ルミエーラ
グレイは壊れた橋を見つめた。
やっとのことでたどり着くと橋が壊れていたのだ。古かったのだろう。
「ヴィクトリアたちはここを渡ったのか……?」
頭を二人が落ちたのではないかということがよぎる。
「でもな……。運が強いから無事かもしれないし……。それにルイボスは賢いしな……」
しばらく考えて次の街に行くことを決断した。
「さて、行くか」
自分を奮い立たせるとグレイは渡れるところを探して谷沿いを歩き出した。
その途中思うことは双子の弟、セイロン、ヴィクトリアの母、ステラの事だった。
ヴィクトリアはステラに似ている。
目を閉じればまるでステラがそこにいるかのようにそっくりだった。
彼女はステラではないということはわかっている。ステラは金髪でなく赤毛だったし、鼻はもうちょっと高かった。
ただ、雪のように白い肌や波打つ髪やぱっちりとした翡翠色の瞳の形がそっくりなのだ。あの瞳を見るとステラのことを思い出してしまう。……かつて自分が抱いた想いも。
『ヴィクトリアちゃんはステラにそっくりね』
ローズマリーの家で過ごしたひと時に妹が漏らした一言だ。
『彼女は髪の色こそ違うけどそのほかはステラにそっくり』
『ああ。そうだな』
グレイは妹に賛同した。
『混同したりしないの?』
首を傾げて妹が訊いてくる。
『しないよ。ステラはステラ。ヴィクトリアはヴィクトリアだ』
グレイはきっぱりと言った。
『辛くない?』
『何が?』
言いたいことはわかっていたがすっとぼけた。
『だって昔兄さんはステラの事――』
『それは昔のことだ』
妹の言葉をグレイはさえぎった。
『この話は終わりだ』
『でも兄さん――』
『いいな』
兄の迫力に押されてローズマリーは頷いたのだった。
(今になって思い出すなんて――)
グレイは自嘲した。当の昔に封じ込めた思いが再び蘇ってきていた。
(だからこそ守りたいんだ……)
それははるか昔に立てた誓いだから。
やっとのことでたどり着くと橋が壊れていたのだ。古かったのだろう。
「ヴィクトリアたちはここを渡ったのか……?」
頭を二人が落ちたのではないかということがよぎる。
「でもな……。運が強いから無事かもしれないし……。それにルイボスは賢いしな……」
しばらく考えて次の街に行くことを決断した。
「さて、行くか」
自分を奮い立たせるとグレイは渡れるところを探して谷沿いを歩き出した。
その途中思うことは双子の弟、セイロン、ヴィクトリアの母、ステラの事だった。
ヴィクトリアはステラに似ている。
目を閉じればまるでステラがそこにいるかのようにそっくりだった。
彼女はステラではないということはわかっている。ステラは金髪でなく赤毛だったし、鼻はもうちょっと高かった。
ただ、雪のように白い肌や波打つ髪やぱっちりとした翡翠色の瞳の形がそっくりなのだ。あの瞳を見るとステラのことを思い出してしまう。……かつて自分が抱いた想いも。
『ヴィクトリアちゃんはステラにそっくりね』
ローズマリーの家で過ごしたひと時に妹が漏らした一言だ。
『彼女は髪の色こそ違うけどそのほかはステラにそっくり』
『ああ。そうだな』
グレイは妹に賛同した。
『混同したりしないの?』
首を傾げて妹が訊いてくる。
『しないよ。ステラはステラ。ヴィクトリアはヴィクトリアだ』
グレイはきっぱりと言った。
『辛くない?』
『何が?』
言いたいことはわかっていたがすっとぼけた。
『だって昔兄さんはステラの事――』
『それは昔のことだ』
妹の言葉をグレイはさえぎった。
『この話は終わりだ』
『でも兄さん――』
『いいな』
兄の迫力に押されてローズマリーは頷いたのだった。
(今になって思い出すなんて――)
グレイは自嘲した。当の昔に封じ込めた思いが再び蘇ってきていた。
(だからこそ守りたいんだ……)
それははるか昔に立てた誓いだから。