光に導かれ蕾は色を変える
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「今日は使い魔との絆を深める授業だよ!」
ロビン先生の陽気な声が朝の校庭に響いた。空は澄み渡り、涼しい風が吹いている。クラスメイトたちはわくわくした表情で召喚陣を描き、次々と使い魔を呼び出していく。
ノアは少し離れた場所で静かに立っていた。薄い青の魔力が指先に集まり、足元に小さな円陣を描く。
「出ておいで……」
ほのかな冷気をまとって現れたのは、手のひらほどの真っ白な兎。羽のような耳がぴこりと動き、赤い瞳でノアをじっと見つめてくる。
「……うん。今日もよろしくね」
小さく言うと、使い魔はぴたりとくっついてその場に座った。
(……いつも通り、そばにいてくれる)
周りを見ると、クララの使い魔はぴょんぴょん跳ね回り、アスモデウスの使い魔は高貴に空を飛び、サブノックの使い魔は筋骨隆々で威圧的だ。みんな思い思いに使い魔と交流している。
……が、ひとりだけ様子がおかしい悪魔がいた。
「イルマくん?使い魔は?」
振り向いたロビン先生の視線の先で、入間は固まったように動かない。
「よ、よんだら……死ぬ」
その言葉に、クラス全体が静まり返った。ノアも、じっと入間を見つめたまま動かない。
「怖がっちゃだめだよ!さあ!僕に君の使い魔を見せて!」
そして――入間の足元に魔法陣が展開され、現れたのは。
「カルエゴ……先生……」
ノアの呟きに、何人もの生徒が目を見開いた。
教師であるカルエゴが、使い魔として召喚された――その異常さに、生徒たちは一瞬息を呑む。
カルエゴは当然すぐに召喚解除を命じようとしたが、ロビンはにこにこ笑いながら言った。
「バビルス教師心得!
【常に厳粛に特例を良しとせず!】
どんな事情があっても、生徒を評価する場を整えるのが教師の責務だからね!」
その言葉にカルエゴの眉がピクリと動く。皮肉にも、自分で定めたその心得に縛られ、授業から逃げられなくなったのだった。
「さーて!まずは使い魔と仲良くなるためのレクリエーション!フリスビーをしよう!」
ロビン先生の号令とともに、使い魔との交流が始まった。
ノアは静かにフリスビーを投げる。ふわりと宙を舞った使い魔は、しゅたっと飛び上がり、小さな口で器用にキャッチ。ノアの元へぽとりと落としてくれる。
「……ありがと」
そう言うと、使い魔はくるんと尾を丸めて、嬉しそうに足元に寄り添った。
その様子を見ながら、ノアはちらりと横目で入間を見る。
(……カルエゴ……ほんとにやってる)
カルエゴは、無表情ながらもフリスビーを拾い、のしのしと歩いて入間に戻している。完全に状況に呑まれている様子の入間とのやりとりに、ノアは一瞬、口元が緩んだ。
(可愛い……)
続いては「ハイタッチ」「追いかけっこ」など、使い魔との交流ゲームが続いた。
ノアは手のひらに使い魔を乗せて、ぽんぽんと優しくタッチを交わす。その度に、使い魔は赤い瞳を細めて幸せそうに目を閉じる。
(……この子がいてくれてよかった)
だが、授業の後半に入った頃、またも空気が変わる。
「我が使い魔こそ最強!アスモデウス、いざ尋常に勝負だ!」
「望むところだ!」
アスモデウスとサブノックが、使い魔を操って真剣勝負を始めようとしていた。
「や、やめてぇ~~!」とロビン先生の叫びもむなしく、使い魔同士がぶつかり合う寸前。
ノアは小走りで止めに入ろうとする。
「やめ――」
だが、その前に。
腕の中で丸くなっていた使い魔が、ぴたりと動きを止めた。
瞬間、赤い瞳が鋭く光る。
(え……?)
手から離れ、ひゅんっと跳ねた小さな体が、
大きくなりノアを守るように包み込んだ
バギンッ! バゴォォン!!
……沈んだのは使い魔だけではなかった。
「がはっ!?」
「な、なぜ我がッ!?」
サブノックとアスモデウスの頭に、カルエゴの拳が同時に落ちた。
静まり返る校庭で、カルエゴは口を開いた。
「使い魔はペットではない。相棒でもない。調教を怠れば、即ち――脅威となる」
「……使い魔を恐れろ、ガキども。それが、真の信頼だ」
その言葉は冷たく厳しいが、不思議とノアの胸に深く染みた。
使い魔は、再び小さくなり足元に戻り、ふにゃりと体を丸める。
(私のことを……守ってくれたんだ)
(命令もしなかったのに)
膝を折ってそっと撫でると、使い魔は頬をすり寄せてきた。
「……ありがと。」
ノアの言葉に、使い魔は小さくぴくんと耳を揺らし、静かにその胸に身を預けた。