素晴らしき世界―ZERO―

(げっ……)
 レアは集合場所について思わず顔をしかめた。
 さっきの嫌味な男、ラクラエールがいたのだ。そのそばには取り巻きらしき少年が二人ほどいた。
 ラクラエールも気が付いたのかこちらを睨んでくる。
「あいつ班だぜ」
 ブランがこっそりと囁いた。ブランの言うとおりだった。燦然と胸に輝くゴールドのバッジにIと描かれていた。同じ班にならなかったことにレアはちょっとほっとした。あんなやつと同じ班だったら実紗が可哀そうだ。
「それにしてもすごく混んでいますね……」
 きょろきょろと実紗があたりを見回しながらつぶやく。
 この集合場所にはAに配属された新メンバーが多くいた。Aに配属されるのは戦闘的精があり、なおかつ成績が100位以内の人のみだ。新メンバーが500人と考えるとどれだけ優秀かが分かる。
「そうだね」
 ミルが肯定する。
「皆さん、お待たせしました」
 レアはどんな人たちが班メンバーになったのか気になり、振り向いた。
「え……」
 驚愕に目を見開く。そこにいたのは4人の人物。
「今朝はありがとう」
 そこにいたのはアルバート・サグニ。今朝レアが助けた少年だったのだ。ぱっちりとした水色の瞳が格好いいより可愛い印象を受けさせる。
「ま、まあ。人として当然のことをしただけだし……」
 しどろもどろになる。
「アルを助けてくれてありがとうな!」
 癖のある茶色の髪と紫の瞳の少年がにっかりと笑った。その微笑みで活発な印象をレアは感じた。
「アルを助けてくださってありがとうございます。さて、自己紹介しましょう。皆さん、ほとんど初対面ですしね」
 金髪に灰色の瞳の少年がそう仕切った。きりりとした灰色の瞳が格好良さと冷静さを感じさせる。
「そうだね。じゃあ私から行くわ。私の名前はレアノーラ・リュールラ・オブリーズ・クロワーズ。レアって呼んで。出身世界はマグニフィシャル。得意な魔法は水と氷よ。こちらは契約しているアイシア。」
〔みんなよろしく〕
 レアはこういう場所で言うべき名前を名乗った。マグニフィシャルの人の名前はとてつもなく長いが正式な名前を名乗るのは格式ばった場所か結婚する時だけと決まっている。それ以外には隠すのだ。また初対面の人には名前・精霊の契約者は現す称号・貴族の人は貴族を現す称号・姓を名乗ると決まっている。レアはそれに則って挨拶した。くだけた場所では名前と姓だけでいいのだが。
「シルバー・グレードの……!」
「アルといいすごいですね……!」
 アルの連れ二人が驚く。最後の一人は首をかしげていたが。
「次は私ね。ミルーナ・オブリーズ・ラクアよ。ミルって呼んでください。出身世界はマグニフィシャル。得意魔法は癒しの魔法よ」
ミルが微笑んだ。
 アルたちはラクアの名前に少しだけ驚きを見せた。
「あたしの名前はブランシュ・トゥボロー。ブランって呼べよな。出身世界はルフェルシュードだ。魔法スポーツが得意だぜ」
「ああ。ルフェルシュードは魔法スポーツが盛んだとか。その影響で?」
 金髪の少年が言った。
「ああ。興味あるのか?」
「とても」
「今度一緒にやろーぜ!」
 ブランの誘いに少年は「是非」と言った。
「次は私ですね。神崎実紗です。出身世界はムコです。ムコの魔法はデバイスを使わないので戸惑うかもしれませんが、よろしくお願いしますね。あと、電撃の魔法が得意です」
 実紗の言葉にみんな頷いた。ムコはデバイスの代わりに『札』と呼ばれる特殊なカードで魔法を起こすことは知識があるものならだれでも知っている。そんなことくらいでみんな驚かないのだ。
「次は僕たちだね。僕はアルバート・オブリーズ・サグニ。アルって呼んでくれると嬉しいな。出身世界は知っての通りマグニフィシャル。炎の魔法が得意だよ」
 アルの言葉にミルとブランは驚いた顔をした。大貴族のトップの跡取りがまさかいるとは思わなかったのだろう。
「俺はライオス・ド・ルーマ。出身世界はアクセライトだ。攻撃魔法が得意だぜ。みんな、よろしくな!」
 ライオスはにっかりと笑った。
「あなたはアクセライトの貴族って認識でいいわけ?」
「レアはよく知っているな。一の貴族だ」
 これにはレアも驚いた。アクセライトでは貴族にはドを名前に付ける。そこから貴族階級のものだと分かっただけだが、まさか貴族の中の貴族である一の貴族だとは思わなかったからである。
「次は僕ですね。エリオット・マルケオールです。出身世界はサイエです。魔法科学と精霊術には詳しい自信があります」
 サイエ。科学と魔法が合わさった魔法科学というものが発達している世界だ。魔法と科学両方の長所を組み合わせて生活に役立てている。そのため、ものすごく発達している世界だと聞いている。
 エリオットが自己紹介をし終わった後、最後の一人が進み出た。薄茶色のくせ毛にハシバミ色の瞳がくりっとした少年だ。メガネが彼をさらに幼く見せ、どことなく小動物的な印象を受ける。
「ベンジャミン・ガード・ティマです。ベンと呼んでください。出身世界はアクアです。守護魔法が得意です」
「ガードってあの?」
「守護者のガードかい?」
 レアとアルがガードの名に反応する。
「はい。レアノーラさんとアルバートさん、知っていたんですね!」
 アクアでは守護魔法に特化した家柄に『ガード』という称号を与える。ベンはが守護魔法に特化しているのも納得だった。
「レアは何でも知っているからな!」
「アルだってすごいんだからな!」
ブランとライオスが誇らしげに言った。
「あなたたちが誇らしげにしてどうするのよ……」
ミルが突っ込んだ。
「「あははははは」」
二人はその指摘にバツが悪そうに笑った。
そんな微妙な空気が流れる中、教導官が声を拡大する魔法で全体に声をかけた。
赤毛に灰色の瞳の青年だ。
『諸君、入局おめでとう! ベルナール・オブリーズ・ブリオットだ。隣は補佐の……』
『サンドラ・ロワイヤル・スミスよ』
金髪の優しそうな顔の女性が挨拶する。
ベルナールは続けた。
『さて班のメンバーと無事に合流したと思う。今日初めて会った人ばかりだと思う。そこでだ。2時間ほど時間をやろう。メンバーの魔法を理解したうえで合同演習をやってもらおう。つまりチーム同士で対決だ。ぜひともチーム力のすごさについて私に見せてもらおう! うまくいけば2か月後に特殊部隊に入れるかもしれないぞ?』
会場全体に興奮が流れる。
チーム同士の対決。そこでうまくいけば特殊部隊入り。かなり名誉なことだ。頑張ろうとみんな意気込む。
『それでは2時間後にここで会おう!』
そう言って指導局員は声の拡大魔法を終了した。
「がんばろうね! みんな!」
レアは元気よくメンバーに声をかける。
「うん、頑張ろう!」
アルはレアの言葉にほほ笑む。合同演習に向けての準備が始まろうとしていた。
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