青き真珠

「つまりうちの昴が『ギャラクシア・ボックス』の力とやらを持っているために敵に狙われたというのかね?」
 黒髪の男性がビルの最上階にある部屋で言った。
 彼は星川ほしかわ 誠一せいいち。昴の父親だ。
「ええ。おっしゃる通りです」
 ポラリス姫が頷く。
「馬鹿な……。あの子は一言も……」
「つかぬ事を伺いますが、昴君と話をしたのはいつが最後です?」
「はあ?」
 タイタンの言葉に誠一は面食らった。
部屋には各国の代表たちがいる。誠一はフォーマルハウトたちの要望でここにいる。昴がこの事件にかかわっているからには父親にも事情を話したかったからだ。
「答えて下さい」
「……高校に上がる前が最後だったと思う……」
 誠一は答えた。
「ずいぶん長いこと話していないんですね」
 静かにタイタンが言った。
「ああ。あの子はなぜか私を嫌っている……」
「理由がわからないんですか?」
 タイタンが厳しい顔で言った。この男の所業で昴がどれほど傷ついたことか。男としてはゲスだなと思う。
「たぶん愛人のことだと思う。だがそんなことでなぜ……」
「そんなこと?昴君はあなたに裏切られたと思ったんじゃないんですか?愛人の子を引き取った当時、彼は小学校に上がる前だったと聞きましたよ」
そんなことって言ってしまうから昴に嫌われるのだ。一生嫌われていろとまで思ってしまう。
「昴が話したのか?」
「ええ」
 タイタンは頷いた。
「……昴が……。あの子は私に何も話してくれない……」
 誠一は考え込んでいるようだった。
「さっきも言いましたが彼は裏切られたと感じています。そしてそれに関して反省していないことがそれに拍車をかけているのではないのですか?」
「………」
 誠一が言葉を失う。
「さて話しの続きをしましょう」
 このままじゃらちが明かないとばかりにポラリス姫が先を続ける。
「私達はあなたたちを侵略したいわけではありません。ただ平凡に暮らして欲しいのです」
「その通り。我々は奴らを止めたいだけだ。侵略なんて考えていない」
 フォーマルハウトが頷く。
「根拠は?」
 地球の関係者の一人が不安そうに言った。
「後で協定を結びますよ。それに侵略者たちを止めてくれたら信じますか?」
「……本当に止めてくれるのだな?」
 アステリオンの言葉に恐る恐るとばかりに訊いた。
「必ず。私たちの名誉にかけて」
 その言葉に少しは安心したらしい。
「ではこれからなすべきことを決めましょう。……これ以上被害を拡大しない為にも」
 ポラリス姫がそう言ったときだった。空間がゆがんで人が三人出てきた。
「痛ッ!」
「ぎゃあっ!」
そのうちのふたりが悲鳴を上げる。
「昴さん!?スピカ!?」
 ポラリス姫がぎょっとする。
「ポラリス姫?アステリオンさん?お父さま?おじいさま?」
 スピカは不思議そうにあたりを見回していたがはっと気づくと昴に駆け寄った。
「昴!大丈夫!?」
「ああ。大丈夫。リゲルは?」
「あそこにいるわ」
 スピカが指す方向にはリゲルが今まさに逃げようとしていた。
「待て!」
 スピカが後を追う。
「ポラリス姫、アステリオンさん、フォーマルハウトさん、タイタンさん後でね!」
 そう言ってスピカの後を追って部屋を出て行った。
 最後まで彼は父親に気付くことはなかった。
「……行ってしまいましたね」
 ポラリス姫が呟く。
 昴の後姿を誠一は複雑そうに見つめていたのだった。


「待ちなさい!」
 スピカはリゲルの後をどんどん追って行く。
 やがて行き止まりにたどり着いた。
「もう逃げられないわよ!」
「私は娘を蘇らせる!」
 そう言って体中を光らせた。
 リゲルの身体から大きな球体ができる。
「そんなことあなたの娘は……カリストは望んでいない!彼女は夢で言っていた!お父様を止めてと!」
「ええ!?」
「何!?」
 昴の言葉にスピカとリゲルは驚愕した。
「だからそんな事して彼女をこの世に蘇らせても喜ばない!なあ、そうだろう!」
 昴が叫んだと同時に部屋中を光が満ちた。
 そして後は何も見えなくなった。
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