ルミエーラ
それからヴィクトリアたちは西へ西へと旅をした。
大きな川を越え、森を超え、草原を超え、荒れ野を超えた。
「もうすぐ着くぞ」
グレイが言った。目の前には山のふもとにある村があった。
「あそこに住んでいるの?」
ヴィクトリアは訊いた。
「いや。あの山に住んでいる」
「「「ええ――!!」」」
三人は絶叫した。
山は険しいように思えたのだ。
あれを登る?
「さあ、イヴェ村だ」
グレイは死んだような目をしている三人に気付かずに村の中へと入って行った。
村は貴族の別荘らしき家がぽつりぽつりとあるだけののどかなところだった。
「ルイボス?」
ルイボスと同じ栗色の髪の青年が声をかけた。
ルイボスをもう少し大人にしたような感じの青年だ。
「兄さん!」
ルイボスは嬉しそうに青年に駆け寄った。
「来てたんだな。ルイボス」
「兄さんこそ。どうしてここに?」
「先輩に連れられてな」
「へえ~。そうなんだ」
ルイボスはにこにこしながら言った。
「セージよ。ルイボスのお兄さんなの」
不思議そうな顔をしていたヴィクトリアのためにハーブが耳打ちした。
「お兄さんなの!?」
ヴィクトリアは驚いた。
「で、そちらの方は?」
青年はヴィクトリアをじっと見た。
「ヴィクトリアだよ。ヴィクトリア、こちらは僕の兄さんだ」
「よろしく」
ヴィクトリアは手を差し出した。
「こちらこそよろしく」
セージも手を差し出した。
二人は握手したがヴィクトリアは彼が苦手だと思った。
なんかこっちを探るように見てくるのだ。
それに彼はルイボスより身長が高く身体つきがいいがルイボスの方がいいとヴィクトリアは思った。
「それじゃあ僕たち行くね」
「おう。気を付けろよ」
一言二言話した後セージと別れて村の奥にある山の入口へと入って行ったのだった。
「彼がルイボスですか」
ヴィクトリアたちの後姿を見つめるセージに後ろから声がかかった。
「イアン先輩」
セージは声をかけた人物が誰だか分かっていた。イアン・クローゼ。セージの先輩だ。
「彼のことをどう思いますか?」
イアンは今までもセージの悩みを聞いてきた。だから話してくれるだろう。そのたくらみは成功した。
「弟は俺よりもすごいんだ。剣術だって勉強だって俺より上だ。父さんだって母さんだってみんなだってそう思っているんだ」
「それで?」
イアンは続きを促す。
「見返そうと思って騎士団に入ったのにそこでも渇望されているのは弟で……」
セージはそこで俯いた。
みんなみんな弟を欲しがっている。自分はいらないのだ。
そんな暗い考えをイアンの一言が打ち破った。
「彼を見返したくありませんか?」
「え……?」
セージを見ると読めない表情をしていた。
「あの金髪の少女はヴィクトリア王女殿下です」
「行方不明の第二王女……」
セージは驚いた。
「ええ。しかも彼女は光の子 。彼女を連れてくることが出来たらあなたの将来は約束されたも同然。大臣たちが喜びますからね。どうです?」
「俺は……」
「殿下を連れてくるのです。そうすればあなたの将来は約束されます。弟を見返せますよ」
「俺は……」
セージの心は揺れた。
弟を超えたいと日ごろ思っている彼にとってその言葉は甘い蜜のように心にしみわたったのだった。
大きな川を越え、森を超え、草原を超え、荒れ野を超えた。
「もうすぐ着くぞ」
グレイが言った。目の前には山のふもとにある村があった。
「あそこに住んでいるの?」
ヴィクトリアは訊いた。
「いや。あの山に住んでいる」
「「「ええ――!!」」」
三人は絶叫した。
山は険しいように思えたのだ。
あれを登る?
「さあ、イヴェ村だ」
グレイは死んだような目をしている三人に気付かずに村の中へと入って行った。
村は貴族の別荘らしき家がぽつりぽつりとあるだけののどかなところだった。
「ルイボス?」
ルイボスと同じ栗色の髪の青年が声をかけた。
ルイボスをもう少し大人にしたような感じの青年だ。
「兄さん!」
ルイボスは嬉しそうに青年に駆け寄った。
「来てたんだな。ルイボス」
「兄さんこそ。どうしてここに?」
「先輩に連れられてな」
「へえ~。そうなんだ」
ルイボスはにこにこしながら言った。
「セージよ。ルイボスのお兄さんなの」
不思議そうな顔をしていたヴィクトリアのためにハーブが耳打ちした。
「お兄さんなの!?」
ヴィクトリアは驚いた。
「で、そちらの方は?」
青年はヴィクトリアをじっと見た。
「ヴィクトリアだよ。ヴィクトリア、こちらは僕の兄さんだ」
「よろしく」
ヴィクトリアは手を差し出した。
「こちらこそよろしく」
セージも手を差し出した。
二人は握手したがヴィクトリアは彼が苦手だと思った。
なんかこっちを探るように見てくるのだ。
それに彼はルイボスより身長が高く身体つきがいいがルイボスの方がいいとヴィクトリアは思った。
「それじゃあ僕たち行くね」
「おう。気を付けろよ」
一言二言話した後セージと別れて村の奥にある山の入口へと入って行ったのだった。
「彼がルイボスですか」
ヴィクトリアたちの後姿を見つめるセージに後ろから声がかかった。
「イアン先輩」
セージは声をかけた人物が誰だか分かっていた。イアン・クローゼ。セージの先輩だ。
「彼のことをどう思いますか?」
イアンは今までもセージの悩みを聞いてきた。だから話してくれるだろう。そのたくらみは成功した。
「弟は俺よりもすごいんだ。剣術だって勉強だって俺より上だ。父さんだって母さんだってみんなだってそう思っているんだ」
「それで?」
イアンは続きを促す。
「見返そうと思って騎士団に入ったのにそこでも渇望されているのは弟で……」
セージはそこで俯いた。
みんなみんな弟を欲しがっている。自分はいらないのだ。
そんな暗い考えをイアンの一言が打ち破った。
「彼を見返したくありませんか?」
「え……?」
セージを見ると読めない表情をしていた。
「あの金髪の少女はヴィクトリア王女殿下です」
「行方不明の第二王女……」
セージは驚いた。
「ええ。しかも彼女は
「俺は……」
「殿下を連れてくるのです。そうすればあなたの将来は約束されます。弟を見返せますよ」
「俺は……」
セージの心は揺れた。
弟を超えたいと日ごろ思っている彼にとってその言葉は甘い蜜のように心にしみわたったのだった。