインさまのおっしゃる通りです。この屋敷に宝剣があるということもそれがどんな形をしているのかも貴重な情報になります」
「それにあの脅迫状と関係があるのかもしれないですし……。危険です」
レイヴンとクロウが指摘する。
「その通りだ。でもポールはスパイができるような性格に思えないんだ。宝剣を見た反応もまるきり天然に見えた」
「だからこそ選ばれることもあるのよ」
ぴしゃりとミスティアは言った。
彼女は昔の友人に心を許しすぎてエドガーの身に何か起きるのではないかと心配しているのだ。
「分かっているよ。ミスティア姉上、クリスティナ姉上、キャロライン、レイヴン、クロウの心配ももっともだ。芸術家が秘密めいた結社に属するのは流行と言ってもいいくらいだ。慎重に判断するべきだろうね」
冷静さを失っていないようで少しは安心だ。
だけど昔の自分を知っているポールを信頼しすぎないかというのが少し心配だ。
そこへレイヴンが進み出てポールの調査報告書を読み上げる。
彼はカナダ生まれで両親は幼いころに離婚。母と暮らしていたが、亡くなったときに父のアンドリュー・ファーマンに引き取られたという。父親は画家を引退し、ドーバーに在住しており、ロンドンで一人暮らしをしているという。
(ファーマン? 父親がファーマンだっていうの?)
思わず兄と顔を見合わせる。二人とも思っていたものと違ったからだ。彼の父親はオニールだったはずだ。
兄もそう思ったのだろう。オニールという画家について調べるように命じた。
「それで義賊団の方は?」
「エドガーさまがおっしゃったように古物商の方をクロウと共にあたりましたところ、ヴァイオリンを売りに来たそれらしき男がいました」
「指がなくちゃヴァイオリンも弾けないものねえ……」
兄がヴァイオリンを売りに来ると踏んで古物商を当たろうとしたのは正しい。
「ヴァイオリンは確認した?」
「はい。私がもみ合った時につけた傷がありました。ただ売りに来た人物は太った黒ひげの男だということですので、頼まれて売りに来たとかそんなところでしょう」
レイヴンが説明する。
「その男の身元は?」
クリスティナが訊く。
「分かりません。身なりが良かったことと赤っぽい色の石のついた指輪をしていたこと。店主が覚えているのはそれくらいです」
クロウが説明する。
「……赤い石の指輪」
「古物商ですので宝石にはある程度詳しいのでしょうが、赤いムーンストーンだと気になったようです」
レイヴンが補足する。
「朱い月…。まさかねえ……」
“朱い月”と関係がないかと思ってしまう。
「エドガーさま、キャロラインさま。ムーンストーンに赤い色もあるのですか?」
「あるよ。赤も、白も、青も」
エドガーはそう言いつつも何か考え込んでいるようだった。
「でも赤いムーンストーンを付けた人物をどこかで見た気がするのよね……」
「キャロラインもかい? 僕もだよ。だけど思い出せないんだ」
二人でしばらく悩む。
「悩んでいても仕方ないわ。私、そろそろ部屋に戻るわね」
「ああ。いろいろ考えることが多いけど部屋でゆっくりするといい」
「お兄さまもね。あと身の回りに気を付けること」
そう忠告をして部屋を出た。
ミスティアとクリスティナも後をついてきた