蕾は黒に見守られ花開く
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静寂な夜の帳が落ちる中、キリヲに導かれるまま歩いていた。目的地を聞かされることはなく、ただ一歩、また一歩と、過去の亡霊に誘われるかのように足を進める。リリィが人質に取られるかもしれないそれだけが、彼女を動かす理由だった。
たどり着いたのは、かつてノアが火を放った組織「クロム・ナイフ」の跡地だった。
あの時、確かに全て燃やし尽くしたはずの廃墟。けれど、キリヲが無造作に床の一角を持ち上げると、まるで悪魔の口が開いたかのように、地下へと続く黒い階段が現れた。
「まさか、こんな……」
その先に何があるのか、すでに予感があった。
逃げ場のない過去それが牙を剥く音が、確かに聞こえた。
地下へと続く階段は長く、どこまでも重く沈んだ空気が満ちていた。足音すら吸い込まれるようなその空間の中、扉を開いた瞬間、ノアは目は見開いた
そこには、変わらず子供たちが並んでいた。
無表情で、感情を剥奪された顔。かつての自分のように、ただ命令を待つだけの「兵器」たち。かつて壊したはずの地獄が、まだ息づいていた。
「……冗談でしょ……」
口の中が乾いて、喉の奥から吐き気がこみ上げた。
さらに奥へ進むと、重厚な扉の奥に待っていたのはかつて毒で葬ったはずの男、「ボス」だった。
彼は、何事もなかったかのようにそこに立っていた。
「久しぶりだな、お前は……帰る場所を忘れてしまったようだな」
「……帰る場所?ふざけないで」
「お前の手で組織は壊された。だが、すべては終わっていなかった。我々は“彼”のおかげで蘇ったのだよ」
その言葉に、ノアの視線がキリヲへと向く。にやりと笑った彼は、ポケットから何かを取り出した。それはリリィの髪飾りだった。
「リリィちゃん、やっけ?あの子がどうなってもえぇん?」
その一言に、思考が凍りついた。
心臓が跳ね、背筋が冷たくなる。罠だと分かっていたはずなのに、リリィが囚われているかもしれないという恐怖が、ノアを縛る。
「……最低」
「誉め言葉やで」
仕方なく沈黙で承諾を示した時、ボスが一人の男を呼び入れた。
すっと現れた男は、ノアとは年齢かけ離れた纏う気配は異質だった。
「紹介しよう。レオナルド・ヴィンツェル卿。我々の新たな“支援者”だ。彼の支援なくして、組織の再建はあり得なかった」
「はじめまして、ノア嬢。君の名は以前から耳にしていた。君が手を汚し、世界から目を背けてきた物語も……とても、興味深い」
男の瞳は異様な光をたたえていた。獲物を見つけた捕食者のように、ひとつひとつの言葉に熱を込めてくる。
「僕はずっと、君のような存在を探していた。……理想的な婚約者だ」
「……は?」
思わず息を飲んだ。レオナルドは一歩、また一歩と近づいてくる。
「この地獄に花を咲かせたいと思わないかい?君が再びこの“家”に戻ってくれるのなら、それは叶う」
彼の言葉には、歪んだ愛と執着が滲んでいた。
逃げ出したはずの地獄。燃やし尽くしたと思っていた過去。
けれど、業火の中でもなお消えなかった悪夢が、再びノアを呑み込もうとしていた。
そして、彼女の心の奥底に、再び殺意と絶望が渦巻いていく。