青き真珠

11.たった一つの願い

「敵、中に侵入しました!」
 その報告にリゲルは顔をあげた。
「来たか……。スピカ」
 ここまで乗り込んでくるとはその男がよほど大事なのか。
「だがもう遅い。わたしの願いはもうすぐかなう」
 リゲルはそう呟いた。
 彼女には止めることなどできない。
 低くリゲルは笑った。
 それと同時に空気が哀しげに揺れた。
 それにリゲルが気づくことはなかった。


「はあああああっ!」
 パンチや銃撃で敵を殲滅していく。
「どいて!」
 すかさずキックを顔面にくらわして敵を気絶させる。
 紅い服を着た戦闘員は湧いて出てくる。それをスピカはやつけていきながら昴の所に向かっていた。
「もう!」
 スピカはそう言いながらパンチをした。
 昴の所までの道のりが遠い気がした。
「昴!昴―――っ!」
 スピカは叫んだ。
 彼の所に一刻も早く行きたかった。
 今度こそこの手で守るために。
 そして手遅れにならないように。
「昴―――っ!」
 その声は昴の元に届いた。
「スピカ……?」
 昴は呟いた。
「元気なお嬢さんね」
 エウロパが呟いた。
「でも、ここまでたどり着けるかしらね……?」
「できるさ」
 昴は断言した。
 ここまでたどり着くという確信があった。それくらいの信頼関係は昴とスピカの間に出来ていた。
「ふ~ん。そうなの。でも力を吸い取る方が先よ。絶対にね」
 エウロパはそう言って笑った。
「あの子は間に合わない」
「いや。彼女は絶対にあんたたちの野望を止める。そういう人だ」
 昴は強い光をその目に宿していた。
「……それくらいの信頼は持っているってわけ?」
 エウロパは首をすくめると機械をいじった。
「うわああああああっ!」
 吸い取る速度が速くなって昴は絶叫した。
(スピカ!)
 昴は心の中でスピカを思った。
「やあああああっ!」
 バキッ、グシャッ!
 とんでもない音をたてて敵が倒れていく。
 腕や足から血を流しながらもスピカは前に進んでいく。
 やがてスピカの前に男女の二人組が立ちふさがった。
「エルナトとアルデバラン……」
 スピカは呟いた。
(早く昴の所に行かなきゃいけないのに……)
 また時間を食ってしまう。
「相手してもらうよ」
「積年の恨みを晴らす時」
 エルナトとアルデバランが構える。
「そこをどきなさいっ!」
 スピカはそう叫ぶと腰から銃を抜いた。今は戦争時だ。人を殺さないとか言っている場合ではない。
 バキューン!
 凄まじい音がして銃弾がエルナトとアルデバランの頬をかすめる。
 エルナトとアルデバランも銃を撃ってくる。スピカはそれを難なくかわすと光線銃でエルナトの肩をアルデバランの足を撃った。
「ぐっ!」
「ぎゃっ!」
 二人が悲鳴を上げてうずくまる。
「他愛もない……」
 スピカはそう呟くと先へと進んだ。今はあの二人はスピカの敵ではなかった。
 それからもスピカは敵に遭遇したが難なくと退けてしまう。
 途中で敵から奪った地図と情報を照らし合わせれば目的地はもうすぐなはずだ。
「よしっ!」
 スピカは気合を入れながら目的地へと向けてかけて行くのだった。
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