青き真珠

その頃、アルデバランとエルナトはリゲルに報告をしていた。
「全く。何度もやられおって」
リゲルは憤っているようだった。
「はあ、申し訳ありません。もう少しだったのですが……」
アルデバランが申し訳なさそうに言った。実際にあと少しだったのだ。あそこでスピカが乱入してこなければ。
「夏が終わるころには各軍隊が地球にやってくる。その前に「ギャラクシア・ボックス」を手に入れたいというのに……!」
「ではもう少し頑張ってみます」
エルナトが言った。
「ぜひ頑張りたまえ。ただお前たちだけだと心元ないからミラをつけよう」
「ミラですか……。たしかに彼女がいれば心強いですね」
「だろう?お前たちは彼女の指示にこれから従うように」
エルナトの言葉にリゲルは大きく頷くと言った。
「イエス・サー!」
「了解!」
二人は敬礼すると通話を切った。
「ベテルギウス。ミラを呼ぶように」
「分かりました」
ベテルギウスは深々と頷くと部屋を退室した。
「おまえはどこまで私の邪魔をするんだ?スピカ……。本当に姉さんによく似ている……」
そう言って机に置いてある写真盾を手にした。
そこにはリゲルと同じ黒髪に青い瞳の女性と金髪の少女が映っていた。少女は母親と同じ瞳を持っていた。
「だが、私は容赦はせん。たとえ身内だとしても……!」
そう言ってリゲルは写真盾を置いて立ち上がった。
部屋の中を歩き回った。
「さあ、おまえはどうする?スピカ」
部屋にリゲルの声が響いた。


「八月の終わりに一部の惑星の軍隊が地球へやってくる!?」
スピカはその報告をカノープスから受けて驚いた。
しかし言ってから声が大きすぎたと思ったらしく慌てて口を塞いだ。
時刻は真夜中。昴はとっくの昔に寝ていた。
『宇宙連合に行って確認した。間違いない』
カノープスは冷静に言った。
「でもなんでそんなの宇宙連合が許可したの?」
『表向きは各惑星の軍事演習ってなっている。太陽系はいい軍事演習の場所だと言ってな。だがそんなの嘘八百さ。絶対に地球を征服するつもりだ』
「それはそうよ……」
スピカは呟いた。
あのリゲルならそれくらいのこと言いそうだ。昔から目的のために手段を選ばない人だった。
「で、そちらの動きはどうなっているの?」
『デネブとアルタイルが動いている』
「デネブ・クロース大佐とアルタイル・マクス少佐が?」
『ああ。ほかにもいくつかスポンサーに頼み込んでいる。あとポラリス姫が動きだした』
「ポラリス姫?あのコールラ星の?」
『そうだ』
「なら少しは安心ね。私はどうすればいいかしら?」
スピカはポラリス姫が動くと聞いて少し安心した。
『このまま昴とやらを守れ。駄目だと思ったら昴を連れてこっちにこい』
「昴をこっちへ!?」
『ああ。何もかも話してあるんだろう。ならお前で護りきれないと判断したらこちらに来てもらった方が安全だろう』
「それはそうだけど……」
それでも不安があった。昴はなれない宇宙で不安になったりしないのだろうか。
『お前らしくないな。まあその時の状況次第さ。うじうじすんな!』
「そうね。その時は頼むわね」
『おう!』
元気のいいカノープスの声を最後にスピカは通話を切った。
スピカは通話を切ると昴の部屋に行った。
そこでは昴はぐっすりと眠っていた。
ベッドから毛布が落ちていた。
スピカは苦笑すると毛布を掛けてあげた。
そして部屋を出て行ったのだった。
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