蕾は黒に見守られ花開く
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霧が濃く立ち込める、魔界第八区セクターエル。
今宵の任務地は、高台に佇む豪奢な邸宅。
そこに住むのは、名門“ヴィタク家”の一人娘――ティナ・ヴィタク。
「政治的に邪魔だ。事故に見せかけて消してくれ」
依頼は単純だった。
少女は、たまたま生まれた家が“間違っていた”だけ。
ノアは、何も感じないふりをして、門を越えた。
***
ティナは14歳。ノアと同じ年頃だった。
夜のバルコニーで星を見上げる姿は、どこか儚げで。
「……貴女、誰? 使用人じゃないわよね?」
「違う。……少し、話があって」
振り返ったティナの瞳は、まっすぐだった。
この娘もまた、自分の立場を理解している――そんな気配があった。
「……そう。あなた、私を“始末”しに来たのね?」
答えない。ただ、足を踏み出す。
ティナは微笑んだ。
「だったらお願い。苦しまないようにして。私は…生きるのに、疲れちゃったから」
次の瞬間、ノアの手が動く
だが。
「そこまでだ、ノア!!!」
空気が裂け、雷鳴のような怒声と共に、風圧が吹き抜けた。
ノアの手首を阻むように、炎の壁が弾ける。
「……カルエゴ」
「こんな真似、貴様がするはずがない!!」
魔力をまとったカルエゴが、真正面から迫る。
彼の目には、痛みと怒りと――希望がまだ、残っていた。
激突した二人の魔力が、屋敷のバルコニーを吹き飛ばす。
ノアは躊躇いなく踏み込み、鋭く、鋭く、刃のように突く。
カルエゴは全身でそれを防ぎながら、隙を見てカウンターを狙う。
「貴様、どこまで堕ちる気だ!」
「堕ちたんじゃない。……私は、“昇った”のよ」
飛び交う魔力の波。夜空が軋む。
魔法陣が重なり、空間そのものがねじれる。
カルエゴは、懐から符を取り出し、封印術を発動
だが、すでに遅かった。
ノアの一撃が、その防御を貫いた。
「ッ……!」
膝をつくカルエゴの肩に、冷たい刃先が触れる。
動けば、終わる。その緊張の中でノアが言った。
「……これでもまだ、私が“間違ってる”と思う?」
カルエゴは、歯を食いしばったまま答えられない。
ノアは、ポケットから小さなペンダントを取り出した。
かつて、カルエゴが彼女に託したもの。
「これは……もう、返すね」
手のひらに乗せられたそれは、まるで命を失ったように、光を失っていた。
「私はもう、生まれ変わったの」
冷たく、静かな声。
その目に、涙も、迷いも、もうなかった。
ノアは背を向け、静かに夜の霧へと消えていった。
その手には血も汚れもなかったが――彼女の足跡は、深く、重く、痛かった。
バルコニーに残されたペンダントだけが、夜風に揺れていた。