青き真珠

「もう~!みんなからかいすぎ!」
 スピカがぷんぷんしながら廊下を歩く。
「でも嫌じゃなかったよ。それにスピカは可愛いし」
 昴の言葉にスピカは真っ赤になる。
本当にこの男は天然だ。
「もう知らないッ!」
 そう言って廊下を走っていってしまう。
 昴は何でそう言ったのか分からずに廊下で呆然としていた。
「本当に嫌ではなかったんだよ……」
 そう呟いて廊下を歩こうとすると三人の人が姿を現した。
「み~つけた。星川 昴」
「もう逃げられないよ」
「観念してください」
 それはミラ、アンタレス、プロキオンの三人だった。
「こんなところまで……」
 昴の頬を冷や汗が伝う。
「あんたの力は凄まじいものだ。その力をリゲル様の役に立ててもらう」
 そう言ってアンタレスが昴を力で拘束する。
「くっ……」
 昴は抵抗する。
「昴!」
 そこへ異変を感じてスピカがやって来た。
「スピカ・コルベール……。お前の男を攫ってやる……」
 ミラが呟く。
「そんなことさせないッ!」
 スピカはそう言って腰から銃を抜く。
 そこへミラの氷とプロキオンの水が襲いかかる。
「スピカ!」
 昴はスピカを助けようと拘束を外すイメージを描いた。
「おっと。力を使えばあの娘は殺す」
 アンタレスが言った。
「殺すだって……?」
「ほら……」
 アンタレスが指す方を見ればスピカが傷だらけで立っていた。二対一だと彼女はあっという間にボロボロにされちゃったようだ。一対一でも危ないのだから当然だが。そこに氷の塊が落とされようとしていた。
「あんたが大人しく従えばあの娘の命は取らない。どうだ?」
 昴は卑怯者!と叫びたかった。
「どうする?」
「大事な子なんでしょう?」
「大人しく従うんだ」
 三人が催促してくる。
 考えたのは一瞬だった。昴は拘束を壊すイメージを取りやめた。
「それでいい」
 アンタレスは満足げに頷いた。
「よしっ!撤収だ」
「帰るよ~」
「リゲル様、ほめてくれるかしら」
「きっとね」
 三人は口々に言いながら瞬間移動をした。昴を連れて
 あとにはボロボロのスピカが残された。
「昴……」
 涙があとからあふれてくる。守れなかった……。
 悔しくて、悔しくて
「なんでよ……。どうしてよ……」
 ぽつりと言葉が出てくる。
「守りたかったのに!」
 スピカはこぶしを打ち付ける。血が出てくるが気にしない。
「どうしてよおおおおおっ!」
 スピカの絶叫がその場に響いた。
29/46ページ
スキ