青き真珠

 薄暗い机と椅子しかない部屋の中に四人の人間がいた。
「あなたの姪、すごく邪魔ね……」
 黒髪をシニヨンにした女性、アダーラが言った。
「そうだな。あれは姉さんにそっくりだ」
「いや。それより祖父の方に似ていると私は思うね」
 五十代の金髪の男性が言った。
「イザール殿、むしろ父親似だと私は思うね」
 初老の男性が笑いながら言った。
「あなたはそう思ったのですな。アケルナル殿。だが、あの頑固なところは母親似だと私は思う」
「それはあなたもでしょう。リゲル殿。姪と敵対しても思いをやり遂げようとするところとかね」
 笑いながらアダーラが言った。
「アダーラ殿のおっしゃる通りですな。ところでハマル殿は?デネボラ殿も……」
 イザールがあたりを見回して二人足りないのに気付いた。
「ハマル殿か……。あいつは優柔不断なところがあるからちょっと……」
「人のえり好みしないアケルナル殿にしては珍しいこと。まあ、私もハマル殿よりデネボラ殿の方が好きですけどね」
「お二人ともハマル殿は仲間ですぞ。……それにしてもハマル殿は遅い。デネボラ殿は会議で遅れると連絡があったのに」
 イザールが時計を見る。時間は午後六時半(地球時間、午前六時半)を指していた。
「ハマル殿は時間にルーズですこと」
 アダーラがため息をついた時だった部屋のドアが開き、二人の人間が入ってきた。気弱そうな赤毛の男性、ハマルと生真面目そうな眼鏡をかけた黒髪の男性、デネボラが入ってきた。
 部屋のメンバーは顔を見合わせると二人を椅子に座らせた。二人が椅子に座ると会議が始まった。
 その様子を机の下からみている生き物がいた。狐とウサギを足して二で割ったような白い生き物はリゲルたちの様子をしばらく見ていたがそのままそこから姿を消したのだった。


 その生き物は姿を消すと豪華なお城の中に姿を現した。
 白い大理石の廊下を進んで行くと重厚なドアの前で立ち止まった。そこにある小さなドアからその生き物は部屋の中に入って行った。
 部屋の中は床一面に紫の絨毯が引いてあり部屋の真ん中に白い天蓋付きベッドが置いてあった。ベッドの中から少女がレースをかき分け姿を現す。年は一五、六歳くらいだろうか。床まで届くかというくらい長い銀髪に紫の瞳、耳はおとぎ話に出てくるエルフのようにとんがっていた。
「イオ!帰ってきたのね!」
 少女は生き物を見ると完成をあげた。
「さあ、おいで……」
 少女にうながされ生き物――イオは胸の中に飛び込んだ。
「いい子ね……」
 少女はイオを抱きしめながらなでる。
「キュウン……」
 イオは鳴くと頬をなめた。
「くすぐったいよ……」
 少女は笑った。
 イオは少女の頬をひとしきりなめると少女の腕から降りた。
「そう……。リゲルはどうしてもスピカと戦うのね……。私もスピカの手伝いをしないといけないわね……」
 少女はそういうとガラスでできた机の上に乗っている手紙を見た。青い封筒の宛名は「ポラリス・コールラ」そして差出人は「フォーマルハウト・コルベール」……スピカの祖父であり『COSMOS(コスモス)』の総司令の名前だ。
「スピカ……。あなたを助けるから……」
 少女――ポラリスは外見に似合わない老いたため息をついた。
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