ルミエーラ

グレミアを出発して五日が過ぎた。
(まいったな~)
 グレイは頭をかいた。
 それはヴィクトリアとルイボスの仲の悪さにあった。
「これくらいでへばっているの~?だらしないんじゃない?」
「大きなお世話よ!それにへばってなんかいません!」
「ああ、そう。ならもっと歩けるよな」
「ええ!」
 そう言うとヴィクトリアは足を速めた。
 負けまいとルイボスも足を速める。
(やれやれ……)
 内心でグレイはため息をついた。だいたいルイボスはヴィクトリアより二つ年が上なのだ。大人になれと叫びたい。
「二人とも~!そろそろここら辺で野宿するぞ!」
 グレイが言うと二人そろってこっちに駆け戻ってきた。
「ヴィクトリア、おまえは薪を集めて来い」
「分かった」
「ルイボス。お前は水を汲みに行って来い」
「分かったよ」
 二人はそれぞれ自分の仕事をしに行った。
 言いつけられた通り薪を集めてくるとちょうどルイボスが水を持ってきたところだった。
 ヴィクトリアはちらりと彼を見た。どうしてあんなことを言うのか分からない。何もしていないのに。
(でも、こんな迷惑ばかりの私のそばにいても面白くないよね……)
 そう思って落ち込んだ。
 そんなヴィクトリアをルイボスは複雑な目で見ていた。
 やがて夜になると疲れていたのかヴィクトリアはすぐに眠ってしまった。
 そんな彼女の寝顔をルイボスはじっと見ていた。
「よお」
 グレイが声をかけて隣に座る。
「グレイ伯父さん」
「お前、ヴィクトリアにやけに冷たいじゃないか。何があったんだ?」
「別に」
 そう言ってそっぽを向いた。言ったら彼が悲しむと思った。
「別にじゃないだろ」
「……今は言いたくない……」
 そう言って顔をうずめてしまう。
「……そうか」
 グレイは何か察したらしい。それ以上訊いてこなかった。
「言っとくけど彼女が嫌いなわけじゃないよ」
そう言うとグレイは安心した顔で言った。
「それはよかった」
 そう。彼女が嫌いなわけじゃない。ただ、どうしてあんなことを考えているのか理解できなかったのだ。そしてなんとかしたくてあんなことを言ってしまう。
(本当に僕は駄目だな……)
 そうルイボスは自嘲したのだった。
10/43ページ
スキ