光に導かれ蕾は色を変える
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師団見学当日。
バビルス学園の廊下には、団体名が書かれた張り紙と、やたら張り切った上級生たちが溢れていた。
「……どこから行く?」
ノアがぽつりと尋ねると、入間が少し考えてから手を挙げる。
「僕、魔植物師団、気になるなぁ。なんか、クララが好きそう」
「おおっ、確かに!ドクドク花とか、ブンブン木とか育てられるのかな!?」
クララは早くも目を輝かせてぴょんぴょん跳ねている。
「クララ、勝手に触るなよ」
アスモデウスが軽く眉をひそめながらも付き添う形で、4人は《魔植物師団》へと足を踏み入れた。
⸻
中は緑にあふれていた。天井近くまで伸びた蔓、足元に咲く夜光花、中央には巨大な食虫植物まで。
「うわあ……」
入間が息を呑む。
ノアもじっと見つめながら、どこか圧倒されたように小さく呟いた。
「……生きてる、って感じ」
「ふふふ、ノアち、今にも襲われそうでワクワクするね〜!」
クララが巨大花の前に駆け寄ろうとするが、アスモデウスが無言で襟を掴んで引き戻す。
「無闇に近づくな。あれは人を丸ごと呑むぞ」
「えっ、最高じゃん!」
「そういう意味ではない!」
入間は植物に見とれていたが、団員から「植物の手入れが好きならおすすめだよ」と言われ、苦笑いを浮かべる。
「……僕、サボテンすら枯らしたことあるしなあ……」
ノアも静かに首を振る。
「……悪くないけど、なんか……ちょっと違う、かも」
⸻
続いて訪れたのは《図書師団》。
「わぁ……!」
入った瞬間、天井までそびえる本棚の数々にクララが目を丸くした。
「すごい、本の山!」
「山ではない。整然と並べられているだろう?」
アスモデウスは手袋を整えながら、棚の背表紙を指先でなぞる。
ノアはふと目に留まった書物に手を伸ばす。
『魔界戦争史 第二巻』
「……これ、読みたい」
「うわ、ノアち真面目! 私は『迷子悪魔の100日サバイバル』が気になる〜」
クララが笑って本を開くと、なぜか途中から塗り絵になっていた。
「こ、これは……教育的にどうなんだ」
入間が戸惑う中、アスモデウスは歴史書コーナーで難解な文字を読み解こうとしている。
「君たち、翻訳の手伝いが得意なら、ここは適性が高いと思うが……」
図書師団の団員が控えめに話しかけてくる。
「僕は……読んでるだけで終わっちゃいそうだな」
「……見るのは好き。でも、ずっとここにいるのも、違うかも」
ノアは本をそっと棚に戻し、静かに言った。
⸻
他にもいくつか師団を巡った。
戦術研究や演劇師団など、個性豊かな場所をいくつも見たが、4人ともなかなか決定には至らない。
「……疲れたぁ〜!」
クララが地面に大の字になって寝転ぶ。
「師団選びは大切だ。焦る必要はない」
アスモデウスが淡々と言うが、やはり少し疲れているようだった。
一息ついて、入間の方を見ると――
「……あの、処刑玉砲、行ってみない?」
突然の提案に、全員が目を瞬いた。
「…面白そう!」
クララがすぐに賛同し、ノアも少し首を傾げたあとで、
「……行ってみる」
「では、案内しよう」
アスモデウスが立ち上がり、再び歩き出す。
処刑玉砲師団の部室に近づくと、団員たちがこちらに気づいてざわつき始めた。
「あっ、あれは入間くんだ!」
「伝説の玉投げ名人だぞ!」
「おい入間、こっち来て投げてみろよ!」
大きな悪魔が嬉しそうに手を振る。
入間は照れながらも、隣にいるノアたちにチラリと視線を送った。
ノアは少し緊張しながらも、静かに見守る。
「入間ち、やっぱりすごーーーい!!」とはしゃぐクララ
入間は手にした玉を強く握りしめ、一呼吸おいてから投げる。
ボールは鋭い軌道で飛び、部屋の端まで勢いよく跳ね返った。
「おおっ!」団員たちが一斉に歓声を上げる。
「やっぱり伝説は本物だ!ぜひうちの師団に来てくれ!」団長が入間に勧誘。
しかし入間は「今日はちょっと考えたいです」と答え、仲間たちと共に部室を離れた。
「ふぅ〜……ちょっと喉乾いちゃったね僕、飲み物買ってくる!」
「……私も行く」
ノアがそっとついていくと、2人は少し離れた購買部方面へ向かって歩き出した。
その途中だった――。
「ドォンッ!!」
突如、近くの部屋から爆音が響き、煙がもくもくと噴き出した。
ノアが思わず入間の腕を引いて庇うと
煙の中からフラフラと誰かが現れる。
小さな角に、ふわりと柔らかそうな翠色の髪。
丸メガネをかけた優しげな青年が、何やら工具箱を手に持っていた。
「おぉぉ……またやってもうたぁ……」
と、へたり込むように倒れこむ。
「だ、大丈夫ですか!?」
入間が慌てて駆け寄ると、ノアはすぐに自分の上着を畳んで枕代わりにし、男の頭の下に滑り込ませた。
「……横になって。熱あるかも」
手の甲を額にあて、うちわでパタパタとあおぐ。
「おお……お優しいなぁ。まるで看護悪魔や」
と笑う彼の名は――
「うちはアミィ・キリヲ言います。魔具研究師団の団長……みたいなもんやな」
そう言いながら、ふらふらと立ち上がり、自室の中へと2人を招いた。
⸻
室内には、魔具がずらりと並んでいた。
羽のような装置、小さな箱、回転する球体、どれも不思議な魅力を放っている。
「わあ……これ全部、キリヲさんが作ったんですか?」
入間が目を輝かせて問いかけると、キリヲは照れたように頷く。
「まぁ、失敗も多いけどなぁ。こないだも暴走して窓吹っ飛ばしてもうて」
「……今の爆発?」
「せやねん」
と笑いながら、キリヲは一台の大きな装置に目をやった。
「この子、名前は【ガブ子】言うんやけどな。魔力がちょっとしかなくても、すっごいパワーを出せる魔具やねん」
ノアがそっと装置に手を触れると、まるで応えるように、淡い光がふわっと灯った。
「……なんでそんなの、作ろうと思ったの?」
ぽつりと聞いた。
キリヲは少し黙ったあと、ふわりと笑った。
「うちはな、弱い子でも強い子と対等に戦える、そんな世界になったらええなぁって思ってるねん」
「魔力の強さだけが全てじゃない。技術や知恵でも、魔界を変えられるって、証明したいねん」
その言葉に、ノアは息をのんだ。
入間もまた、真剣な表情でキリヲを見つめる。
「……僕、魔力がないんです。でも……それでも、師団に入れますか?」
キリヲは一瞬驚いたように目を瞬いたあと、にっこり笑った。
「……おそろいやなぁ。うちも、魔力は高くないんよ。でもな、うちに必要なんは、魔力やのうて――技術や」
「――ようこそ、魔具研究師団へ」
⸻
翌日。
魔具研究師団室に4人の名前が並ぶ。
【アスモデウス・アリス】【クララ・ヴァルヴァラ】【鈴木入間】【ノア】
魔具研究師団、入団決定。