「朝……」
すみれはしばらくぼんやりと窓の外を見つめていた。
着替えて髪をとかす。
「おはよう、すみれ。いい天気ね」
アップルティーアが目覚めてくる。
「うん。いい天気ね……。でも何か起きそうな気がする……」
すみれはつぶやいた。
その予想は間違っていなかった。
「ほえええええええっ！」
隣から叫び声が聞こえる。
すみれはそれに苦笑すると下に降りた。
「おはよう」
「おはよう、すみれ。しかし一番に降りてくるとは……。今日は雨か？」
桃矢がからかう。
「お兄ちゃん！」
すみれは桃矢をにらんだ。
ドタドタドタ！
二つの足音が聞こえるとさくらとあやめがおりてきた。
「「怪獣」」
さっそく桃矢と梅香がからかい。二人の怒りをかっていた。
「朝から仲良しさんですね」
「「「おはよう、お父さん」」」
三人は父に挨拶をした。
「おはよう、お母さん」
写真の中の自分そっくりな母にすみれは挨拶をした。彼女はすみれが三つの時に亡くなっている。
「ごちそうさん」
桃矢が席を立つ。
それをみてさくらが食べるスピードを速める。
「ごひそうさま」
慌てて食器を彼女は片づけた。
そして慌てて兄の後を追っていった。
すみれとあやめも彼女の後を追う。あのまま家にいるよりはいい。
さくらが兄の後を追うのは兄が雪兎と一緒に行くからだ。彼女は雪兎に恋をしているのである。
（でも雪兎さん。聖奈さんに雰囲気が似ている……。うまくは言えないけどなにか……）
すみれはそのように感じていた。
「おはよう、さくらちゃん、すみれちゃん、あやめちゃん」
さくらがほうっとなるのがわかる。
「お、おはようございます」
「おはよう。さくらちゃん、あやめちゃん、すみれちゃん」
聖奈がにっこり笑う。
「おはようございます。聖奈さん、雪兎さん」
「おはようございます。今日も元気です」
すみれとあやめも挨拶した。
「聖奈。今日も乗っていく？」
「うん」
どうやら聖奈は自転車を壊したらしく、梅香に乗せて行ってもらっている。
実は聖奈はリディアカード改めすみれカードの守護者の一人、ルナの仮の姿である。緊急時にはルナとなって駆けつける。ルナになっているときは聖奈には記憶がないのでしばらく前まで彼女はルナを知らなかった。だがある事件でルナの存在を知ることになるのである。
楽しい道行は終わってしまう。さくらが残念そうにしていると飴玉が飛んできた。うっとりとそれを見つめるさくら。それを親友の知世に見られ、彼女はびっくりとしていた。
「おはようございます、すみれちゃん」
「おはよう、智世ちゃん」
知世の三つ子の姉智世に声かけられ、すみれは挨拶をする。
「ふう……」
「どうしたの？」
「最近、すみれちゃんにコスチュームを着せる機会がなくて残念ですわ～」
「あはは。相変わらずだね。智世ちゃんは」
幼馴染の美空が笑う。
「『描（ペイント）』のカードを使えば機会なんてつくれるって」
美空が慰める。
リディアカードの『描（ペイント）』で時々すみれはリディアカードを使う訓練をしているのである。
「それもそうですわね。私、頑張らなければ！」
智世は燃えている。
すみれは苦笑するしかなかった。