エドガーの妹です。たった一人の家族のことをとても大事に思ってます。
もう一つの物語 プロポーズはお手やわらかに
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お客であるミス・マリーゴールドは5歳ぐらいの外見をした小さな女の子だった。
彼女は本当に妖精なのだろうか。自分の目にも見えているのにとキャロラインは怪訝な顔で思う。
そう思ったのはキャロラインだけじゃなかったらしい。
「本当に妖精?」
とリディアにささやくのが聞こえた。
「これ以上大人の姿にはなれないそうよ」
「残念だ。もう十年成長してくれないと、いくら僕でも口説くのをためらう」
「……この馬鹿兄……」
聞こえないように小さく兄を罵る。
口説かないと言いつつも赤ん坊にだっていい顔はしそうと思ってしまう。
思った通り、けなげな挨拶をするマリーゴールドを淑女扱いをして手を取って椅子に腰かけさせた。
「伯爵さま、お約束の品を主人からことづかってまいりました。以前に主人があなたさまに結婚を申し込んだ際、所望されたものです」
「……結婚?」
「……何のこと?」
のみこめないエドガーといきなり結婚とか出てきて混乱するキャロラインの兄妹は事情を知ってそうなリディアを見た。
「だからあなたじゃなくて青騎士伯爵のご先祖が妖精に結婚を申し込まれたのよ」
「ああ、さっきのトムキンスの話か。……本当のことだったんだ。てことはミス・マリーゴールド、君のご主人は妖精女王?」
「はい。月野原の女王でございます」
「美人?」
「それはもう……」
「乗り気になってどうするのよ……」
ミスティアが呟く。
「妖精との結婚にはろくなことないっていうのに……」
クリスティナも呟く。
「お兄さまったら……」
ちょっと乗り気なエドガーに三人は呆れた。
「でも女王もその姿? ちょっと欲情できないかなあ」
「ご心配なく。その必要はございませんので」
「えっ、君たちそういうのはナシ? それじゃあ何の楽しみも……」
「そういう問題じゃないの!」
エドガーの腕をつねるリディアを見てキャロラインはスカッとした。リディアがぴしゃりと言ってくれなかったら馬鹿なことを言う兄に怒鳴っていたのはキャロラインかもしれない。
「マリーゴールド、女王との約束をしたとき伯爵は“月”を所望したはずよ。あなた、月を持ってきたっていうの?」
「はい。…でもそれが……、盗まれてしまったんです!」
わっと彼女は泣きだした。
その姿を見てちょっとかわいそうにキャロラインはなってしまった。
「盗まれたって? ひどい奴がいるものだな。お嬢さん、いきさつを聞かせてくれないか。力になれるかも……」
「エドガー、あなたは黙って」
ぴしゃりとリディアは言った。
「さすが頼りになるフェアリードクター……!」
今にも口笛を吹きそうな感じでミスティアが呟く。
「女王の元へお帰りなさい。盗まれたものは月であるはずがないわ。夜空に月はちゃんとかかっているもの。だから伯爵は女王と結婚しないのよ」
「いいえ、本当に月を見つけたんです。空の月の方が偽物でないと言いきれますか? だって女王さまが見つけた月はちゃんと満ち欠けするものですもの」
「それは珍しい。見てみたいな」
兄は能天気だ。その一方でちょっと難しい顔をしているミスティアがキャロラインは気になった。満ち欠けする月と聞いたときからだ。
「ええぜひお見せしたいですわ。きっと気に入って、主人との結婚を承諾してくださると信じていました。なのに…、いつの間にかこんなものにすり替えられてしまっていて…。たった今、伯爵さまとの面会を待ちながら確かめようと取り出してみたら」
「ただの小石に見えるけど……」
彼女が取り出したのは小さな小石だった。
「はい。きっとあいつが盗んだんです。あのひどい妖精が……」
キャロラインの言葉に頷いたマリーゴールドは犯人を口にした。
「妖精に盗まれたの? だったらあたしたち人間が取り戻すのは無理ね」
「まあ、そうでしょうね……。フェアリードクターは妖精と人間の仲立ちが仕事。妖精同士のトラブルは解決できないものね……」
クリスティナが言った。
「へえ……」
一応知っていたが、改めて説明されると感心してしまう。
当のマリーゴールドは声をかけられて見せてしまったことから盗まれたと説明してくれる。またこのまま帰るわけにはいかないと。
そこでエドガーはマリーゴールドに向かって提案した。
「すぐには帰りにくいだろうから、しばらくここにいたらどうだい? ねえ、リディア、妖精の客人なんて素敵じゃないか。女王には“月”を取り返そうと手を尽くしたと言い訳もできるし」
「そうねえ……。いいんじゃない? このままというのもちょっとって感じだし……」
キャロラインは兄に賛成する。
リディアも悪い気はしていないようだ。
その一方でミスティアは何か考え込んでいた。
「自然が奇跡の力で生み出す珍しいものねえ……」
ミスティアは先程マリーゴールドがこぼしたことが気になっているようだ。
「ティア? 何か気になっているの?」
「いやなんかマリーゴールドが持ってきた“月”にちょっと嫌な予感がして……」
「嫌な予感?」
「伯爵家の“月”に関係している気がする……」
「“月”かあ……。まさかねえ……」
クリスティナも少し嫌な予感がしてきたようだ。
「だとしたらちょっとまずいわねえ……」
「“月”……」
伯爵家には“月”に関する何かがあるのだろう。あとで訊けば教えてくれるかしらと思った時だった。
「旦那さま、さっきの先生の忘れ物はどういたしましょう?」
レイヴンが切った四本の指のことだ。
「きっと取りには来ないだろうからね。野良犬の餌にでもするかい?」
「悪趣味よ、お兄さま。それにそんなものを喰わせたら犬が可愛そうです!」
「そうかい? まあ冗談だけど」
そう言って二人は思わず笑ってしまう。
エドガーだけじゃなくてキャロラインもちょっとおかしいんだわとリディアに思われているのにも気づかず二人は笑っていた。
彼女は本当に妖精なのだろうか。自分の目にも見えているのにとキャロラインは怪訝な顔で思う。
そう思ったのはキャロラインだけじゃなかったらしい。
「本当に妖精?」
とリディアにささやくのが聞こえた。
「これ以上大人の姿にはなれないそうよ」
「残念だ。もう十年成長してくれないと、いくら僕でも口説くのをためらう」
「……この馬鹿兄……」
聞こえないように小さく兄を罵る。
口説かないと言いつつも赤ん坊にだっていい顔はしそうと思ってしまう。
思った通り、けなげな挨拶をするマリーゴールドを淑女扱いをして手を取って椅子に腰かけさせた。
「伯爵さま、お約束の品を主人からことづかってまいりました。以前に主人があなたさまに結婚を申し込んだ際、所望されたものです」
「……結婚?」
「……何のこと?」
のみこめないエドガーといきなり結婚とか出てきて混乱するキャロラインの兄妹は事情を知ってそうなリディアを見た。
「だからあなたじゃなくて青騎士伯爵のご先祖が妖精に結婚を申し込まれたのよ」
「ああ、さっきのトムキンスの話か。……本当のことだったんだ。てことはミス・マリーゴールド、君のご主人は妖精女王?」
「はい。月野原の女王でございます」
「美人?」
「それはもう……」
「乗り気になってどうするのよ……」
ミスティアが呟く。
「妖精との結婚にはろくなことないっていうのに……」
クリスティナも呟く。
「お兄さまったら……」
ちょっと乗り気なエドガーに三人は呆れた。
「でも女王もその姿? ちょっと欲情できないかなあ」
「ご心配なく。その必要はございませんので」
「えっ、君たちそういうのはナシ? それじゃあ何の楽しみも……」
「そういう問題じゃないの!」
エドガーの腕をつねるリディアを見てキャロラインはスカッとした。リディアがぴしゃりと言ってくれなかったら馬鹿なことを言う兄に怒鳴っていたのはキャロラインかもしれない。
「マリーゴールド、女王との約束をしたとき伯爵は“月”を所望したはずよ。あなた、月を持ってきたっていうの?」
「はい。…でもそれが……、盗まれてしまったんです!」
わっと彼女は泣きだした。
その姿を見てちょっとかわいそうにキャロラインはなってしまった。
「盗まれたって? ひどい奴がいるものだな。お嬢さん、いきさつを聞かせてくれないか。力になれるかも……」
「エドガー、あなたは黙って」
ぴしゃりとリディアは言った。
「さすが頼りになるフェアリードクター……!」
今にも口笛を吹きそうな感じでミスティアが呟く。
「女王の元へお帰りなさい。盗まれたものは月であるはずがないわ。夜空に月はちゃんとかかっているもの。だから伯爵は女王と結婚しないのよ」
「いいえ、本当に月を見つけたんです。空の月の方が偽物でないと言いきれますか? だって女王さまが見つけた月はちゃんと満ち欠けするものですもの」
「それは珍しい。見てみたいな」
兄は能天気だ。その一方でちょっと難しい顔をしているミスティアがキャロラインは気になった。満ち欠けする月と聞いたときからだ。
「ええぜひお見せしたいですわ。きっと気に入って、主人との結婚を承諾してくださると信じていました。なのに…、いつの間にかこんなものにすり替えられてしまっていて…。たった今、伯爵さまとの面会を待ちながら確かめようと取り出してみたら」
「ただの小石に見えるけど……」
彼女が取り出したのは小さな小石だった。
「はい。きっとあいつが盗んだんです。あのひどい妖精が……」
キャロラインの言葉に頷いたマリーゴールドは犯人を口にした。
「妖精に盗まれたの? だったらあたしたち人間が取り戻すのは無理ね」
「まあ、そうでしょうね……。フェアリードクターは妖精と人間の仲立ちが仕事。妖精同士のトラブルは解決できないものね……」
クリスティナが言った。
「へえ……」
一応知っていたが、改めて説明されると感心してしまう。
当のマリーゴールドは声をかけられて見せてしまったことから盗まれたと説明してくれる。またこのまま帰るわけにはいかないと。
そこでエドガーはマリーゴールドに向かって提案した。
「すぐには帰りにくいだろうから、しばらくここにいたらどうだい? ねえ、リディア、妖精の客人なんて素敵じゃないか。女王には“月”を取り返そうと手を尽くしたと言い訳もできるし」
「そうねえ……。いいんじゃない? このままというのもちょっとって感じだし……」
キャロラインは兄に賛成する。
リディアも悪い気はしていないようだ。
その一方でミスティアは何か考え込んでいた。
「自然が奇跡の力で生み出す珍しいものねえ……」
ミスティアは先程マリーゴールドがこぼしたことが気になっているようだ。
「ティア? 何か気になっているの?」
「いやなんかマリーゴールドが持ってきた“月”にちょっと嫌な予感がして……」
「嫌な予感?」
「伯爵家の“月”に関係している気がする……」
「“月”かあ……。まさかねえ……」
クリスティナも少し嫌な予感がしてきたようだ。
「だとしたらちょっとまずいわねえ……」
「“月”……」
伯爵家には“月”に関する何かがあるのだろう。あとで訊けば教えてくれるかしらと思った時だった。
「旦那さま、さっきの先生の忘れ物はどういたしましょう?」
レイヴンが切った四本の指のことだ。
「きっと取りには来ないだろうからね。野良犬の餌にでもするかい?」
「悪趣味よ、お兄さま。それにそんなものを喰わせたら犬が可愛そうです!」
「そうかい? まあ冗談だけど」
そう言って二人は思わず笑ってしまう。
エドガーだけじゃなくてキャロラインもちょっとおかしいんだわとリディアに思われているのにも気づかず二人は笑っていた。