ルミエーラ
ヴィクトリアとルイボスはやがて谷へたどり着いた。
谷底を覗き込むと川が流れていた。流れが結構激しそうだ。
「あそこを渡るんだね」
ヴィクトリアが示す方を見ると随分古い橋が架かっていた。
「………」
「………」
あれを渡るのか!?
二人は顔を見合わせた。
橋は渡ろうとしただけで今にも落ちそうなくらい古臭かった。
「どうする? 」
「あれしかないならわたるしかない……」
二人は気が進まないながらもわたることになった。
「絶対に大丈夫だよね!? 」
震えながらヴィクトリアが訊いた。
「た、たぶん……」
ルイボスも震えながら頷く。
落ちそうで怖いのだ。
震えながらもなんとか中ほどまでは渡り終えた。
「見つけたぜ! 」
「俺たちついている! 」
短く金髪を刈り込んだがたいのいい二人組の男が叫んだ。
二人は鏡写しみたいにそっくりで青い瞳を鋭く光らせていた。金髪はヴィクトリアの濃い蜂蜜色ではなくそれよりも薄かった。ただ、右側に立ってる方には右頬に十字傷があった。
「「げっ!! 」」
二人は顔を真っ青にした。
こんなところで敵に見つかってしまった。
「それじゃあ行くぜ! 」
二人はどしどしと一気に橋の中ほどまで来てしまった。
「逃げるぞ! 」
「ええ! 」
二人は一気に逃げようとした。
「そうは行くか! 」
十字傷のある方が切りかかってくる。
ひゅっと音がすると蜂蜜色の何かがはらりと宙を舞った。
それが自分の髪の毛だというのに気が付いたのはそれから数秒後だった。
腰まである見事な金髪の髪の一部が肩ぐらいまで切れていた。
「あ、私……」
短くなった髪を持ち上げてヴィクトリアは呟いた。
「レディには優しくって習わなかったか? 」
ルイボスが二人組を睨みつけて剣を構えた。
「お、やる気か? 」
十字傷のない方が好戦的な目をして言った。
「やああああああっ! 」
それには答えずにルイボスは切りかかった。
またたく間に斬りあいになった。
しかし二対一。次第にルイボスが劣勢になった。
その時だった。
ミシッ!
強い音がした。
「何の音? 」
ヴィクトリアはあたりを見回した。
「橋が壊れる! 逃げろ! 」
ルイボスが叫んだ。見ると渡ってきたあたりに深い亀裂が走りこんだ。さっきの剣戟で腐っていた橋が刺激で壊れていっているのだ。
それを聞いて二人組は瞬く間に橋を渡って逃げ出した。
「さあ、行こう」
ルイボスが言った。
二人は走って橋を渡った。
亀裂が迫ってきていた。
「きゃあっ!」
ヴィクトリアが踏んだところが腐っていたのか床が抜ける。
「ヴィクトリア! 」
ルイボスは手を伸ばしてヴィクトリアをつかんだ。
「ルイボス! 」
ヴィクトリアがルイボスの右手に捕まりながら言った。
「待ってろ! 今引き上げてやるから!」
そう言って引き揚げようとした。しかし不安定な橋の上のことだ。なかなかうまくいかない。
「ルイボス! 私のことはいいから手を離して! あなたまで落ちてしまう! 」
引き上げようとするルイボスの床がミシミシ音を立てるとヴィクトリアは叫んだ。
「馬鹿言うな! そんな事できるか! 」
ルイボスは手を離さなかった。
「こんな迷惑しかかけない、私の事なんて放っておいていいのに……」
ヴィクトリアの言葉にルイボスが怒鳴った。
「自惚れるな! 僕は別に君が光の子 だから助けたいわけじゃない! 君が君だから助けたいんだ! 君自身が必要なんだよ! 」
「ルイボス……」
「グレイ伯父さんだってきっとそうだ。ヴィクトリア自身が愛おしいから。不思議な力を持っていたって君自身を守りたい、愛おしいと思わなければここまで育てないし守らないはずだよ」
ヴィクトリアの目から涙がこぼれた。本当にそうだ。
「待ってろ! 今引き上げるからな」
そう言って力を込めたとたん橋が壊れた。
「きゃあああああっ!」
二人は谷底の川に落ちた。そしてそのまま流されていったのだった。
谷底を覗き込むと川が流れていた。流れが結構激しそうだ。
「あそこを渡るんだね」
ヴィクトリアが示す方を見ると随分古い橋が架かっていた。
「………」
「………」
あれを渡るのか!?
二人は顔を見合わせた。
橋は渡ろうとしただけで今にも落ちそうなくらい古臭かった。
「どうする? 」
「あれしかないならわたるしかない……」
二人は気が進まないながらもわたることになった。
「絶対に大丈夫だよね!? 」
震えながらヴィクトリアが訊いた。
「た、たぶん……」
ルイボスも震えながら頷く。
落ちそうで怖いのだ。
震えながらもなんとか中ほどまでは渡り終えた。
「見つけたぜ! 」
「俺たちついている! 」
短く金髪を刈り込んだがたいのいい二人組の男が叫んだ。
二人は鏡写しみたいにそっくりで青い瞳を鋭く光らせていた。金髪はヴィクトリアの濃い蜂蜜色ではなくそれよりも薄かった。ただ、右側に立ってる方には右頬に十字傷があった。
「「げっ!! 」」
二人は顔を真っ青にした。
こんなところで敵に見つかってしまった。
「それじゃあ行くぜ! 」
二人はどしどしと一気に橋の中ほどまで来てしまった。
「逃げるぞ! 」
「ええ! 」
二人は一気に逃げようとした。
「そうは行くか! 」
十字傷のある方が切りかかってくる。
ひゅっと音がすると蜂蜜色の何かがはらりと宙を舞った。
それが自分の髪の毛だというのに気が付いたのはそれから数秒後だった。
腰まである見事な金髪の髪の一部が肩ぐらいまで切れていた。
「あ、私……」
短くなった髪を持ち上げてヴィクトリアは呟いた。
「レディには優しくって習わなかったか? 」
ルイボスが二人組を睨みつけて剣を構えた。
「お、やる気か? 」
十字傷のない方が好戦的な目をして言った。
「やああああああっ! 」
それには答えずにルイボスは切りかかった。
またたく間に斬りあいになった。
しかし二対一。次第にルイボスが劣勢になった。
その時だった。
ミシッ!
強い音がした。
「何の音? 」
ヴィクトリアはあたりを見回した。
「橋が壊れる! 逃げろ! 」
ルイボスが叫んだ。見ると渡ってきたあたりに深い亀裂が走りこんだ。さっきの剣戟で腐っていた橋が刺激で壊れていっているのだ。
それを聞いて二人組は瞬く間に橋を渡って逃げ出した。
「さあ、行こう」
ルイボスが言った。
二人は走って橋を渡った。
亀裂が迫ってきていた。
「きゃあっ!」
ヴィクトリアが踏んだところが腐っていたのか床が抜ける。
「ヴィクトリア! 」
ルイボスは手を伸ばしてヴィクトリアをつかんだ。
「ルイボス! 」
ヴィクトリアがルイボスの右手に捕まりながら言った。
「待ってろ! 今引き上げてやるから!」
そう言って引き揚げようとした。しかし不安定な橋の上のことだ。なかなかうまくいかない。
「ルイボス! 私のことはいいから手を離して! あなたまで落ちてしまう! 」
引き上げようとするルイボスの床がミシミシ音を立てるとヴィクトリアは叫んだ。
「馬鹿言うな! そんな事できるか! 」
ルイボスは手を離さなかった。
「こんな迷惑しかかけない、私の事なんて放っておいていいのに……」
ヴィクトリアの言葉にルイボスが怒鳴った。
「自惚れるな! 僕は別に君が
「ルイボス……」
「グレイ伯父さんだってきっとそうだ。ヴィクトリア自身が愛おしいから。不思議な力を持っていたって君自身を守りたい、愛おしいと思わなければここまで育てないし守らないはずだよ」
ヴィクトリアの目から涙がこぼれた。本当にそうだ。
「待ってろ! 今引き上げるからな」
そう言って力を込めたとたん橋が壊れた。
「きゃあああああっ!」
二人は谷底の川に落ちた。そしてそのまま流されていったのだった。