青き真珠

「あははははっ!」
 リゲルは青い光を放ちながら笑っていた。彼の手に黄色い光りの玉が集まっていく。
「やれ」
 そして通信機で短く命じた。
 地球に爆弾が落とされていく。
「リゲル!」
 スピカがやってくる。
「来たか」
 リゲルは静かにスピカを見つめていた。
「馬鹿なことをやめなさい!」
「もう遅い。今地球は大変なことになっている」
 リゲルに言われてスピカと昴は戦艦にあった窓から外を見た。地球のところどころが光っている。爆弾が落とされているのだ。
「なんてことを……!」
 昴は憤った。自分の愛する星で何万人もの人が死んでいるのだ。
「それでも私はあなたを止める!」
 スピカはかまえた。
「やれやれ……。時間がないのだがね……。相手しろ」
 リゲルが呟くとミラ、プロキオン、アンタレスが出てきた。
「さすがのおまえも苦労するだろう」
 不敵にリゲルが笑う。
「それでもやる」
「俺も手伝うよ。力を貸す」
 昴がそういってスピカの手を握る。するとスピカは五感が鋭くなったように感じた。昴が感覚をつなげているのだ。
「な?」
「うん!」
 スピカは頷いた。彼も一緒に戦ってくれるのだ。勝てる気がする。
「よしっ!やるわよ!」
 スピカはそう言うと腰のベルトから二丁の銃を引き抜いた。
 スピカは後ろに飛んで三人の攻撃をすぐさまかわした。
「はっ!」
 銃を三人に向かってぶっ放す。
 三人はそれをかわした。
「よっと!」
 右と左から炎と水が来る。スピカは上に飛んでかわす。後ろからも氷の攻撃が来たが今度は前方に大幅にジャンプしてかわす。
「やああああっ!」
「はあああっ!」
「ふんんんんっ!」
 そこへ炎、水、氷の矢が襲いかかる。いくつか腕や足をかするが重傷ではない。昴と感覚を共有しているせいか前よりらくらくかわせるようになった。
「スピカ!」
 昴が叫ぶ。彼の身体が青く輝き三人を拘束する。
 そこをすかさずスピカが彼らの腕と足の関節を撃って動けなくする。とどめとばかりに蹴って気絶させた。
「ふん。あれだけ痛い目にあわされながらも殺さなかったか」
 馬鹿にしたようにリゲルが言った。
「私はあなたとは違う。それにいろいろ聞きたいこともあったしね」
 スピカは首を傾げた。
「それより観念しなさい。もう駒はないはずよ」
「それはどうかな?それより地球をどうにかした方がいいのではないのかな?」
「その件なら隊長たちに連絡は取ったわ。彼らならどうにかしてくれるはずだわ」
「なら、私自身が戦うしかないか」
 リゲルがそういって手から光線をぶっ放す。『ギャラクシア・ボックス』の力をコピーして得たものだということが分かる。
「はっ!」
 昴は盾をイメージして攻撃を防いだ。
 そこからスピカは銃を撃った。それもかわされてしまう。
「さて、私を止められるかな……?」
 リゲルとの戦いが始まろうとしていた。


(まじかよ……)
 デネブは冷や汗をかいた。
『地球に爆弾を落とすとなると地球の人たちに我々の存在が感づかれますね……』
 アルタイルに言われなくてもみんなまずい状況だというのは分かっていた。
『今、『ルーチェ』から連絡が入りました。地球の代表者たちがコンタクトを取りたいと』
 カーラが言った。
 『ルーチェ』とは仮の司令部が置いてある戦艦の名前だ。
『気づかれたようですね……』
 コル・カロリが苦々しげに言った。
『あれだけ爆弾を落としていればね……。それに地球の技術も侮れないようですし……』
 シルマが言った。
『プレオネ、意味わかる?』
 カーラの言葉にプレオネは頷いた。
『今の状況で地球側にばれるのはまずいということは分かった。……戦争を仕掛けられても文句は言えない』
『リゲルはそれが狙いなんだろうか……』
 アルビレオの言葉をみんな笑い飛ばせなかった。たしかに多くの魂が必要ならそれも計算に入れているだろう。
『で、どうするんですか?』
 今まで黙っていたカペラが言った。彼女は未熟故に今まで戦闘に集中していたのだ。
『どうするって……』
 デネブが考え込んだときだった。船から通信が入った。
『全員、帰艦。作戦を立てる!』
 それにデネブが反応した。
『全員帰艦!俺に続け!』
 みんなデネブの後に続いた。
 船に帰艦するとフォーマルハウトの司令室にデネブとアルタイルは呼びだされた。
「今、我々は大変なことになっている……」
 フォーマルハウトが重々しく口を開いた。
「リゲルたち『ダークマター』による地球への攻撃ですね」
「うむ。これはオルネラ協定に反することだ。これだけでもリゲルを逮捕する十分な理由になる」
 デネブの言葉にフォーマルハウトは頷いた。
「あと地球側がコンタクトを求めている。我々の存在をかぎつけたらしい。私と父上、ポラリス姫とアステリオンで行ってくる」
「大丈夫ですか?」
 タイタンの言葉に心配そうにデネブが訊いてくる。
「大丈夫だ」
 タイタンは断言した。
「デネブ君、アルタイル君。君たちには爆弾を落としている機体を打ち落としてもらいたい」
「ラジャー!」
「ご命令とあれば」
 二人は敬礼した。
「頼んだぞ」
 フォーマルハウトは頼もしそうな目で二人を見たのだった。
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