ルミエーラ

「くそっ!」
 ルイボスが壁を叩く。
 彼らは陰気くさい牢屋にいた。彼らは今さっき目を覚ましたのだ。
「ルイボス……」
 ハーブが薬をグレイに飲ませながら呟く。
 彼女はしびれたグレイを治療していた。
 彼は煙を吸ってしびれていたのだ。
薬はハーブが見つからない場所に隠していたため取り上げられずに済んだ。
「ルイボス、そんなにイライラするな。なにもいいことないぞ」
 薬を飲み終わったグレイがルイボスをたしなめる。
「だって僕がドアを開けなければ……!」
 ルイボスはドアを開けてしまったことを後悔していた。開けなければヴィクトリアは捕まらなかったのに。
「ルイボスのせいじゃないよ。まさかセージが裏切るとは思わないもの」
「ああ。あいつがあんなことするとはな……。それにイーリマ婆さんのところをとっとと去ってしまった俺も悪い」
「そんなことないよ。誰も悪くないんだ!」
 ハーブは必死で言った。
グレイもルイボスもどうして自分が悪いというのだろう。一番役に立たなかったのは自分なのに。
「どれくらいたったかな……」
「三日位だと思うぞ。俺が嗅がされたのは最大で効力が三日の眠り薬と五日のしびれ薬だ」
「グレイは詳しいのね」
 ハーブが感心したように言った。
「イーリマ婆さんに昔教えてもらったからな」
 懐かしむようにグレイは遠くを見た。
「ここから出なきゃ……」
 ルイボスは立ち上がった。
「どうやって……?」
 ハーブは不安そうだ。
「まあ落ち着け。番人と鉢合わせしてもまずい。とにかく様子を見るぞ。じゃないとヴィクトリアを救い出せん」
 グレイのゆったりと落ち着いた声に不思議と心が落ち着いてくるハーブとルイボスだった。
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