ルミエーラ

次の日、ヴィクトリアたちは慌ただしく出かけた。近衛軍がこの街に来ると聞いて鉢合わせしたらまずいと思ったのだ。
 街を出ると黒い森ノワール・フォレにたどり着いた。
 その名の通り午前中だというのに真っ暗だった。
(暗くて怖い……)
 ヴィクトリアは内心びくびくしていた。
「怖いのか?」
 グレイが訊いてくる。
「うん……」
「そうか……」
 グレイはヴィクトリアをじっと見てつぶやいた。
「いいか。ヴィクトリア。どんな暗闇も晴れないときはないんだよ」
「あ……」
 ヴィクトリアはその声に思い出すものがあった。
『いい? ヴィクトリア。どんな暗闇も晴れないときはないのよ。暗闇の後には必ず光がやってくるの……。光は希望とともに……』
 母はそう言ってよくヴィクトリアをなでてくれた。
「晴れない暗闇はない……。光は希望とともに」
 自分を励ますように呟く。
「『自分の心にも打ち勝て。最大の敵は自分の弱さ』お母さまはそう言っていた……」
「ステラ……」
 グレイはステラらしいと思った。彼女ならいいそうだ。
「光の道は私たちの目の前にある」
 そう呟くと目の前の道が光り始めた。
「これは……!」
 ルイボスが驚く。
「この道を行くんだ! この道は森の入り口に繋がっている!」
 森に詳しいハーブが叫ぶ。
 四人は光る道を進み始めた。
 四人が通った道は光るのを止めた。
 やがて森の外に出た。
「……!」
 後ろを振り返ってヴィクトリアははっとした。
 そこには亡き母、ステラがいたのだ。
「ヴィクトリア? どうしたんだい?」
「どうしたの?」
 ルイボスとハーブが心配そうにのぞき込んでくる。
「な、何でもない……」
 ヴィクトリアはごまかした。
 もう一度後ろを向くとそこには母の姿はなかった。
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