花は新たに力を得た
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訓練が続いて数日。
ノアは疲労を感じながらも、一歩ずつ前進していた。
バラムもカルエゴも、日々の成長を見守っている。
かつては暴走の象徴だった影は
今や彼女自身の“武器”へと変わろうとしていた。
① ノア単体での影移動
「よし、今日は5メートルの距離。障害物もある。成功すれば、初の応用範囲突破だ」
影から影へ。視線の先にある柱の陰。
その間には、いくつかの小さな石や凹凸がある。
(影の流れ……入口と出口を繋ぐイメージ……)
静かに息を吐き、目を閉じた。
「行きます」
ズッ……パッ。
刹那、彼女の姿は滑るように消え、柱の裏から現れた。
「成功だ」
カルエゴの低く短い声。
ノアが振り返ると、バラムがふっと笑った。
「綺麗に移動出来たね。滑らかだったよ」
ノアは胸の内で、小さく拳を握った。
(やった……!)
② 影の中での情報探知
ノアは再び影へと沈んだ。
視界は無に近く、音も光も吸収される世界。
だが、彼女の中に“慣れ”が芽生えていた。
(揺れ……音の振動……)
影を通して、かすかな“動き”を読み取る。
バラムのローブが翻る音。カルエゴが足を組み替えた振動。
以前は誤認していたそれが、今は正しく“情報”として届いてくる。
「ノア。気配はどうだ?」
「……右から、カルエゴ先生。左奥で、バラム先生が立ち上がった」
「正解だ」
影から現れたノアの表情には、自信の色が浮かんでいた。
③ ノア+1名での移動
今度はバラムを連れての影移動。距離は10メートル。
重心のずれ、魔力量の分配など、以前は失敗を重ねた難関。
「いけるね?」
「はい。集中します」
ノアはバラムの腕に触れ、影の流れを整える。
(私の魔力の中に、先生の存在を“通す”。押し流すんじゃなく、一緒に運ぶように)
パシュッ!
風がひと吹き。
影の出口から二人の姿が滑り出す。
一切のブレもなく、姿勢も崩さず。
「……完璧だね」
「やった……!」
ノアは笑った。
それは心からの喜びの笑顔だった。
④ ノア抜きの他者2人を影移動させる
そして最後の課題。
ノアはその場に残り、遠くの影を見据える。
「君が残って、僕とカルエゴくんを移動させて」
「はい……行きます!」
ノアは両手を床に置き、静かに影を伸ばす。
(意識を二人に伸ばして……影を“通路”に変える)
二人の足元の影が揺れ、黒い波紋が広がる。
ズウウン。
一瞬、空間が軋むような感覚。
そして次の瞬間、20メートル先の影からカルエゴとバラムが静かに現れた。
ピタリと正確な位置。姿勢の乱れも、遅れもない。
「やった……!」
その場にへたり込むと、カルエゴが腕を組んで言った。
「必要最低限の魔力量で成功。方向も誤差なしだ」
「えっ、ほんとに……?」
「認める。今のは合格点だ」
「……!」
ノアの頬が綻ぶ。
バラムが肩を叩きながら言った。
「君の影は、もう暴走の道具じゃない。立派な“技術”だよ」
その言葉を、心の底から噛みしめた。
(私は……できる)
その胸の奥で、かつて恐怖だった《黒翳》が——
今は確かな自信に変わっていた。