青き真珠

昼になると昴がスーパーで買い物をしたいというのでスピカもついていった。
角を曲がったところでスピカは気配を感じた。
「危ない!」
昴を突き飛ばす。
突き飛ばしたところには氷の塊が突き刺さっていた。
「ミラ……」
スピカはその攻撃をした張本人の名前を呟く。
「さすがスピカ・コルベールね。でも私はあの二人より手ごわいわよ」
昴は声の主を見て驚いた。
「宙に浮いている!?」
「ミラはアルシラ星という超能力を持つ星の住民なの。異能力を持っているのよ……」
スピカが攻撃をよけながら説明する。
「そう。私の異能力は……氷よ!」
そう言って氷の矢を次々とスピカにぶつける。
持ち前の運動神経でスピカは次から次へとかわした。
「このっ!」
スピカがバズーカをミラに当てようとした。
ミラはひらりとかわす。
「戦場以外で誰も殺したくないという心意気は立派だけどね……。それは甘さよ!殺そうと思ってこなきゃ私は殺せないわ!」
ミラは氷の塊をぶつける。
「……っ!」
スピカは当たって悲鳴を上げた。
「せええええい!」
レーザービームを今度は取り出しミラに向かって撃つ。しかしひらりひらりとかわされてしまう。
「やっぱりあの二人と違って強い……!」
スピカはミラの強さを確信した。
それから攻撃をかわし続けスピカは息切れした。自分の攻撃はあまり当たっていない。
「さて……これで終わりにしてあげるわ!」
スピカがつかれてきたのを理解したのかミラはそう言って鋭い氷の礫を当てる。
スピカは地面に転がった。あたりを血が染める。
「スピカ!」
昴は駆け寄った。
「うっ……」
スピカがうめく。
「大丈夫か!?」
「馬鹿……。早く逃げて……」
スピカが言う。
「こんな状態のあんたを放っておけるか!」
昴は叫んだ。
彼女は今にも死にそうに見えたのだ。
「ふん!あっけないわね……。楽にしてあげるわ。あんたそこをどきなさい」
ミラはそう言って今度は氷の矢をぶつけようとしてくる。
「嫌だ!」
昴は叫んだ。
「ああ!?」
「スピカはずっと俺を守ってくれていた……。だから死んでもどかない!」
昴が叫ぶと当時に体が光りを発し始めた。
「……!?」
「……!?」
それに驚いたのはスピカとミラだ。
昴を覆っていた光はミラの氷の矢を粉砕し、ミラを吹き飛ばした。
「きゃああああっ!これが『ギャラクシア・ボックス』の力なの!?」
ミラは悲鳴をあげながら空のかなたへと飛ばされた。
「スピカ……」
昴がスピカに触れるとスピカの怪我は治った。
「昴……」
スピカは起き上がった。
「信じられん……。これが『ギャラクシア・ボックス』の力なのか……?」
そこへ第三者の声がかかった。
「カノープス……」
スピカはその男を知っていた。赤毛に灰色の瞳。間違いなかった。
「手ひどくやられたみたいだな。スピカ」
「知り合いなのか……?」
昴はスピカの様子から敵ではないと判断した。
「ええ。私の上司なの。カノープス・ルイス。お調子者だけど頼りになるわ」
「お調子者は訂正してくれ……」
「本当のことを言っただけよ」
「口だけは達者なんだからな~。ところでスピカをしばらく寝かせたい。寝かせられるところあるか?」
カノープスはスピカの様子に文句いいながら昴に向き直って訊いた。
「あ、ああ……。俺の家なら……」
「よし。そこに案内してくれ」
昴は頷いた。
傷は治ったとはいえあんな大けがを負ったのだ。安静にしておいた方がいいだろう。
「案内するよ。着いてきて」
昴はそう言うとスピカを抱き上げたカノープスを従えて歩き始めた。

「へえ~。良い家だな」
カノープスが昴の家に入った第一声がそれだった。
「はあ……どうも……」
「うん。良い家だ」
「そんなことより早くおろしてくれない?」
 部屋をじろじろとみるカノープスにしびれを切らしたのかスピカが言った。
「おお。すまんすまん」
 あわててスピカをおろす。
「服、血だらけだから着替えてくるわ」
 スピカはそう言うと部屋を出て行った。
 あとにはカノープスと昴だけが残された。
 カノープスがじろじろと昴を見てくるので居心地が悪くなってしまった。
「お前はどうやってあの力を発したんだ?いや、お前がミラに啖呵を切ったところから見ていたんだ。だからどうやってあの力を発したのか不思議に思ってな……」
「ただ、スピカを守りたいって思ったんだ……。彼女を死なせたくない。あのときはそれしか考えられなくて……」
「そうか……そうなのか……。守りたい。その思いが重要なんだな……」
 カノープスは感心したように言った。
「カノープスさんはスピカの上司なんですね」
「カノープスでいいよ。ああ。そうだ」
「スピカは「COSMOS(コスモス)」ではどうなんです?」
「あの子は優秀だ。偉大なる祖父に負けないようにと頑張っている」
「偉大なる祖父……?」
昴は首を傾げた。
「あいつは何も話していないんだな。あいつの祖父、アルクトゥルスは「COSMOS(コスモス)」の創立者なんだ」
「創立者……」
「ああ。その分期待もやっかみも半端なかった」
「大変だったんでしょうね……」
 幼いころから財閥の跡継ぎとして期待されて育った昴にはその気持ちがわかるはずだ。まあ父親への尊敬なんて小学校で捨てているが。
「お待たせ」
そこへスピカが着替えて出てきた。ジーンズに短パンと動きやすい格好だ。
「よし。スピカも戻ってきたことだし今後の計画を話そう」
「計画……?」
スピカは首を傾げて昴と顔を見合わせた。
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