青き真珠

朝食を食べ終えると昴はフォーマルハウトに呼ばれた。
「ええ!?俺がシェイル星のトップに会うんですか!?」
 昴はびっくりした。
「ああ。君に興味を持ってね。ぜひ会ってくれないか?」
 フォーマルハウトが言った。
「でも……」
 昴は戸惑った。宇宙人(昴から見ればだけど)の中には地球なんて遅れた星とさげすむ人たちもいるという。もしそのトップが宗だったらどうしよう……。
「心配いらないよ」
 昴の心配事を見抜いたようにフォーマルハウトが言った。
「アステリオンは地球を素晴らしい星だって思ってる。君から地球についていろいろ聞きたいようだ」
「詳しいんですね……」
「ああ。私の友人だしね」
 さすが「COSMOS(コスモス)」の司令官だ。一惑星のトップが友人とは……。
「おじいさま。その方にいつ会えばいいんですか?」
 そばにいたスピカが訊いた。
「今日の午後だよ」
 その言葉に二人は固まった。
「もっと早く言ってください!」
 数秒後にスピカの怒鳴り声が聞こえた。
 数十分後
「もう。おじいさまは!」
 ぷりぷりとスピカが怒る。
「ごめんごめん。忘れていたんだよ」
 フォーマルハウトが謝る。
「いつ決まっていたんですか?」
「一昨日かな」
「……昴がこのシェイル星に来て五日が経っているんですよ?もう少し早く言ってくれてもいいじゃないですか……。……おじいさまはいつもそうなんだから……」
 スピカが肩を落とす。毎度のことらしい。
「だから謝っているじゃないか。迎えはタイタンにやらせよう」
「お父さまに?」
 スピカは父親の名が上がってびっくりした。
「あいつなら大丈夫だ」
「まあそうでしょうね……」
 スピカは頷く。父親は組織の幹部のような位置にいるのだ。
「用事はこれだけですか?」
「ああ。だけどスピカだけは残りなさい」
 フォーマルハウトは言った。
「さき行っているね」
 スピカにそう言って昴は部屋を出て行った。
 部屋にはスピカとフォーマルハウトだけになった。
「……ミランダとはどうだ?」
 二人だけになるとフォーマルハウトは言った。
 スピカは首を横に振った。ミランダとは母の名前だ。
「……そうか……」
 何かを察したらしい。
「……ミランダには今回のこと辛いだろうな……」
「そうね……」
「お前は良いのか?」
「別に。あの人と私は信念が違う。それに私はあの人がしようとしていることが許せないの」
 スピカは吐き捨てた。二人だけだからか敬語が取れている。
「確かにあいつがやろうとしていることは許されざることだ。……ただこのことは同じ陣営の者でさえ知らないだろうな……」
「私はやるべきことをやるだけ」
「……身内だからと言って手加減はするな」
「するつもりはないわ」
 身内だからと言って手加減したら命取りになる。そのことはスピカはよく分かっていた。
 前にそれでひどい目にあったのだから……。
「ならいい。……もう行きなさい」
 満足げにフォーマルハウトは言った。
 スピカは踵を返して出て行った。
「スピカ……。あいつに……リゲルに……思いを伝えるんだ……それしか目を覚まさせる方法はないんだ……」
 スピカが出て行った部屋にフォーマルハウトの声が響いた。
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