エドガーの妹です。たった一人の家族のことをとても大事に思ってます。
もう一つの物語 プロポーズはお手やわらかに
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リディアが出勤してしばらくしてキャロラインは客間へと向かっていた。
兄がそこへリディアと共にいてポールをそこに呼び出すつもりだからだ。
「おはよう、リディア。お兄さまが迷惑をかけているみたいね。ごめんなさいね」
「キャロラインが謝ることはないわ。それにこの人がこうなのは今に始まったことじゃないし」
「ひどいな。二人とも」
エドガーは少し傷ついた声を出した。
「本気で傷ついていないくせに」
兄を睨むとそこへクロウがやってきた。
「ファーマン氏がいらっしゃいます」
「二人ともポールのお話を聞く方が先だわ」
ミスティアがたしなめる。
「うん、わかったわ」
頷いて兄を睨むのをやめた。
そこへ憔悴したポールがレイヴンに案内されてやってきた。
「ごめんなさい、ポールさん。昨日はあたしを助けてくれたのに面倒なことになってしまったみたいで」
リディアが謝る。
(へえ、ポールに助けられたのか……)
兄の口説きから助けようとするなんてやると思った。
「いえ、あなたに何事もなくてよかった。……でもぼくには何が何だか分かりません。妖精の仕業だとか伯爵はおっしゃるし」
彼は少し混乱しているようだった。
エドガーに勧められ椅子に座る。
彼の中指に白いムーンストーンの指輪がはまっていた。どうやら事故ではまってしまったと兄から聞いている。
「ムーンストーンだね」
エドガーの言う通り大粒の月長石だった。半透明の内側にある乳白色が三日月みたいに見える。
ミスティアとクリスティナがひゅっと息をのむのを感じた。
「グウェンドレンの指輪……」
その呟きが聞こえたのは隣に座っていたキャロラインだけだっただろう。気になってミスティアに訊こうと思ったらその前にリディアがマリーゴールドに質問をしていた。
「マリーゴールド、このムーンストーンが本物の月みたいに満ち欠けするっていうの?」
「はい。内側の光の幅が変わります。満月の夜には大きく広がり、新月の夜にはかすかに広く」
そういうマリーゴールドの背中には羽があった。羽があるなんて、とちょっと不思議に彼女をキャロラインは見つめる。
そしてその間にそれが本物の月だとマリーゴールドは訂正した。
「……どうしても求婚したいってわけね……。でもそれは私が許さないわよ……」
「っていうかもともとは伯爵家 のものだし。正しく使われなかったら指輪が泣くわよ……」
ぼそりとミスティアとクリスティナが呟く。
またしてもキャロラインにしか聞こえないくらいの声だったのか、兄は能天気に「毎日見ても飽きないだろうね、幸運だ」とポールに向かっていった。
(能天気なんだから……)
キャロラインは内心でぼやく。
ポールにとってはたまったものじゃないだろう。そんなわけないと否定をした。
「で、どうして外れないんだ?」
「ケルピーが無理やりはめたせいね。リングの部分が歪んで指にくい込んでるの」
リディアが説明してくれる。
「ケルピー?」
「ケルピーって?」
馬になったことと関係があるのだろうか。ケルピーといういきなり出てきた人名に兄妹は説明を求める。
「えっと。ケインはケルピーなの」
ふうん、へえ、と妖精に詳しくない兄妹は納得するだけだったが、知識はあるミスティアとクリスティナはぎょっとする。
「ケルピーってあのアンシーリーコートの?」
「あなた、そんなものと知り合いなの?」
リディアは頷いた。
指輪が外れない当の本人のポールはケルピーを知っていたらしい。
「ケ、ケルピーなんですか! 人を喰うっていう、あの……?」
「人喰い馬なのか」
「家畜なんかも食べるけど、肝臓だけは岸辺に残していくのよ」
「損な嗜好だな。フォアグラなんか絶品なのに」
「もったいないわよね~」
兄妹はしみじみとケルピーの嗜好を損だと言った。
「それより僕はどうしたら……」
ポールはそれてしまいそうな話を必死に元に戻す。
「とにかく指輪を外しましょう」
リディアが提案する。
「いろいろやってみたけど無理なんです。石鹼や油を使っても」
「リングを切るしかないんじゃないか? 慎重にやれば君の大事な手を傷つけずにすむだろう」
「それはだめです! 女王さまの指輪に傷をつけたりしたらわたし、もう帰れません」
マリーゴールドが泣き出す。
「それはかわいそうだ。もっと別の方法を考えよう」
「調子いいんだから……」
あっさりマリーゴールドの方を持ったエドガーに呟く。
でも切るのはよくないとキャロラインも思う。ミスティアによると伯爵家のものらしいし、なんだかもったいない気がするのだ。
「別の方法ねえ……」
何かないのかとミスティアがエドガーを見る。
エドガーは一週間の絶食を提案する。
死んでしまうとポールは絶望するが、案外骨と皮だけになっても生きているものだとあっさりとエドガーは言った。
(まあそうよね。アメリカ時代は食べ物があまりなかったから仲間で分け合ったっけ……。人間、案外食べなくても生きられることを知ったのもこの時だったな……)
しみじみと回想していると窓辺にリディアの猫であるニコが現れた。
「また面倒なことになった気がするわ」
ミスティアが呟いた。
その言葉通り彼の向こう側に人影が見えて面倒ごとの予感がした。
兄がそこへリディアと共にいてポールをそこに呼び出すつもりだからだ。
「おはよう、リディア。お兄さまが迷惑をかけているみたいね。ごめんなさいね」
「キャロラインが謝ることはないわ。それにこの人がこうなのは今に始まったことじゃないし」
「ひどいな。二人とも」
エドガーは少し傷ついた声を出した。
「本気で傷ついていないくせに」
兄を睨むとそこへクロウがやってきた。
「ファーマン氏がいらっしゃいます」
「二人ともポールのお話を聞く方が先だわ」
ミスティアがたしなめる。
「うん、わかったわ」
頷いて兄を睨むのをやめた。
そこへ憔悴したポールがレイヴンに案内されてやってきた。
「ごめんなさい、ポールさん。昨日はあたしを助けてくれたのに面倒なことになってしまったみたいで」
リディアが謝る。
(へえ、ポールに助けられたのか……)
兄の口説きから助けようとするなんてやると思った。
「いえ、あなたに何事もなくてよかった。……でもぼくには何が何だか分かりません。妖精の仕業だとか伯爵はおっしゃるし」
彼は少し混乱しているようだった。
エドガーに勧められ椅子に座る。
彼の中指に白いムーンストーンの指輪がはまっていた。どうやら事故ではまってしまったと兄から聞いている。
「ムーンストーンだね」
エドガーの言う通り大粒の月長石だった。半透明の内側にある乳白色が三日月みたいに見える。
ミスティアとクリスティナがひゅっと息をのむのを感じた。
「グウェンドレンの指輪……」
その呟きが聞こえたのは隣に座っていたキャロラインだけだっただろう。気になってミスティアに訊こうと思ったらその前にリディアがマリーゴールドに質問をしていた。
「マリーゴールド、このムーンストーンが本物の月みたいに満ち欠けするっていうの?」
「はい。内側の光の幅が変わります。満月の夜には大きく広がり、新月の夜にはかすかに広く」
そういうマリーゴールドの背中には羽があった。羽があるなんて、とちょっと不思議に彼女をキャロラインは見つめる。
そしてその間にそれが本物の月だとマリーゴールドは訂正した。
「……どうしても求婚したいってわけね……。でもそれは私が許さないわよ……」
「っていうかもともとは
ぼそりとミスティアとクリスティナが呟く。
またしてもキャロラインにしか聞こえないくらいの声だったのか、兄は能天気に「毎日見ても飽きないだろうね、幸運だ」とポールに向かっていった。
(能天気なんだから……)
キャロラインは内心でぼやく。
ポールにとってはたまったものじゃないだろう。そんなわけないと否定をした。
「で、どうして外れないんだ?」
「ケルピーが無理やりはめたせいね。リングの部分が歪んで指にくい込んでるの」
リディアが説明してくれる。
「ケルピー?」
「ケルピーって?」
馬になったことと関係があるのだろうか。ケルピーといういきなり出てきた人名に兄妹は説明を求める。
「えっと。ケインはケルピーなの」
ふうん、へえ、と妖精に詳しくない兄妹は納得するだけだったが、知識はあるミスティアとクリスティナはぎょっとする。
「ケルピーってあのアンシーリーコートの?」
「あなた、そんなものと知り合いなの?」
リディアは頷いた。
指輪が外れない当の本人のポールはケルピーを知っていたらしい。
「ケ、ケルピーなんですか! 人を喰うっていう、あの……?」
「人喰い馬なのか」
「家畜なんかも食べるけど、肝臓だけは岸辺に残していくのよ」
「損な嗜好だな。フォアグラなんか絶品なのに」
「もったいないわよね~」
兄妹はしみじみとケルピーの嗜好を損だと言った。
「それより僕はどうしたら……」
ポールはそれてしまいそうな話を必死に元に戻す。
「とにかく指輪を外しましょう」
リディアが提案する。
「いろいろやってみたけど無理なんです。石鹼や油を使っても」
「リングを切るしかないんじゃないか? 慎重にやれば君の大事な手を傷つけずにすむだろう」
「それはだめです! 女王さまの指輪に傷をつけたりしたらわたし、もう帰れません」
マリーゴールドが泣き出す。
「それはかわいそうだ。もっと別の方法を考えよう」
「調子いいんだから……」
あっさりマリーゴールドの方を持ったエドガーに呟く。
でも切るのはよくないとキャロラインも思う。ミスティアによると伯爵家のものらしいし、なんだかもったいない気がするのだ。
「別の方法ねえ……」
何かないのかとミスティアがエドガーを見る。
エドガーは一週間の絶食を提案する。
死んでしまうとポールは絶望するが、案外骨と皮だけになっても生きているものだとあっさりとエドガーは言った。
(まあそうよね。アメリカ時代は食べ物があまりなかったから仲間で分け合ったっけ……。人間、案外食べなくても生きられることを知ったのもこの時だったな……)
しみじみと回想していると窓辺にリディアの猫であるニコが現れた。
「また面倒なことになった気がするわ」
ミスティアが呟いた。
その言葉通り彼の向こう側に人影が見えて面倒ごとの予感がした。