青き真珠

8.どうしようもないこと

昴はある部屋にいた。壁がピンクでカーテンはピンクでハート模様がついている。レースのついたベッド、白い箪笥。床には熊のぬいぐるみが転がっている。
 それらを見ている内にここは子供部屋だと思った。しかも女の子の。
【こんにちは……】
 目の前に六歳ぐらいの女の子が現れた。長い銀髪に青い瞳の美少女だった。彼女は白いワンピースを着ていた。
「こんにちは。ここはどこだ?」
 昴の言葉に女の子は首を少し傾げると答えた。
【ここは思い出の中。つまりここは十年ぐらい前の過去】
「過去……」
 昴は呟いた。
【助けてほしいの】
苦しそうな顔で少女は言った。
「君を?」
その言葉に少女は首を横に振った。
【助けてほしいのは私じゃないわ。あの人を助けてほしいの。私が死んでから心を壊してそれで私を蘇らそうと……。私は呼びかけているのに全然答えてくれないの……】
「つまり君は――」
【そう。もう亡くなっているの……】
 少女はこの世の人じゃないのだ。
【あなたならあの人に声を伝えてくれるはず……。あの人が狙っている力を持つあなたなら……】
昴はあの人の正体がなんとなくつかめてきたような気がした。
「君は――誰なんだ?」
【私は――】
 そこで夢が途切れた。
 昴はベッドから跳び起きた。
 あたりを見回すと昴に与えられた「COSMOS(コスモス)」の部屋だった。
「あの子はいったい――」
 夢にしてはリアルだった。
 それにしてもあの少女はあの人をどうしてほしいんだろう。昴はあの人に狙われているのに……。
 ただぼんやりと分かるのはあの人が昴の中にある力を狙うのは自分達の住む星のためや地球征服のためだけじゃないということだ。
(彼はどうしてこの力――『ギャラクシア・ボックス』を狙うんだ――?)
 昴の中で謎が増えた瞬間だった。
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