青き真珠

14.21年後

『ギャラクシア・ボックス』が絡んだリゲル事件から二十一年の年月が経った。
 あれから地球は宇宙との交流が無かった昔から考えられないくらい発展した。
 その地球にある日本国の首都、東京で一人の少女が目を覚ました。
「ベガ!起きなさい!」
 父親譲りの肩より少し長い黒髪に母親譲りの青い瞳を持つ少女、ベガは母親の声にのそりと起き上がった。
「は~い!今いきます!」
 宙圃学院中等部の制服を着てリビングに行くと母親の星川 スピカがニコリと笑ってくる。
「おはよう、ベガ」
「おはよう。ママ」
 金髪をシニヨンにした母親はきれいだ。
「いただきます」
 出された朝ごはんを食べていると父親の昴が起きてきた。
「おはよう。パパ」
「ああ、おはよう。ベガ」
 昴も挨拶をして欠伸する。
「遅くまで研究してたの?」
 ベガが訊く
「ああ。ちょっとね」
 昴は娘に答えた。
 彼は地球にあったワープ装置をつくった。ワープ装置の第一人者だ。彼はもっといいワープ装置をつくろうと奮闘している。
「さあ、ベガ。もう学校に行く時間よ」
 スピカが促す。
「ママも仕事に行かなきゃならないんでしょう?」
「ええ。でももう少し遅くてもいいのよ。」
 スピカは『COSMOS(コスモス)』の地球支部のスピカ隊の隊長だ。この若さでは異例のことのようだ。
「ふ~ん。そうなんだ。いってきま~す!」
 ベガは元気よく出かけて行った。
「ふふっ。元気がいいこと」
 スピカは笑った。
 娘が生まれて十四年。
 かつての仲間たちはばらばらになった。
 デネブとアルタイルは幹部に。
 カノープス、アルビレオ、コル・カロリ、シルマ、プレオネ、カーラはそれぞれの隊の副長に。
 ドゥーベはスピカ隊の副長に。
 カペラとポルックスとカストルは中尉に昇進してカペラはアルビレオのポルックスとカストルはプレオネの元で頑張っている。
 フォーマルハウトは引退してタイタンに総司令の地位を譲った。カロンは研究室のリーダーをやっている。
 ポラリス姫はあの後父親から位を譲り受けて女王になった。善き女王として君臨している。
 アステリオンは代表の座を引退した。
 またリゲルたちが犯した罪は裁かれて無期懲役に科せられた。開いた代表の座は新しい人が選出されて善き星としてますます発展していくことになる。
「いろんなことがあったな~」
 スピカは昔を思い出しながら言った。
「ああ。そうだな」
 昴も同じく昔を思い出しながら同意する。
 リゲル事件から二十一年。この世界は平和でも無かった。しかし力を合わせてそれらを退けて言った。
「さてともう一人の子の面倒を見なきゃね」
 スピカはベッドでぐっすりと寝ている小さな娘のことを指して言った。
「カリストのことだね」
「ええ。あの子まだ赤ちゃんだし」
 スピカは頷く。
「でも驚いたよ。カリストって名前にしたいって言ったときは」
「いいでしょ。カリストは私の大事な従妹の名前だったんだから。それにあの子みたいに優しい子に育って欲しいから……」
 スピカが言った。
「とてもいいと思うよ。生まれた時にそう言っただろ?」
「ええ。そうね。さあ、やることやらなくちゃ!」
 スピカはそう言ってさっさと動き出してしまう。
「本当にいろんなことがあった……」
 やっとつかんだ平和を昴は手放す気はなかった。
 願わくは娘たちには平和な世の中で生きていってほしい。
 そう昴は強く願った。
 窓を開けると風が吹き込む。
(ああ。良い風だな……)
 風で髪を巻き上げられながら外を見ると鳥が飛んでいた。
(子供って言うのは無限の可能性があるんだ……。あの鳥のようにね。俺たちはその可能性を狭めちゃいけないんだ。なあ、そうだろう?『ギャラクシア・ボックス』)
 昴は何年も使っていない自分の中にある力、『ギャラクシア・ボックス』に語りかけた。
 すると答えるように昴の身体が光り始めた。
 まるでそうだねと言っているみたいに。
 それに満足すると昴は窓を閉めた。
「さあ、今日もやることいっぱいあるぞ!」
 自分に活を入れるみたいに昴は言った。
 そして大きく伸びをすると科学の出筆の為にせかせかと動き始めた。
 この十四年というもの平和だった。
 十七歳の時に『ギャラクシア・ボックス』を手に入れてからというもの昴の人生は変わった。
 少しの事で人生は変わる。
 これからの彼らの人生には何が待っているのだろうか。
 それは誰にも分からない。
 ただ運命に身を任せるのも手だと思う。
 あなたならどうしますか?  


                                  END
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