夜の木之本家──。
「ゆき。飯食っとけよ。1人だろ？」
「聖奈も一人でしょ？　夕飯食べてく？」
桃矢と梅香が雪兎と聖奈を誘う。
「ありがとう、いつも悪いね」
「ありがとうね。いつも悪いわね」
お礼を言いながら家に入る。
「ん？」
「あれ？」
梅香と桃矢は見慣れない靴が玄関にあるのに気づく。
「ただいま」
「ただいま、父さん」
「おかえり」
藤隆が返事する。
「お邪魔します」
「お邪魔しますね」
雪兎と聖奈が挨拶する。
「いらっしゃい」
にこやかに藤隆が言った。
「さくらたちに客か？」
「うん、お泊りだって」
藤隆が答える。
「知世ちゃんと智世ちゃんですか？」
雪兎が訊く。
「いや、初めてのお客さんですよ。香港から来たんだって」
「「「「香港？」」」」
桃矢と梅香は雪兎や聖奈と顔を見合わせた。
想像がつかなかったのだ。


「ふわ～。お腹いっぱい」
苺鈴が満足そうに言った。
さくらの部屋ですみれはさくらとともにお茶を淹れていた。
「あなたたちのお父さんって本当にお料理上手ね」
その言葉にすみれとさくらは照れたような顔をした。
「羨ましい」
「はい」
お茶をさくらが渡す。
「ありがとう」
「砂糖とか使ってね」
すみれが勧める。
「うん、そうする。そういえばあのお人形さんとお風呂スポンジ……」
「あ、ケロちゃんは知世ちゃん家」
「アップルは美空の家よ」
苦笑いしながらそれぞれ答えた。
苺鈴が来ると言って追い出したのだ。
折り合いが悪いのは承知していたのでそうしたのだった。