「うわああああああっ！」
美結花は叫び声で目を覚ました。
「またか……」
叫び声の主は従兄の夏目貴志。ニャンコ先生のせいで夏目は叫び声をあげて目を覚ます。その声で美結花も目を覚ましてしまうのだ。目覚まし時計代わりになっているとはいえちょっと迷惑だ。
「あのバカニャンコ……。一回殴ってやろうか……」
寝ぼけて夏目を食おうとするニャンコ先生には一回じゃなくて十回くらい殴ってやりたい。いい公害だ。
「斑もよくやるわ……。あのパンチは脅威だというのに……」
佐貝も先生には迷惑を掛けられているのかぶつぶつと文句を言っている。
「貴志君～。美結花ちゃん。ご飯よ～」
塔子の呼ぶ声がする。
「はーい！」
返事をして下に下りていく。
「今日は西瓜を買っておくから楽しみにしててね」
「もうそんな季節ですか」
「季節が巡るのは早いですね～」
二人はそんな感想を漏らす。もう西瓜の季節になったのだ。
「そう。蛍の季節」
塔子が言った。
「蛍か、見たことないですね。一度見てみたい」
「私も見てみたいです」
二人は蛍を見たことがなかった。佐貝によると蛍を見ながらのお酒はとてもいいのだとか
「あら、ぜひ見せてあげたいけど……。最近はこの辺ほとんど見かけなくなっちゃったのよ。水が汚れてしまったのかしら」
「友人に穴場を聞いて来ます。沢山いたら捕ってきますよ」
「私も聞いて来ます」
彩と小枝なら知っているかもしれない。昔からここに住んでいるようだから。
「ふふ。ありがとう。でもそっとしておかなくちゃ。蛍二十日に蝉三日といってね、盛りの短い事のたとえでもあるのよ」
（短い命か……。妖から見れば人もそうなんだろうな……）