青き真珠

昴が悲鳴を上げた頃、遠く離れたアコール星に立つ高層ビルの最上階にある部屋に一人の男が座っていた。
部屋の中には机と椅子と本棚しかない。とても簡素な部屋だ。
黒髪のオールバックのスーツの男は足を組んでゆったりとくつろいでいた。
するとそこにピーという音が鳴った。通信の音だ。
「来たか。」
男はそう呟くと金色のカードを机の右側の端に描いてある電話のマークにかざした。
すると机の上に画面が現れた。
「私だ。首尾はどうだ?」
男がそう言うと顔に赤い痕があるエルナトとアルデバランは罰が悪そうにもぞもぞと体を動かした。
『申し訳ございません……。リゲル様』
やっとのことでエルナトが言った
「すると『ギャラクシア・ボックス』を手に入れることが出来なかったと?」
『はい。スピカ・コルベールに邪魔をされまして。それに現在、『ギャラクシア・ボックス』はとある地球人に取り込まれているようです。』
「何?スピカ・コルベールだと?」
アルデバランの報告にリゲルは驚いた顔をした。
「では『COSMOS(コスモス)』に情報が漏れているということだな。これはまずい。各代表に連絡を私が取ろう。お前たちは『ギャラクシア・ボックス』をその地球人ごと手に入れろ」
『了解!』
リゲルの命令にエルナトとアルデバランは頷いた。
『言い忘れるところでした。その地球人のデータが手に入りました。彼が住んでいるところはどうやら情報管理が甘いようでして……。すぐに手に入りましたのでそちらに送ります。』
「よくやったアルデバラン。私はそのデータをみていろいろ考えよう。お前たちは休め。顔が腫れているぞ。」
『スピカの奴にやられたんですよ。あいつ顔面キックをくらわした上にエアガンを使用してきたんですよ。』
エルナトが頬を膨らませて言った。
『まあエアガンはP‐33型で相手をひるませるタイプのもので威力はそんなになかったんですがね。』
アルデバランが補足をした。
「そうか……。報告ご苦労だった。」
『はい。また連絡します。』
そう言って二人は通信を切った。
電話が終わるとリゲルはため息をついた。
「お疲れの様ですね。リゲル様」
そう言ってスーツ姿の釣り目の男がコーヒーを机に置きながら言った。
「ベテルギウス。」
リゲルは男の名を呼んだ。
ベテルギウスはアコール星の代表であるリゲルの秘書官だ。
焦げ茶色の髪と空色の瞳を持つこの男をリゲルは気に入っている。仕事ができて気が利くからだ。
「なにかありましたか?」
「ああ、ちょっとな……。スピカが敵になった。」
リゲルの言葉にベテルギウスはしばらく黙った。
「リゲル様はスピカ様が敵になってもかまわないのですか?」
数分経ってからそれだけを言った。
「ああ。信念が違うのだから戦うしかあるまい。容赦はしない。」
「それがあなたの覚悟なら従います。」
「頼むよ。ベテルギウス。」
リゲルは頼もしそうな目でベテルギウスを見た。
「さて、おまえの信念とやらを見せてもらおう。スピカ」
そう言ってにやりと笑ったリゲルの瞳はスピカと同じ深い青色の目をしていた。

一方そのころ……。
「はあ……。」
深いため息を昴はついた。
家に同い年の少女を泊めることになるとは思わなかったのである。
これは世間的にもやばいことである。これがばれたら学校で冷やかされること確実である。
ホテルに泊まればいいと言ったが何かあった時にすぐに対応できないからそれは嫌と言われて渋々、家に泊めることになったのである。
救いは家に昴一人で住んでいることと学校が明日ないことである。
「じゃあお休み。昴。」
スピカはそう言ってさっさと客室に引っ込んでしまった。
「気楽でいいよな。」
昴はそう呟いて寝るために自室へと引っ込んだのであった。
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