賑やかな音に蕾は揺れる
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ウォルターパークの巨大なゲートをくぐると、そこには魔界一賑やかで派手な光景が広がっていた。
眩い光の塔、魔獣モチーフのジェットコースター、宙を飛ぶ気球や、空から降ってくる紙吹雪。音楽が鳴り響き、まさに“遊びの街”の名にふさわしい場所だった。
クラスメイトたちは大はしゃぎで地図を開き、それぞれが行きたいアトラクションを指さして、勢いよく叫び始めた。
「俺はアレ!絶叫魔竜コースター!」
「血みどろプール行きたい!」
「スイーツ迷宮も捨てがたいー!」
「ショッピングゾーンも気になる!」
一斉に好き勝手に動き出そうとした瞬間、**「待て」**という重みのある声が響いた。
振り返ると、カルエゴ、バラム、オペラの三人の教師陣がじとっとした目で見ていた。
「無計画に散って、迷子でも出したらどうするつもりだ。ここは広大だぞ」
「生徒全員を把握するためにも、三人の教員で三チームに分かれる」
「それぞれ、私たちが監督する」
厳格な提案に生徒たちの動きがピタリと止まる。
するとクララがひらめいたように声を上げた。
「じゃあさ、勝負しよう! 一番楽しんだチームが勝ちっ!!」
おおーっと湧き上がるアブノーマルクラス。
こうして三つのチームにくじ引きで分かれることになった。
⸻
■ チームバラム
サブロ、入間、アズくん、アガレス
■ チームオペラ
エリザベッタ、アメリ、ケロリ、クララ
■ チームカルエゴ
ゴエモン、ジャズ、リード、カムイ、ノア
チーム分けが終わり、にぎやかに散っていく他のグループとは対照的に、カルエゴチームはどこか不穏な空気をまとっていた。
「うっわ、最悪だ……」
「なぜよりにもよってカルエゴ先生と……」
「命が何個あっても足りないぞ……」
そんな声がヒソヒソと聞こえてきても、ノアはカルエゴの近くに寄り添ったまま静かに笑っていた。
――だって、私は一緒にいられるだけで、嬉しいから。
カルエゴはといえば、相変わらず仏頂面で周囲を一瞥していたが、ちらりとノアを視界の端に入れると、その表情がほんの一瞬だけ柔らいだ。
「……なんだ、その顔は」
「えっ!? わ、私…何かした……?」
「別に。……楽しそうにしているなと思っただけだ」
「えへへ……だって、カルエゴと一緒に来れるなんて、嬉しくて」
「……阿呆め。こんな浮かれた場所で気を緩めてどうする」
そう口では言いながらも、カルエゴはノアの手元にあったウォルターパークのパンフレットをさっと取ると、日差しを遮るようにそれをノアの頭上に翳した。
「眩しいだろう。少しここで休め。……日陰でな」
近くのパラソル付きのベンチに導かれ、2人は腰を下ろす。
鮮やかな色彩に包まれた遊園地の喧騒から少しだけ離れたその場所は、まるで2人だけの秘密の空間のようだった。
ノアはドキドキしながらも隣に座ったカルエゴをちらりと見る。
「カルエゴ、今日は……護衛なのに…私、つい楽しんじゃって……」
「別に構わん」
カルエゴはふっと息をつき、日傘の代わりにしていたパンフレットを返す。
「お前が浮かれて転んだりでもしたら、面倒だからな。……あらかじめ止めるほうが手間がかからん」
「やっぱり、心配してくれるの?」
「していない。……ただの合理的判断だ」
少し赤みがさしたその頬に、そっと微笑んだ。
「ふふ、ありがとう」
「……勝手にしろ」
そう言いながらも、カルエゴは視線をそらし、どこか落ち着かない様子だった。
ノアの隣に座るこの瞬間が、思った以上に心地よく、そして気恥ずかしい。
「……なにか食べたいものはあるのか?」
「うーん……クレープとか、食べてみたい」
「ふむ」
カルエゴは立ち上がると、なぜか無言でノアを見下ろした。
「……立て」
「え!? 一緒に……!?」
「行くぞ。時間が無駄だ」
それは、明らかにノアのための提案だった。
クレープ屋の列に並ぶカルエゴの背を、ふわふわした心で見つめ続けていた。
まるで、夢の中で手を引かれているような――そんな、甘い時間だった。