蕾は少しずつ言葉を知る
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週末日が近づき、生徒たちが浮足立つ中、カルエゴの放った「一斉テスト」の一言で、空気は一転して冷え込んだ。
「教室にふさわしい点を取れよ」
と、カルエゴは満足げに口元を歪め、肘をついたまま静かに立ち去っていった。
その姿を見ながら、苦笑いを浮かべる。
(……カルエゴ、ちょっと楽しそう)
ノア自身も、勉強は嫌いではないが得意とは言い切れなかった。
特に筆記試験となると、どうしても手が止まってしまう。
その夜。
リビングで机に向かい、教科書を開いたまま手が止まっていた。
「……わかんない」
ぽつりとこぼれた声に、すぐリリィが顔を出した。
「ノアちゃん、どこがわからないの?」
「ここ。……なんでこの式になるのか、わからない」
リリィは柔らかく微笑み、隣に腰を下ろして教科書を覗き込んだ。
「これはね、ここが反転するから。ほら、こうやって……」
リリィの説明は丁寧で、温かい。ノアは、うなずきながらノートに書き写していく。
しばらくすると、階段から足音が降りてきた。
カルエゴが部屋に現れ、ノアたちに目を止める。
「……まだ起きているのか。リリィ、無理をさせるな」
「いえ、ノアちゃんが頑張ってるので。私もつい、付き合いたくなってしまって」
リリィが微笑むのを見て、カルエゴは小さくため息をついた。
「……ノア。お前は、無理に完璧を目指すな」
「でもらせっかく“王の教室”になったから。私も…恥ずかしくない点、取りたい」
ノアの声は小さいが、芯があった。カルエゴはしばらく黙って彼女を見つめ、やがて椅子を引いて隣に座った。
「では、ここから先は私が教える。……覚悟しろ」
「うん」
少しだけ嬉しそうに頷いた。
リリィが笑みを浮かべながら、そっと部屋を出ていく。
その夜――
ノアの勉強机には、カルエゴが添えた魔術式の解説が並び、穏やかで静かな時間が流れていた。
やがて、肩を寄せながらうとうととしはじめる。
「……眠いなら、ここまでにしておけ」
「ん……もうちょっとだけ、頑張る」
そう言って、またノートにペンを走らせた。
カルエゴはその姿に、わずかに口角を上げてつぶやく。
「――無理をするな。……だが、その意志は悪くない」
恥ずかしそうに笑って、視線をそらした。
(……なんだろ、ちょっと、あったかい)
その夜の静かな時間は、誰よりも厳しく優しい教師と、少しずつ変わっていく少女の、ささやかな絆を深めていった。