花は新たに力を得た
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まぶたの裏に、微かな光を感じた。
ノアはゆっくりと目を開ける。
見慣れた天井カーテン越しに射すやわらかな陽光
微かに薬品の匂いが漂う。
「……保健室?」
小さく呟いた声に、すぐさま反応があった。
「ノア!!」
ベッドの脇から立ち上がったのはアスモデウス。その後ろから、少し気まずそうな顔をしたサブロも現れた。
「…私、何を……?」
「お主、悪周期になって暴走したんだよ。バラム先生が止めてくれなきゃ、どうなってたか……」
サブロの言葉に、ノアの表情が凍る。
「ごめん。私、誰かを傷つけたり…してない?」
アスモデウスはすぐに首を横に振る。
「大丈夫。止めようとした俺たちを攻撃したけど、それはお前が“敵”だと錯覚してただけだ。……誰も、恨んでなんかいないよ」
「ノア、あんな状態でも俺たちの声に反応したんだ。だから謝るな。むしろ、ちゃんと戻ってきたことを誇れ」
唇をかすかに噛んでから、小さくうなずいた。
そこに、バラムが現れる。
彼は、ノアの傍に立ち、真っ直ぐな瞳で告げた。
「ノアちゃん。君の影の力……おそらくそれは、家系能力のひとつだと思う」
「家系……能力?」
目を瞬かせると、バラムはゆっくり頷いた。
「あの影の性質、そして魔力の流れ……一般的な悪周期では説明がつかない。君はまだ完全に覚えていないかもしれないが、きっとそれは“受け継いだ力”だ。僕が調べてみる。……少し、時間をくれないか」
「……はい。お願いします」
バラムが微笑を返すと、ノアも静かに頭を下げた。
***
それから、バラムの調査を待ちながら、ノアは「悪周期に呑まれない」ための訓練に励んだ。
最初はほんの数秒で意識が飛び、影に身体を奪われてしまった。
だが、アスモデウスやバラムの支えの中で
少しずつ“自分”を保つ術を掴んでいく。
「深呼吸……イメージを切らさない……焦らない……!」
訓練場の片隅で、汗を滲ませながら繰り返す。
影が足元から滲み出すたび、自分の存在を意識に叩き込む。
最初はほんの5秒。次に10秒。15秒……。
そしてある日。
薬の影響で瞳が暗転し、影が空気を裂く中。
「ノアっ!!」
アスモデウスの叫びが響く。
「戻ってこい!!!」
その言葉が、ノアの脳内に響き渡った瞬間——
ぱんっと、影が霧のように霧散した。
膝をついて息を切らすノアが、はっきりと彼を見て言った。
「……戻って……きた」
アスモデウスが目を見開き、サブロが口元をほころばせる。
バラムは、腕を組みながら穏やかに頷いた。
「……よくやったね、ノアちゃ」
彼女の影は、確かにまだ暴れる。
けれど——
もう、彼女を飲み込むことはできない。
闇の中から、自らの意思で帰ってこれるようになったノアの姿は、以前よりもずっと強く、そしてしなやかだった。
——次は、“その力”の正体を知る時だ。