ルミエーラ

次の日ヴィクトリアたちはキャンプ地を出発した。
 グレイは昨日会ったことを言わなかった。そのほうがいいと思ったのだ。
 ただヴィクトリアを自分だけで守り切れるのか。それだけが不安だった。
 グリセア草原で野宿をしつつわたっていく。
 やがて二人はクージュという町についた。
「久しぶりにベッドで寝れるわ」
 ヴィクトリアは喜んだ。
 宿は簡単に取れた。
 そして二人は久しぶりにベッドの感触を楽しみながら眠りについたのだった。
その夜、ヴィクトリアは夢を見た。
【目覚めよ。勝利の子】
【目覚めの時は近い】
 何者かがヴィクトリアに声をかけてくるのだ。
 ヴィクトリアは声の主を探したが姿が見えない。
「いったい誰なの!?」
 叫んだところで夢から覚めた。
 目を覚ますとヴィクトリアはカーテンを開けた。
「いい天気……」
 思わず呟く。
 ベッドを見るとグレイがぐーすかと寝ていた。
(疲れているのね……。悪いことをしたわ)
 自分を守るために気を張る毎日だったことだろう。罪悪感がこみあげてくる。
 やがてグレイが目を覚ました。
 ヴィクトリアは今までのことを振り払っていつも通りグレイに接したのだった。
「疲れていないか?」
 クージュという町を出発して一時間半後にグレイは訊いた。
「ううん」
 彼女は首を横に振った。
 疲れていないのは事実だった。
「そうか。ならいいんだ」
 グレイは安心したようだった。
「あと、四日で目的地に着くぞ」
 グレイが励ます。
「うん」
 ヴィクトリアは頷いた。
 そしてそこから四日後――。
 ヴィクトリアたちは煉瓦造りが美しい街、グレミアについた。
「グレミアだ」
「うん。グレイの妹さんに会うの楽しみ」
 二人はいろいろ会話しながらグレミアの町に入っていくのだった。
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