賑やかな音に蕾は揺れる
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週末日。
いつものようにリリィとゆったりとした時間を過ごしていた。授業のない朝は穏やかで、いつもより少し長く寝てしまったのもあって、リリィの部屋で一緒にハーブティーを飲みながら、窓から魔界の空を眺めていた。
「ねぇノアちゃん、週末日って、何か予定あるの?」
そんな風に聞かれたところだった。
「ん…特には、リリィと一緒にいるつもりだったけど」
そう答えたそのとき。扉がドンッ!と音を立てて開いた。
「ノアち!!」
「……クララ?」
クララが満面の笑みで飛び込んできて、ノアの手をぎゅっと掴む。
「一緒に行こ! 入間ちのお家ー!」
「い、入間くんの……お家!?」
思わず目を見開いてしまった。
断る理由なんてなかった。というより、行ってみたかった。
「う、うん……!」
そうして、クララに引っ張られながらアズくんと合流し、入間くんの家へ向かった。
「へぇ〜! ここが入間ちの部屋かぁ〜!」
「清潔で整ってますね……!」
部屋に入った瞬間、クララとアズくんがワクワクした声をあげる。
ノアはというと、緊張で心臓が跳ねていた。
――な、なんか変な感じに思われてないかな。座り方とか、視線とか、変じゃないかな。
落ち着かない心を抑えながらも、こっそり周囲を見渡す。
そんなノアの様子には気づかず、アズくんが元気よく声を上げた。
「入間様! 我々とウォルターパークに行きましょう!!」
「えっ……ウォルターパーク……!」
思わず反応してしまった。名前は知ってる。魔界の遊園地、最高に楽しい場所。テレビや本では見たことがあるけど、実際に行ったことなんてなくて――
「入間ちもノアちも興味津々だもんねーっ! だから私、みんなも呼んじゃった☆」
「え……みんな?」
クララの言葉と同時に、ガチャリと玄関のドアが開いた。
次々に、クラスメイトたちが入ってくる。
「お〜い、入間く〜ん!」「うおっ、マジで部屋ひろ〜!」
「み、みんな……!」
一気に増える賑やかさ。まるで文化祭か何かみたいで、でも不思議と嫌じゃなかった。
楽しそうに笑いながら、みんなが口々に「ウォルターパーク行こうぜ!」と叫ぶ声に、ノアも少しずつ笑顔になっていく。
その夜。家に戻ったノアは、明日に備えてリリィと一緒に支度をしていた。
「お洋服、こっちのほうが動きやすいんじゃない?」
「……ありがとう。リリィって、なんでもわかるんだね」
明日の準備を終えて、リリィと並んで座っていると、不意に扉がノックもなく静かに開いた。
「……一応、言っておく。明日、俺も同行することになった」
その低い声に、ぴくりと反応して振り返る。
立っていたのはカルエゴ先生だった。
腕を組みながら、ほんの少し視線を逸らしていて、どこか照れ隠しのような空気を纏っている。
「え…? どういう、こと?」
戸惑いを隠せないノアに、カルエゴは少しだけ視線を戻し、言葉を選ぶように続けた。
「護衛として、入間のそばにいる。……それだけだ」
「……!」
胸の奥が一瞬で熱くなる。
でも、喜びを顔に出す前に、先生は少しだけ語調を緩めて、ぽつりと付け加えた。
「別に……お前のためじゃない。あくまで、任務だ」
それでも、声にはどこか柔らかさがあった。
誰にも気づかれないように、でも確かにそこにある“優しさ”。
「ただ……あの場にお前がいるなら、少しは目を配っておく。お前は……まぁ、たまに危なっかしいからな」
「……っ」
ノアの頬が、自然と熱を帯びる。
先生はそれ以上は言わず、ふいに視線を外してからくるりと背を向けた。
「……準備はしっかりしておけ。明日は早い」
そして部屋を出ていこうとする背中を見送りながら、胸の奥でそっとつぶやいた。
(……カルエゴ、ありがとう)
たぶん、言葉にしてしまったら、この優しさは壊れてしまいそうだから。
だから今日は、心の中だけで――そっと、伝えた。