青き真珠

その頃スピカは大きなドアの前にいた。
(ここに昴がいる……)
 スピカは武者震いをすると大きなドアを開けた。
 そこには機械に力を吸い取られている昴がいた。
「うわあああああっ!」
「昴!」
 スピカは悲鳴を上げた。
「よく来たわね。スピカ・コルベール。リゲル様の姪」
 エウロパが銃口をスピカに向けながら言った。
「あなたが昴をこんなふうにしたの!?」
 怒りをあらわにしてスピカは言った。
「この子の力を吸い取って私たちはあの子を蘇らせるの」
「え……?」
 スピカは面食らった。
「地球征服が目的じゃないの……?」
 違和感があったがリゲルの目的はそれだとスピカは思っていた。
「いいえ。リゲル様は『ギャラクシア・ボックス』を使って最愛の娘さんを蘇らせるおつもりよ。人を蘇がえらせるには沢山の魂と多くの力が必要なの。リゲル様はその舞台に『青き真珠』こと地球をお選びになった……」
「……なんですって!?」
 地球征服を企めばそれを阻止しようとする人間との間で戦争が起きる。それさえ彼には計算済みだというのか。
 スピカは恐ろしくなった。
 それにあの言葉……。
 娘を蘇らせる。
「まさか、カリストを……!?」
 信じたくなかった。
「その通りよ」
「そんなの無理よ!死者を蘇らせる事は誰にもできないはず!」
「リゲル様はそれを見つけたのよ」
「狂ってるわ!」
 スピカは叫んだ。
「どいつもこいつも……!」
 エウロパはそう言うと銃をぶっ放した。
 スピカはそれをよけると昴の所に行った。そして昴の鎖を断ち切ろうとした。しかし電気が流れてしびれてしまう。
「スピカ、このままだと君まで……」
 昴がスピカを心配する。
「大丈夫よ。あなたのほうが辛いはず……」
 スピカは電気のしびれを気にせずに鎖を引きちぎろうとした。
「スピカ……。俺のことは気にしないで……リゲルを止めるんだ……俺はもう……」
「そんなことできないわ!あなたを放っておくことなんてできない!」
 スピカの目から涙が一粒零れ落ちる。
 痛みをスピカは無視した。昴の方が何百万も痛いはずだ。その瞬間大きな音をたてて鎖が外れた。
「これでもう力は吸収できないはずよ!」
 スピカはエウロパに向かって言った。
 しかしエウロパは笑っている。
「あはははははっ!九六パーセントがコピーできていれば上出来かしら!これでリゲル様に力を渡すことができる!」
 そう言って青いボタンを押した。すると機械が動き出して青い光線が部屋を出て行った。
「このっ!」
 スピカがエウロパを殴った。エウロパは笑いながら気絶した。
「どうしよう……。あの力が完全じゃないけどリゲルに渡ってしまった……」
 スピカは動揺していた。
「大丈夫だ」
 鎖から解放された昴がスピカの手を握る。
「昴……」
 スピカは赤くなった。
「まだ力は使われていない。だから手遅れになる前にリゲルの所に行くんだ」
「うん!」
 スピカは頷いた。
 そうだ。自分にはまだやることがある。
「さあ、行こう!」
 二人は部屋を飛び出して行った。
 手遅れになる前にリゲルを止める為に


その頃デネブたちは戦っていた。
「おらおらおら!」
 水色の光線が戦闘機から出て敵機を落としていく。
「へん!俺たちの敵じゃないぜ!」
 デネブが得意そうに言った。そこへ通信が入ってくる。
『デネブ隊長!』
「スピカか!首尾はどうだ?」
『昴は救出できました』
「それはよかった」
 デネブはほっとした。
『でも……』
「なんだ?」
 嫌な予感がデネブにはした。他のみんなも同じようで口をはさまずに聞いている。
『昴の力がコピーされてリゲルが『ギャラクシア・ボックス』の力を手にしてしまったんです。あと、彼の目的は地球征服じゃなく娘のカリストの蘇生だそうです』
「カリストの蘇生!?奴め何を考えている!?」
『狂気の沙汰ですね……』
 アルタイルが口をはさんでくる。
『ええ。本当に。人一人を蘇らせるには莫大な力と……』
『たくさんの魂ですか?』
 ポルックスが口をはさんでくる。
『ええ。よく知っているわね』
『僕たちの故郷、ヒストリック星では禁じられた科学技術について研究している部門があるので……。その資料を見たことがあるんです』
『ポルックスの言う通りです。資料には人の蘇生についても書かれていました……。人一人を蘇らせるには多くの命が必要なようです……』
『……人の魂なんてどこから調達するんだ?』
 プレオネが不思議そうに言った。
『戦争なようです。資源が枯渇しかかっている星々をけしかけて地球を征服させようとする。そしてそれを止めようとする人たちとの間で戦争が起きる……』
『つまり地球征服を言い出したリゲルはこの状況を予想していたってことか?』
 スピカの言葉を聞いてカノープスが予想した。
『ええ』
 スピカは頷いた。
『すべて謀られていたようですね……』
 アルタイルの言葉にみんな黙り込んだ。
『このことを上に報告するんですか?』
 ドゥーベが訊いた。
「しよう。フォーマルハウト総司令にすべてを報告するんだ」
 デネブがきっぱりと言った。
『分かりました。私たちはリゲルを止めに行ってきます!』
「任せた!」
 デネブはそう言って通信のスイッチを切った。
「本当にリゲルのくそったれ!」
 そう言うと戦闘機を加速させた。この状況はリゲルが止まらない限り続く。だから利用されていると知っても戦うしかないのだ。
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