青き真珠

4.デパートでの戦闘

朝、スピカは起きると小型のi-Padみたいなものを出した。
空色のカードを画面にかざすと画面が目の前に浮かびあがってきた。
いくつかの操作をしてとある人物に通信をした。
『よお!スピカ!どうだい?』
赤毛のひげを生やしたがたいのいい男が画面に現れた。
「急の通信申し訳ございません。ルイス大尉。」
『固いこと言うなよ。カノープスでいいよ。今は軍の勤務中じゃないんだしさ』
「では、カノープス。やはり『ダークマター』は『ギャラクシア・ボックス』を狙っていたわ」
『やはりそうか』
カノープスは深刻な顔で頷いた。
『ダークマター』とはリゲルが中心となっているUNの一派である。地球征服を狙っているのもこの一派の者が多い。
「で、『ギャラクシア・ボックス』は地球人の少年の体に取り込まれたわ」
『まじかよ!それでどうしたんだ?』
そこでスピカは事の顛末をすべて話した。
『へえ……。宇宙人の存在を信じるとは大物だな。そいつ。』
カノープスが感心したように言った。
「もともと宇宙人の存在を信じているらしいのよ。それでじゃない?」
『地球の連中にも信じる奴はいるんだな。そいつの情報は?スピカ。』
「はい。これよ。」
スピカはそう言って昴のデータを送信した。
『へえ……。結構イケメンだな。こいつ中学生か?』
カノープスがデータに添付されていた黒髪に二重のパッチリとした目をした昴の画像をみてそんな感想を漏らした。
「高校二年生ですって。そうは見えないわよね。」
スピカがそう言った。
このセリフを昴が聞いたら烈火のごとく怒るだろう。彼は童顔のせいで若く見られる自分の顔にコンプレックスを持っているからである。
『高校生!そうは見えないけどなあ!』
カノープスは驚きの声をあげた。
「黙ってデータを読んだらどうなの?」
『はいはい。読みますよ~だ。』
カノープスはそう言ってデータを読んだ。
『星川 昴。五月三〇日生まれの一七歳。家族構成は父と母と弟。宙圃町一のエリート進学校、宙峰学院に通う高校二年生……。身長一七〇cm。実家は有野(ありの)。現在、宙圃町四丁目の住宅地で一人暮らし中か……。実家が近いのにどうして一人暮らしをしているんだ?地図見る限りだと有野なんて宙圃町の隣じゃねえか。それにデータを見ると家は星川コーポレーションという日本でも五指に入る有名な財閥だろ?財閥の御曹司を一人暮らしさせて平気なのか?』
「それは分からないわ。もしかしたら親と仲良くないのかもしれないわ」
カノープスの疑問にスピカは答えられなかった。それは本人から聞きださない限り分からない事情だからだ。
『お前みたいに?』
「その可能性があると言うだけよ。」
スピカは声が剣呑になるのをおさえられなかった。その話題は彼女にとって地雷だからだ。
『お前本当に母親と仲悪いものな』
「それは今関係ないでしょ。知らないわよ!あんな人」
『悪い、悪い。そのデータをもとにこっちで『ダークマター』への対策を立てとくからさ。』
カノープスはちっとも悪びれない調子で言った。
「お願いね。じゃあ切るわよ」
スピカはそれだけ言って通信を切った。
「ほんと調子いいんだから!カノープスは!」
スピカはそう言って怒り任せに部屋のドアをバタンと閉めたのだった。
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