やがて二人は友枝町駅行のバスに乗った。そこで知世の家に行くのだ。
バスの中ではさくらもすみれも黙っていた。
困ったことは何なのか気になっていたのだ。
「ぷはっ！　苦しい……」
そこへケルベロスが顔を出して苦しさをアピールする。急に声がして乗客がこちらに注目する。
さくらは慌ててケルベロスを抑えた。
「「あはははは」」
二人は苦笑いをして誤魔化した。
「駄目だよケロちゃん……！」
さくらが注意する。
「せやかて中の空気が……」
「もうちょっとだから我慢して……！」
「せやけど……」
「次の次だから。もうちょっとだから我慢して……！」
さくらが言い聞かせる。
そんなさくらを乗客たちは変な顔をしてみていた。
「アップルは大丈夫？」
こっそりとすみれはアップルティーアに訊いた。
「大丈夫。この間アリアに教えてもらっていた空気の膜がきいているみたい」
「よかった……！」
すみれはほっとした。
魔力制御の一環として薄い空気の膜を創るというのをアリアから教わったのでアップルティーアの周りに適用してみたのだ。それが効いてるようでほっとした。
「まあ一見不格好だけどね……」
アップルティーアは苦笑した。
彼女は宇宙飛行士みたいに円形の膜が顔の周りにあった。見た目に目をつぶれば実用的と言う事が分かってほっとした。
「まあそれは始めたばっかりだし……」
すみれは苦笑した。
「でもまあ成功しているならありでしょ……」
アップルティーアは呟くと空気のことを訴えているケルベロスを呆れたように見たのだった。