蕾は少しずつ言葉を知る
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その日、バビルス学園の中庭はいつにも増してにぎやかだった。
校舎裏にある、誰も近寄らない“封印された教室”――通称『王の教室』の解放がついに発表されたからだ。
その前には、教員たちと、多くの生徒たちが集まり、ざわめきの中に期待が混じる。
ノアは静かにカルエゴの隣に立っていた。いつもより少し遠く、けれど確かに“そば”に。
目の前では、アブノーマルクラスの仲間たちが、まるでお祭りのようにはしゃぎ、他の生徒たちからも「すごい」「あれが王の教室……!」と、羨望の視線が注がれていた。
はしゃぐクララとアズ、そしてその中心で微笑む入間を見つめていた。
(……嬉しそう)
その横顔を、カルエゴも静かに見ていた。
「満足か?」
低い声が、ふいにノアの耳に届いた。
入間がふり向く。
「……クラスの奴らが評価されるのが目的だったんだろう?」
問うようなその言葉に、入間はにっこりと笑って、短く答えた。
「ええ」
迷いも、躊躇もない。心からの笑顔だった。
そしてーー
前に立つ教員たちの合図で、重々しい扉がゆっくりと開かれる。
「ここに、『王の教室』の解放を宣言する」
封印されていた魔王の教室『ロイヤル・ワン』――
その扉が開いた瞬間、光が差し込み、まるで聖域のような空気が流れ込んだ。
「うわ……!」「なにこれ……!」
一斉に駆け込むクラスメイトたち。
広く荘厳な空間、光を反射するシャンデリア、彫刻のように緻密な装飾、重厚なカーテン。
それはまさに――“王の玉座”にふさわしい場所だった。
「すっげぇ!本当にお城みたい!」
「ここが……私たちの教室になるんだ……!」
そのとき。
入間が、教室の奥――一段高く設けられた、重厚な“玉座”の前へと歩み出る。
椅子に触れ、静かに腰を下ろしたその姿に――
誰もが、息をのんだ。
その佇まい。
まるで、そこが“当然の居場所”かのように――王座に座す者の風格があった。
誰も声を出せなかった。動くこともできなかった。
その瞬間、誰もが思ったのだ。
(……魔王だ)
その姿に、誰かが無意識にひざを折りそうになった。
それほどの――“何か”が、そこにはあった。
──
翌日・昼休み
「えへへ~!入間ち戻ってきた~!!」
クララが飛びつくように抱きつき、ぐるぐる回る。
「うわっ、クララ、酔う!酔うからやめて~!」
「悪周期のイルマ様も……気高く……うっ……!!」
アスモデウスはハンカチを噛みながら涙ぐんでいる。
入間は申し訳なさそうに頭を下げた。
「昨日までの僕、ちょっと……やりすぎだったよね。ごめんね、二人とも」
「よくあることさ!」とクララは笑い、
「かっこよすぎて惚れ直しました」とアズくんは敬礼する。
そして、そっと寄ってきたノアが、少し照れながら言った。
「……私も、ちょっとだけ。あの入間くん、かっこよかった」
入間は一瞬きょとんとしたが、すぐに赤面し、
「ノアちゃんまで!? いや、それはその……!」
そのあたふたした様子に、周りのクラスメイトがどっと笑った。
「王の教室の主様~!」
「今日も玉座座る~?」
「そろそろ玉座税取るぞ!」
入間は頭をかきながら、「やめて~~!」と叫んでいた。
──
こうして、騒がしくも温かな“王の教室”の生活が、幕を開けた。
その喧騒のなか、静かに笑っていた。
(……ここにいて、いいんだ)
その思いが、今日も胸の奥で、小さな光を灯していた。