賑やかな音に蕾は揺れる
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ウォルターパークの中を歩きながら、チームカルエゴは他のチームからのグループチャットを見ていた。
「チームバラム、スイーツ迷宮でスライムケーキ作ってるって!」
「チームオペラ、空飛ぶ観覧車乗ってるー!」
次々に届く楽しげな写真や動画。どれも楽しさが溢れていて、笑顔がまぶしい。
「……いいなぁ……」
ジャズが思わず呟いた。
リードも口を尖らせてスマホを覗き込み、ゴエモンは「我らが……地獄……」と呟いて項垂れている。
そして、ふと横を見ると――。
カルエゴが、猫耳カチューシャをつけ、片手に風船、もう片手にはドリンクを持たされているという、“この世で最も不機嫌そうな引率”をしていた。
「せ、先生!せめて一枚、写真撮りましょうよ!こう……笑顔で!」
「……嫌だ」
「頼みますって!記念に!」
渋々写真に収まったカルエゴだが、案の定、笑顔の「え」の字もない表情でカメラを睨んでいた。
ジャズはスマホを見ながら言った。
「いや、これ全然楽しそうに見えないっス……」
「楽しんでないからな」
ぶっきらぼうな声とともに、カルエゴはドリンクを一口啜る。
そして低く一言。
「……引率が終わったら覚えておけよ」
震えるジャズとリード。だが、そのとき――。
「カルエゴ、かわいいね」
隣にいたノアが、ふわっと笑いながらそう言った。
カルエゴの動きが止まる。
ドリンクを口に運ぼうとしていた手も、風船を持った手も、ピクリとも動かない。
「……可愛い、だと……?」
まるで呪文のようにその言葉を繰り返すカルエゴに、ノアはこくんと頷いた。
「うん。風船も似合ってるし……耳も、すごくかわいい」
困惑とも、怒りともつかない表情のまま、カルエゴは彼女を見下ろす。
だが、ノアの目はまっすぐに彼を見ていて――その笑顔があまりに無垢で、どこか眩しかった。
「……」
言葉を失ったカルエゴは、結局それ以上何も言わなかった。
ただほんの少し、目元の力が抜けた気がした。
――その直後。
「うわっ、ちょ、やめてくださいよ!」
前方でリードが揉めていた。地元の不良風の悪魔たちに絡まれ、どうやらカツアゲをされかけているらしい。
「おいおい、なにしてんスか〜?遊園地だよ?財布くらい出していきなって」
「ちょっとだけ、ちょーだいな♪」
周囲がざわつく中、リードはカルエゴに助けを求める視線を送る。
だが――
「……あいにくだが、今、両手がふさがっているのでな」
風船とドリンクを手に持ったまま、カルエゴはニヤリと口元だけで笑った。
「悪いが、自力でなんとかしろ」
目が笑っていない。むしろ、じわじわとリードたちへの“罰”を期待しているような雰囲気すらある。
仕方なく、リードたちは不良たちと射的勝負で決着をつけることに。
撃って、外して、罵られて、勝って、最後には仲良くなって写真まで撮っていた。
「……何やってんだあいつら」
そう呟きながらも、カルエゴは視線だけでしっかり生徒たちを追っていた。
ノアは、カルエゴの隣を一歩も離れずにいた。
不良たちの派手な笑い声と、リードの奇声が響く中、ふと横を見る。
カルエゴは、風船とドリンクを持たされたままじっとその様子を見つめていた。
眉間にうっすらと皺が寄っているが、それでも逃げ出すでもなく、その場にしっかりと立っている。
「カルエゴ、さっきの、かっこよかった」
ぽつりと言った。
「……どこがだ」
カルエゴは目を細めて返すが、怒っているというより、照れを隠しているようだった。
「“あいにくだが両手がふさがっているのでな”って。カルエゴっぽくて……ふふっ」
「からかってるのか」
「ううん。ほんとに、かっこよかったんだよ?」
無邪気に笑うと、カルエゴの首にかかっているポップコーンをゆっくりと食べる
ふわりと柔らかな香りが、ふと彼の鼻先をかすめる。
「……お前、そういうの、無自覚でやってるだろ」
ぼそっと低く呟くカルエゴの言葉に、ノアはきょとんとする。
「え?なにが?」
「……なんでもない」
視線を逸らしたカルエゴは、やけにドリンクのストローに集中しているふりをした。
だが、その耳がほんのり赤く染まっているのを、ノアは見逃さなかった。
「……カルエゴ、耳赤いよ?」
「気のせいだ」
「……あ、動いた。やっぱり赤くなってる」
「…………見るな」
そう言いながら、カルエゴはそっぽを向いたが――その口元は、確かに少しだけ、緩んでいた。
向こうの方でバンッという銃声が鳴り、リードが「当たったー!!」と叫んでいた。
だが、ノアにはまるでそれが別世界の出来事のように思えた。
だって、今はー
目の前の、ちょっと照れたカルエゴしか見えていなかったから
その後、カムイが地図を見ながら言った。
「おっ、なんかここ穴場っぽいっスよ!“カララギ通り”……行ってみましょう!」
その言葉に、カルエゴの目が鋭くなった。
「やめておけ。そこは……元々このパークが悪周期の悪魔たちのストレス発散用に設計された時代の名残だ」
真剣な口調に、チームの面々が固まる。
「悪道が残っている。羽をもがれたくなければ、絶対に近づくな」
「わ、わかりましたよ、先生……けど……」
ジャズがカルエゴの頭にある猫耳を見て言ってしまった。
「その……頭の花が気になって、全然怖くな……」
「言い切る前に掴まれてるぅッ!!」
カルエゴの手が風のように動き、ジャズとリードの頭をゴキッと押さえつける。
「お前たちは今日という日を一生忘れないだろうな……」
ギリギリと締められるジャズとリード。だがノアはその横で、相変わらずほわっとした顔でカルエゴを見つめていた。