花は新たに力を得た
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二週間。
それは、挑み続け、敗れ続けた時間だった。
幾度攻撃を仕掛けても、バラムの前ではすべて無に帰す。三人の息が合わず、単発の力では到底届かなかった。
だが、この日――。
訓練場の空気が変わった。
「始めるよ」
バラムの声が響くと同時に、周囲の空気が緊張に包まれる。
三人は無言で頷き合い、それぞれの立ち位置へと散った。
アスモデウスが高らかに詠唱し、魔力を解き放つ。
「爆ぜろ!」
左右に広がる巨大な炎の翼が咆哮と共に展開し、爆音と熱風が訓練場を満たした。
その中心へとサブロが突っ込む。
爆炎の中を躊躇なく進み、牙のように鋭く魔力を纏った拳を構える。
「火を喰らって、獣は目覚めるッ!」
正面からの突撃――だがそれは囮。
サブロの拳を見た瞬間、バラムは当然のように躱す。
「見切ってるよ」
軽やかに後ろへ跳び、空中で身をひねるバラム。
だが、次の瞬間――その背後に音もなく迫る影。
「そこ」
ノアだ。
爆炎と突進の死角を突き、地を這うように滑り込んでいた。
純粋な脚力と気配の抑制、地形の把握、仲間との連携――そのすべてを駆使しての奇襲。
驚愕の表情を浮かべる間もなく、ノアの手刀がバラムの脇腹を掠める。
「……っ」
バラムの瞳が細められる。そこへ――
「今っ!アズくんッ!」
ノアの声と同時に、アスモデウスが再び両手を掲げた。
二撃目の炎が広がる。真上から降り注ぐそれを、バラムが空中で魔力の盾で受け止めようとした、その刹那――
「オラァッ!!」
サブロの拳が正面から、ガードの下から潜り込み、胴を貫くような勢いで撃ち込まれる。
そして――
「せぇっのッ!!」
三人のタイミングが完全に重なる。
ノアの蹴りが腰を撃ち、サブロの拳が鳩尾に食い込み、アスモデウスの炎を突破し右肩を拳を当てる
「ぐっ――!」
バラムが軽く吹き飛ばされた。
背中から地面へと転がる彼を見て、三人は息を詰めて立ち尽くす。
…数秒後。
「……いい連携だった」
起き上がり、服を払ったバラムは、いつもの微笑みで言った。
「三人とも、合格だよ」
「やった……!」
ノアが自然と笑う。汗だくで、肩で息をしながらも、その顔は明るかった。
サブロは吠えるように両手を突き上げ、アスモデウスは静かに拳を握って頷いた。
「個々の力じゃ届かない。でも、合わせれば…届くんだな」
アスモデウスはそう呟き、仲間二人の顔を見た。
「ありがと、二人とも。…一人じゃ、無理だった」
そして彼らの視線の先、微笑むバラムは心の中で呟く。
(よく、ここまで来たね。三人とも)
それは確かな成長の証。
三人が初めて、“力”ではなく“連携”でつかみ取った、一撃だった。